サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309226729

感想・レビュー・書評

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  • 認知革命、農業革命、科学革命と進み地球の相棒である他生物をどんどん絶滅に追い込み驕り高ぶるサピエンスの未来に警告を与える。
    昔、始皇帝は徐福を使って不老不死を求めたが、ギルガメッシュプロジェクトとして同じことを今も求める。
    幸福のあり方にも解けない回答を模索する。
    罪深いサピエンスは「何になりたいか?」ではなく、「何を望みたいか?」と最後は締めている。


  • 下巻は上巻からの流れで…
    「貨幣」、「帝国」、「宗教」
    この3つの登場により、知らないもの同士が協力し合えるようになり、世界が統一へ向かう(グローバル化)

    そのうちの最後の一つ、「宗教」について
    「宗教」は社会秩序とヒエラルキーに正当性を与えるとしている(「貨幣」及び「帝国」だけでは心もとないため)
    〜ここでは一神教、多神教、二元論、自然法則の信仰などの特徴や違いを歴史的に説明してあるが、つまるところ混合主義(よく言えば柔軟な考え方、悪く言えば都合の良い取り方)により整合性を保っているように思う
    また宗教からイデオロギーや人間至上主義が産まれた
    人間至上主義…自由主義も社会主義もナチスのような進化論的な発想も理由が違うだけで同じこと

    ■科学革命
    以前は神や賢者の教えが全てであり、確立されたものであった
    宗教で教わらないことは大事ではないので、知る必要もない
    このような考えが変わり、無知を認め、貪欲に知識を求めることにより、大きく展開する
    科学、産業、テクノロジーこの3つが結びつき世界が激変
    解決不可能だった問題(貧困、病気、戦争わ飢餓、死…)を科学が解決し始める
    ただし、科学の発展には膨大な資金が必要なため、イデオロギーと政治と経済の力に影響されることに
    また知識と領土の征服へと発展にもつながっていく
    外の世界がどうなっているか
    →獲得した新しい知識によって世界を制したいという願望へ

    資本主義…利益を生産に再投資することで経済が成長
    科学の発展が資本主義を支えることにもなる

    ■世界平和
    帝国が撤退し、国家間の武力紛争が減少
    平和のメリットのが増えた
    人間は幸福になったのか
    サピエンスが成し遂げた偉業は素晴らしいが…
    幸せの定義も難しい
    ただ歴史において、偉大な功績は残されるが、これが個人の幸せや苦しみにどのような影響を与えたかは言及されない
    これは人類の歴史理解の欠落と著者は言う

    ■超ホモ・サピエンスの時代
    近代
    生物工学のめざましい発展
    生物学的に定められた限界を超えつつある⁉︎
    (遺伝子操作等)
    倫理、政治、イデオロギーの問題で研究の進展がセーブされているが…
    技術的にはもっと先を行っている
    〜恐ろしい 我々は知らないところで、遺伝子操作や、サイボーグ工学など確実に進んでいるのであろう
    2005年に、コンピューターの中に完全な人間の脳を再現する「ヒューマンブレインプロジェクト」が設立され、各国の80以上の研究機関が共同作業している(日本では理化学研究所が参加)
    こちらの成果の程はよくわからないが、表面化されていない研究やプロジェクトが多数あるのではないだろうか…

    歴史の次の段階へ
    人間の意識とアイデンティティの根本的な変化
    今までの私たちの世界に意義を与えているもの(例 性別、感情など)が意味を持たなくなる⁉︎
    生きていくことに精一杯だった7万年前のホモサピエンスが今や全地球の主となり、生態系を脅かしている
    地球を征服したが、世の中の苦しみの量は減らしていない
    かつてないほど強力になったが、この力を何に使えばいいのか
    仲間の動物たちや周囲の生態系を悲惨な目にあわせ、自分自身の快適さや楽しみ以外追い求めない
    あらゆるものを手にしても満足できない
    自分が何を望んでいるかもわからない

    〜なんと傲慢で危険な存在なのか
    私たちは…
    考えさせられることが多くある
    我々は植物や他の生物からのクレームがないことのをいいことに、利権と便利さを求めて好き勝手し放題である
    ちょっと都合の悪い内容の場合は、うまい言い訳を考え、正当化することには長けている
    それでもなお、欲求を満たされない駄々っ子のようだ
    ハラリ氏の地球や環境、ホモサピエンス以外の生物に対する愛情と我々に対する問題提起と警告をしっかり受け止めた

    上下巻を通して…
    経済学、宗教、統計学、民俗学、科学、生物学、天文学、言語学、もちろん歴史
    これらの知識が一部の地域だけではなく、全世界の!である
    これだけの膨大な知識とまたそれを凡庸な我々にわかりやすく面白く読ませる表現ができるテクニックが素晴らしい
    全く飽きることなく最後まで読み切れる
    膨大な知識を楽しく味わえるのが醍醐味であった
    まるで自分もちょっとした知識人に格上げしていただけるような気分さえも(笑)
    知的好奇心に「効く」最高の「知のエンターテインメント本」であった

  • 読み終えたサピエンス全史、認知革命 農業革命 人類統一 科学革命の4部構成で人類史を学べるのだが とても刺激的で興味深い。そして作者が若い分 引用する例や素材がまさに今を述べているので腑に落ちるところが満載な印象ですね。え〜ぇ そんなわけないんじゃ? なるほど さもありなん!等々 色々示唆に富む箇所がいっぱいありました。
    さて人類はこれから何をして何処に向かうのか、壮大なテーマだけど怖くもあり不安でもありますよね。たしかに今まで無かった類いの歴史学作品でした!

  • やっとこさ下巻読み終わりました。上巻と同じ形で現代までの歴史を辿ってきます。以下、私が特に気になった文を書き留めます。

    ・信用は未来が今より良くなっているという前提に立っている。今より悪くなる前提では信用は生まれない。

    ・資本主義は、富を蓄えた人が再投資することが前提になっている。

    ・自由主義が行き過ぎると、一部の強欲な人々によって利益だけが優先される世の中になり、一部の人間の人権や尊厳は無視される。

    ・どんな種類の質量もエネルギーに変換できるという発見により、人類はエネルギー不足に陥ることは無い。

    ・ホモ・サピエンスが繁栄した理由は、想像力による。想像力で作り上げた虚構、例えば宗教、国家、国民、企業、法制度、人権、平等などを信用することで繁栄した。

    想像力によって虚構を作り上げることができたことが、繁栄の元とは斬新な切り口でした。

  • 上下巻ともに目から鱗が落ちっぱなし。凄まじい面白さである。どうすればユヴァルさんのように考えることが出来るのだろうか。心から尊敬する。本書を読んで、自分自身が興味のあること、もしくは知っていることについて述べられている箇所は関心を引かれたが、恥ずかしながら現在の自分では理解しきれない部分も数多くあり、自身の無学さをあらためて感じた。本書をより深く広く楽しむために、勉強してもう少し知識をつけてから読み直したいと思う。

  • 「サピエンス全史」の上巻は、3部構成となっていた。
    第1部 認知革命
    第2部 農業革命
    第3部 人類の統一     である。

    この下巻は、第3部の続きの後
    第4部 科学革命
    と話は進んでいく。

    人類は、太古の昔に比べると、信じられないくらいの豊かさを手に入れた。その流れを、4部構成で説明をしているのが本書である。
    ただ、4部の最後の2章は、事実の叙述とは趣を異にしている。

    第19章は、これまでのまとめとして、「人類は信じられないくらいの豊かさを手に入れたが、では、それで人類は幸せになったのだろうか」を問うている。筆者は、肯定的でも否定的でもない。この問いは、これまで歴史家によって問われたことがないことを指摘し、この問いを考える努力を始めるべきだと、この章を結んでいる。

    第20章は、人類の将来についてである。
    人類は、神のごとく、世の中の自然物を設計する力を得つつある。具体的には、生物工学、サイボーグ工学、非有機的生命工学だ。
    これらは、人類に更なる力や豊かさをもたらす可能性もあるが、一方で、やっかいな問題、特に倫理的な問題を惹き起こす可能性もある。
    それだけの力を身に付けた人類は、「自分たちが何を望んでいるのか」をまず考える段階にあると筆者は結んでいる。

    スケールの大きなストーリーであり、知的に刺激を受ける本である。しかし、上巻でも感じたが、下巻もやはり、私自身はそんなに面白くは読めなかった。おそらく、文章表現の好みの問題だと思う。自分にとっては、スムーズに頭に入ってこない文章表現であった。

  • 人類史を総括する説明不要のメジャー本。
    上下巻を読み通して感じたのは、あらためて、人類は凄いことを成し遂げてきた、ということ。

    金融システム等、今となってはあって当たり前の世の中の仕組みも、本著を読んで「よく実現できたよなコレ…」とその難しさを認識できました。
    それにしても、ヨーロッパのルネサンスから産業革命に至る流れは、それこそ物凄い幸運に恵まれていないととてもこんな展開にはならない「トゥルールート」のようにも感じました。
    「一人じゃできないこと」を実現させるやり方として、会社だったり金融だったりが生まれ、果てはヨーロッパの覇権を実現した。
    今となっては衝突の原因となっている宗教も、確かに過去は世界統一の流れを助けるものだった、というのも言われてみて納得です。

    しかし、前に進む新しいことをするためには、最初に少し余裕がないといけないんだなと。目先の生存や食事にキュウキュウとしている状況では、そんな勇気はとても生まれない。
    ※自分の日常に照らしてみても、なんだか考えさせられます(笑

    脇道ですが、最後に翻訳について触れると、最終章は「超ホモ・サピエンスの時代へ」という邦題。「超」は原語で何だったんだろう?と思って原題を調べてみたら「The End of Homo Sapiens」なるほど…。
    訳者がこう訳した理由も何となく察しつつ、両方とも面白いなぁと感じました。

    人類史を振り返った上で、今度は未来。ホモ・デウスも早く読んでいきたいところです。

  • 近年多い、人間の「全史」を俯瞰的に、全体を追った歴史本の一つ。何故多いのか?背景には、生物学やテクノロジーなどサイエンスの発展に基づく新発見、従来説の見直しが、人類の起源から現在まで、もう一度再検討しようという機運の高まりがあるように思う。
    そして「暴力の人類史」「繁栄」「銃・病原菌・鉄」他の大作著作は、それぞれの著者がそれぞれの異なる視点で全体を捉え、それぞれに発見がある。
    著者ユヴァル・ノア・ハラリの立場はいわゆるリベラル的。反グローバリズム、ルソー的な反文明主義、自然に還れ的な、狩猟時代より現代人は不幸、と考える立場からの「人類史」である。(反論はあるだろうが、これは本のプロモーションを兼ねた著者のインタビューを読んで補強された)。

    正直、本書はツッコミどころが多い。著者の「思想」に沿って全体が解釈されるが、根拠となる細部は強引な部分も目につき、明らかに歴史的事実の間違いでは?というところも散見され、不遜な言い方だがそこは著者の知識・研究不足なのでは?とも思える。
    サピエンス支配が「誇れるもの」を何も生み出さなかったというのも著者の価値観のうちであり、何を価値と考えるかによって見方は変わるだろう。農耕革命からのテクノロジーの発展が、人類を不幸にしたという観点は彼の「解釈」であり、価値を見出す側からは逆の「解釈」の主張も成り立つだろう。そして幸福と不幸は科学的に判断し得ない個の価値観の領域でもあるとも思う(統計的に数値する手法もあるにはあるが)。
    畜産の現状に対しての残酷さの主張(工業製品を生産するかのような生物の扱い)についても、 自然界にある捕食動物の「残酷さ」の凄まじさを見れば(生きながらハイエナの群れに食われる草食動物、雄ライオンの子殺し等々)動物好きな私から見て、自然の非情さに対する著者の認識、知識はどの程度のものだろう? との疑問も感じた。

    神話や宗教だけでなく、国民国家、貨幣や法制度、人権や自由までも人間の価値は虚構だと指摘する著者に、訳者は解説で「私たちの価値観を根底から揺るがす」と語る。しかしこれは吉本隆明の共同幻想論よりもはるか前から、西欧の認識で見れば19世紀末にニーチェが「神は死んだ」と宣言し、宗教への幻想が消えた100年以上前から現在に直接つながるカタチで、すでに「実は裏主流」である考えだ。また著者は価値観の虚構性を語りながら、自分の価値観からの批判という自家撞着に陥っているところもある。

    個人的には最後の部分での指摘が、全体の白眉であり、粗雑さ不備を補ってあまりあるものになっていると思う。著者はそこで科学の高度化が自らを含む生物を操作する「特異点」にまで達し、今現在(ニーチェ流にいえば、)これまでの旧サピエンスと新サピエンスの分ける新旧の「彼岸」にまで達していると論じる。
    この著者が指し示す、これまでサピエンスの先にあるもの、それは恐ろしい故にに興味津々だ。19世紀末の「超人」は哲学的な思索の産物だが 、21世紀から始まる「超サピエンス」はサイエンスによって現実に現れ著者の批判する畜産のように大量生産される……

    ニーチェでいえば、「ツァラトゥストラ」のような大きな地殻変動をもたらす完成形というより、処女作「悲劇の誕生」のように欠点を持つが得体の知れないパワーのある書のように思う。本の魅力は完成された既知の話より、ツッコミどころは多いがスリリングな知的刺激のある本のほうが勝る、そう感じされる一冊。プロフィールを見ると著者は1976年生まれだから35歳のときの著。若い本だ

  • めちゃくちゃ面白い。でも読むのが重たい。

    科学革命。
    西暦1500年頃まで、人類は新たな能力の獲得ではなく、既存の能力の維持だった。

    私達は、知らないの前提に立つ。

    これが重大な発見。
    それまでの知識の伝統は、神(宗教)は全てを網羅する知恵を持っている前提。

    知ることに革命が起きた。
    そして帝国、資本主義と結びつき、科学は進歩を続けた。
    進歩で得たものは、失いたく無い、パイは信用で広がり続ける。この先に待つのは何なのか?

    今の自分達の基盤がどういったものの成り立っていて、どこにいるのか、そしてどこへ行くのか。変わることを選んだ不安に対して、幸福が科学・経済の進歩だけでは得られないことを知り始める。

    宗教は、人の不安を取り除いてきたが、今、違う不安を幸福に変えるために見直されている。特に仏教の考えは面白い。喜びと不安の波に揺らぎ苦しむ。自らの感情は、すべて束の間のもの。真の幸福とは内なる感情の追求もやめること。

    諸行無常は自らの内にもある。

    幸福も科学した先に人は人でいられるのか、人でいる事にこだわる考えが古いのか、科学を身にまとい気が付けばフランケンシュタインになることさえ、違和感なく受け入れる時代が来るのか。

    アフリカの片隅で生きていた動物が、自分自身の快適さ楽しみを追い続け、生態系を滅ぼしてしまうのか、自分が何を求めているかを知り、何を選択するのか。

    おもしろい。

  • 全体を通して、虚構(物語)という書き換え可能なソフトウェアが人間というハードウェアを動かしている。そしてそのハードウェアには、「社会的な動物としての生存戦略」がプログラムされているので、虚構というソフトウェアが適合する、と解釈した。
    この解釈は世の中のあらゆる出来事の見方を一変させて、それを知る前にはもう戻れない。そんな感覚を、読みながら様々な出来事に当てはめ、考えを巡らせるなかで感じた。
    偶然にも『進撃の巨人』と合わせて読んでたので、アニメを見ていて直観的にこの解釈を理解できた。ぜひ合わせて見てみて欲しいです。

    また本書で人類史全体を振り返ることで、農耕が人類にもたらしたインパクト、科学と資本主義の関係、全体最適と個別最適は両立しないことなど、新たな気づきがたくさん得られた。
    ギルガメッシュプロジェクトに関してはさすがにSFすぎてピンと来なかったけど、著者にこの先の AI 時代について話を聞いてみたい。

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著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『「サピエンス全史」「ホモ・デウス」期間限定特装セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ユヴァル・ノア・ハラリの作品

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