死のテレビ実験---人はそこまで服従するのか

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309245591

作品紹介・あらすじ

相手がクイズでまちがえるたびに電気ショックを与えるよう命令される、過激な新番組が企画された-。殺してしまうかもしれない緊張のなか、テレビカメラの前で人間はどうなってしまうのか!?衝撃の心理実験ドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • テレビの狂気。人は権威の前に自分の考えを捨てて服従する。テレビは権威以上の権威。テレビに出演する人はテレビ的役割を果たすことを受け入れてしまう。
    確かにマスコミの取材受けてたって「どうしたら番組的に美味しいこと言ってあげられるかな」とかばっかり考えてるもんなぁ。まあ企業系のリリースなんかだとギブアンドテイク、どころかこちらもテレビ制作側に近い立場になっちゃうのか。

  • ナチスドイツのアイヒマン実験とも称されるミルグラムの実験をテレビという環境の中で行うとどうなるのか、そこに焦点を当ててフランスのテレビ実験・考察を行った本著。
    テレビが生み出す人々への影響についても分析している。中でも、暴力的な番組が人々に与える影響の中では、直接攻撃的な人間・残忍な人間を生むのではなく、暴力に無関心・鈍感な人間を作り出してしまうとの見解が示されている。本著内では実験に臨む被験者の心理状況や服従に至るまでの経過を細かく分析し、その見解に至るまでの論拠を示してくれる。
    日本では、第二次大戦下での大本営発表という歴史から、メディアは国家権力に対抗する「反権力・市民側」の勢力であると大前提で考えがちだが、そういった暗黙の了解が無意識にテレビメディアに服従する姿勢につながることもあるかもしれない。(この視点は本著にはないけど)
    内容的にはテレビの与える影響に主軸が置かれているが、現代のインターネットにも通じる部分が多々ある。中でも気になったのは、『テレビの中では虚構と現実が曖昧になる』といった点。現在のインターネットではSNSや動画配信サービスなどの中でまさに虚構と現実が曖昧になり続けていると感じる。(恋愛リアリティ番組や素人の家について行く番組なども虚構と現実が曖昧になった良い例だ)
    インターネット上で行われることが身近になればなるほど、私たちは無意識のうちにインターネット的な価値観に振り回されて、人の痛みに鈍感になり続けていくと感じた。

  • どこかのノンフガイドから。この実験の被検者になったとして、NOと言えた自信はない。かれこれ10年以上、殆どテレビを見ない生活だけど、それでもなお、テレビの洗脳力には屈してしまうだろうと思える。その力を、政権に例えられたりなんかもしているけど、そこなんかまさしく言い得て妙。本能的に声の大きなものには従わないとっていう精神、改めて嫌になっちゃいますね、自戒を込めて。そして現在、SNSがテレビを駆逐せんと拡大の一途を辿っているけど、これ、本作におけるテレビの立ち位置が入れ替わっただけですわな。しかも、もっと質の悪いモノとして。演繹的に、SNSとの向き合い方には気を付けないと、っていう気持ちも新たにした次第。

  • 権威(司会者)に権威(AP)をぶつける実験の結果が服従率に影響を与えなかったことについて。

    ミルグラム実験(ここでは2人の科学者が権威vs権威で登場。服従率0%の結果に)と逆になった原因を、『人と連携して立ち向かう経験が現代では少ないからではないか』と考察していたが、単純に『人はより上の権威に従う傾向がある』とシミズは考えますね(アシプロのリュシーちゃんは車で送迎したりなど親しみやすいが雑用キャラであるのに対し、司会のタニアはまあまあ有名人で近寄りがたい)

    ここで例えばガチ有名人のアラン・ドロン(実験舞台がフランスなので…)が出てきて反対したら、被験者はみんな良心に従うと思う。

  • ミルグラムの実験では記憶の実験と称して、実験室にて被験者に電流のスイッチを押させるものだったが、それをテレビのクイズ番組でやったらどうなるか、という実験の報告をまとめたものである。2009年の実験なので、比較的最近だ。科学者の権威からテレビの権威に変わった時にどうなるかがポイントだが、結果はテレビに服従する割合が高かった。80%以上の者が最後の460ボルトまでレバーを押している。
    服従しなかった者は少数派であり、多数はテレビという権威に服従してしまう結果であった。これはフランスでの実験だが、日本で同じ実験をやっても同じような結果になりそうだ。

  • TV
    ノンフィクション

  • クイズの答えを間違えたら、一般参加の出題者が回答者に対して罰として最大460ボルト(人が死ぬレベル)の電気ショックを与える。そんな番組があったら、人は電気ショックのレバーを押すのか。暴力的になるバラエティ番組への危惧をもとに、フランスのテレビマンと哲学者が社会心理学者たちとともに実験を行った。その実験のドキュメンタリーとしてまとめ、結果を分析した一冊。人は服従しやすく、現在の戦時にまでそのテレビ的影響が響いている。結果に驚きつつも、日本の芸人対象の熱闘チャレンジまでやり玉に挙がった点がどうも。テレビで殺人まで行きつくのか。なんとなく違和感を抱きつつも、外国でならありそうと例に出されたバラエティのラインナップを読む限り、思った次第。

  • この本を読むきっかけは、「麻木久仁子の週刊本ナビ」での紹介だった。麻木さんのコメントで、面白さを確信した。(普段は簡単には靡かないのだが…)
    スタンレー・ミリグラムの実施した「アイヒマン実験」(「服従の心理」)を、「科学者」という権威から、テレビという「権威」に置き換えて実験したことの検証結果をドキュメンタリーとして描いた作品。
    以前から、「服従の心理」を読んでみたいと思ってはいるが、その機会がくる前に、こちらの本を先に手にすることになった。
    テレビの権威を傘にきた、「面白くするためなら何をやってもいい」という過激な風潮と、テレビが持つもともとの可視化できない影響力行使のシステム(洗脳)に警鐘を鳴らし、そのえでスタンレー・ミリグラムの「アイヒマン実験」を補強して、人間は権威に服従し易いものであるから、そのことを自覚することを忘れてはならないと締め括っている。
    現代社会では、既にテレビでの洗脳が完了し、新たな「偽りの繋がり」なるグローバルな変種のSNSウィルスも登場している様に思えなくもない。
    2013.10.03

  •  スタンレー・ミルグラムが1960年代に実施した有名な実験「人は権威から命令されたとき、どれだけ服従するのか」について、テレビという舞台を用いて再現したフランスでの実験を題材に、現代人が無意識のうちに影響を受けているテレビ放送についての警告書である。
     架空のクイズ番組のパイロット版として集められた被験者にクイズ番組の出題者となることを要請し、解答者が間違えるたびに電気ショックを与え、その電気ショックは誤解答が増えるごとに電圧が上がっていくという仕組みである。この実験から、約8割の被験者はテレビ番組というシステムに服従し解答者に罰を与え続けることが示された。
     著書の中では、テレビが視聴者から興味を得るために刺激を求め続け過激になることに警鐘を鳴らすと同時に、ナチスドイツの独裁政治になぞらえてテレビという独裁者により群衆が煽動されることにも懸念を示している。

  • 観客付きの公開テレビ番組という設定は、ミルグラム実験の興味深い変種と言える。人間は状況次第で善にも悪にもなるという、身も蓋もない真実。親鸞の悪人正機を連想した。
    この手の心理実験や、脳科学の成果が広まると、「個人の責任」という幻想がますます弱まるのではないか?つまり全ては「社会が悪い。」それが事実だとしたら、いささかげんなりする。

  • TVという権威に人が従う様子を詳しく分析してる本です

    人が人の指示に従う源泉というと ウェーバーがカリスマ・地位・・・などといった分類をした と昔聴いたことを思い出した
    その中に権威も確かあったような・・・・気がする

    この本を読んでて、どうTVが権威になっていったか、さらには
    どういったものがどのように権威となるのかを知りたくなった。
    そんな本を知っている方は教えてください

  • 権威の理不尽な要求に人はどこまで服従するのか。実験自体は興味深いけれど、テレビの影響力を調査する為にミルグラム実験の焼き直しを行う必要はあったのだろうか。実験に対する批判への言い訳も盛りだくさん。笑。

  • 単行本でも買おうと思っているのだけど
    大きな書店4つまわってもあったことがない。
    アマゾンで買うのは簡単だけど、書店で出会うのを
    待ちたい感じ。

  • テレビの権威のもとに、服従しやすい「人」が、どこまで危険なことをできてしまうのか。テレビの過激さが進行し続けるフランスでの実験結果をまとめた本。この実験はドキュメンタリー番組として放映もされている。
    自分自身、同じ立場になった時に、権威に対して中立な判断ができるかどうか。雰囲気に流されない生き方を心掛けたい。

  • いわゆるアイヒマン実験の現代版。
    面白ければ何をしてもいいという風潮が、最近のテレビにはありますが、
    いずれ人を殺してしまうんじゃないかと。
    読んでいただければ結果が分かります。

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