奥さまは愛国

  • 河出書房新社
3.77
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本棚登録 : 113
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309246499

感想・レビュー・書評

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  • 「奥さまは愛国」読み終わった(昨日、図書館に返さねばと言ってた本はこれ)。

    面白かったのは、著者である朴さんと北原さんの文章の違い。いや、文章じゃないか。「愛国者の女の人」に対する受け取り方。朴さんは差別される当事者ということもあるだろうが、文章に緊張感というか透明感というか、インタビューされる人に対して身構えているというか少し恐怖で脅えているというか、あーもうちょっと言葉でうまく現せないんだけど、わたしが朴さんの書く文章からインタビューしている朴さんの姿を想像するとすると、半透明、なの。なんか消えちゃいそうな感じ。失礼かな。でもそれは当事者である以上、仕方がないと思うのです。「知識がなくて反論できなかった」って書いてあるけど、もし知識があったとしても当事者が反論するのはとてもしんどいから。

    一方、北原さんはすごく混乱していた。愛国者女性の行うイベントを見て「'90年代のフェミニズム運動と共通している」と混乱し、彼女たちの主張を聞いて、え、なんで女性を差別している男性に加担するの?と混乱している。わたしは終わりに行けば行くほど彼女の書いたことが気持ち悪くて悪くて(彼女の主張していることが気持ちが悪いんじゃなく、愛国者女性のしたり言ったりすることが気持ちが悪かった)途中で何度も本を投げ出しそうになった。日本ってこんな国になっちゃったの?って。けれど、あそこまでの取材をするのは本当にしんどかったと思うし、すごいと言いたい(特に幼児教育のところと天皇誕生日祝賀の場面)。


    北原さんの文章はどんどんしんどくなっていったが、交互に出てくる朴さんの文章の透明感で少しホッとしたり、うまくバランスが取れてたんじゃないだろうか。

    愛国者女性の中で、この本のインタビューを引き受けた人は、どちらかというと異端な印象を受けた。まぁこの本の中にもいろんな人にインタビューを依頼したがほとんど引き受けてくれなかったと書いてある。インタビューを引き受けた人は今は運動から身を引いていたり、在特会とは一線を画していたりする人も何人もいて、そこのところをちょっと考慮しなければならないと思ったが、あれっと思ったのは、ある程度のところで自分と似たようなことを思っている人なんだということだった。でも結論が違う。確か北原さんも「これとこれがどうしてこういう風に結びつくのか理解できない」って書いてたと思うけど、わたしも理解できない。親から捨てられた子どもの面倒をみていた人が、学校や先生のせいで保護施設に行かされてしまったことに憤りを感じるのは分かるけど、なんでその後の怒りの矛先が日教組なんだろう?保護施設に行かされるのは国のシステムであって、別に日教組は関係ないんじゃないだろうか、って思ったんだけどね。。

    ただ、インタビューを受けた人が共通しているのは「自分は弱者側だとは思わない」「だから自分は弱者でこういう被害を受けたと被害者ぶって主張する人が大嫌い」ってことだと思った。まぁこういう人を「自分が弱者側にいることを認めるのが怖い、実は弱い人たち」って言ってしまうと簡単だと思うけどね。実際そうだと思うんだけどね。。だけどそうやって「憐れんで」たって、物事は変わらないんだけどね。。それに「弱い人」って必ずしも憐れみの対象ではないし、悪いことではないしね。でも怖いのは、わたし自身の中にこういった人たちを「弱い人だね」と言って「思いっきり馬鹿にしたい」という気持ちがあることだ。弱いものいじめをする人を思いっきり叩きのめしたい、そういう気持ちがわたしの中にある。「お前も同じ思いをしろ!」って。でも、それじゃなんの解決にもならないよね。っていうか弱者を叩いてる愛国者と同じじゃないか。なら一体わたしはどうすればいいんだろう?

    なんかもう、この本怖かった。読んでるうちにどんどん怖くなった。今後、日本に住み続ける自信がなくなった。いや、元から自信があったわけじゃないけど。。だからといって、ここが嫌いなわけじゃない。「こんな国になればいいなあ」という願いも依然として持っている。けど、そういう願いが叶わないどころか、持っていることすら自分の身が危険な状態になりそうだ。

    お二人とも、この本を書くに当たっては本当にしんどかったと思う。そこを敢えて書かれた勇気(というのかな。精神力かな)に敬意を表したい。

  • p.62 確かに大きなメディアは彼女たちの声をまともには、拾わない。彼女たちは偏った愛国主義者で、極端な思想の持ち主とされ、大きなメディアが報道することはほとんどない。どこにも届かない声を、だからこそ彼女たちはネットを通じて発表し、そしてこうやって街に出て声をあげるのだ。さぞかし悔しい思いをしてきただろう。さぞかし怒りがくすぶっていることだろう。闘わずには、いられないことだろう。

    p.86 1998年に金大中が大統領になったときは、女性問題を専門に扱う女性省ができた。まもなく女性の政治家枠を一定数決めるクォーター制度が導入され、2005年には家父長制色の強い戸主制度廃止が決定された。そういった韓国社会の変化は、フェミニズムへのバッシングが強まり、保守化していくように感じられる日本社会とは全く違って見えた。

    p.102 「フェミニズムは、被害者意識が強いから嫌い」「あなたみたいな女、大嫌いなのよ。被害者意識が強くて」
     強者でありたい女たちは、フェミニズムこそが女を侮辱していると考える。「被害者面する」「弱者ぶる」とは、フェミニズム嫌いの女性たちがよく言うことである。そしてそれは、愛国女性たちが元「従軍慰安婦」に向ける言葉と一語一句同じだ。

  • これまでフェミニズムや在日の立場でものを書いてきた2人の女性が、愛国運動やヘイトデモに参加する女性たちを見に行ったいったり、直接インタヴューしたりする。取材対象の女性たちの、生態には共感しながらも、思想というか思考回路はまったく理解できない様子で、著者たちのとまどいがそのまま文面にあらわれている。この本はそのとまどいぶり、もやもやぶりこそが読みどころなのだろう。

  • たった2~3年前の本だけど、その間に状況は随分とまた変わってしまったのでやや今更感のある内容ではあった。でもむしろフェミの女性たちに近い姿を見るところとか、やはり興味深いところもあった。本音を引き出すのは本当に難しいよなあ、と改めて感じた。

  • 結局、よくわからなかった。なんでヘイトスピーチしてるのか、わからなかった。感情的だからか、強がりたいからなのか、そんなかんじだけでもないみたい。
    著者の衝突や混乱がみえるというてんはよかった。
    でもすっきりしない。そういうものと思えばいいのかなぁ。

  • この本が図書館に置いてあるイミが分からない

  • 311

  • 日本に住む韓国人の感想。少し難しい

  • 二ヶ月ぶりぐらいに再読

  • 右派のデモ活動に参加する女性たちの実像に迫る(迫ろうとする)ドキュメント。最後までかみ合わない部分はあるが、著者らの真摯な姿勢と、それ故の苛立ちのようなものは伝わってきた。『戦争論』の影響の大きさも改めて感じられた。

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著者プロフィール

北原 みのり Kitahara Minori
作家、女性のためのプレジャーグッズショップ「ラブピースクラブ」を運営する(有)アジュマ代表。2021年アジュマブックススタート。希望のたね基金理事。著書に『日本のフェミニズム』(河出書房新社刊)など多数。

「2022年 『パパはどこ?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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