- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309247182
感想・レビュー・書評
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ひとつのカテゴリーで読み続けていると、読了した本の中の人物に新しい本でも出会う確率が高まり、面白さも増してくる。
急にその本が身近に感じられたり、再会の喜び(?)に気持ちも上向きになったり。
「本の虫の本」では、「わたしの小さな古本屋」の田中美穂さんが夏葉社の本をお店に置いている話が書いてあった。その夏葉社の島田さんの本では、出版した本を高評価してくれた人の中に岡崎武志さんの名前があった。
岡崎さんと島田さんは共に庄野潤三のファンで、連れ立ってこの作家の家を訪ねてもいる。薄氷を踏むような思いになる島田さんの本の中で、心温まる場面だ。
本書も同じく、谷川俊太郎さんの特別インタビュー記事が入っている。
谷川さんは出会いの確立が格段に高いが、それでも意図しない連投になった。
もちろん島田さんの記事もあるし、総論のような形で最後に語るのが「これからの本屋読本」の内沼晋太郎さんだ。何度読んでもここはちょっぴり胸が熱くなる。
起業のハウツー本ではない。
ひとり出版社に挑んだ人たちを取材してまとめたものだが、生き方イコール働き方になっているのが大きな特徴だ。どの人も、本に対する並大抵ではない情熱を持ち、縮小していく分野に新たな価値観をもって向き合っている。
「私の一冊」とでも呼びたい本を皆さんが持っていて、それらがとても魅力的。
写真集という、あまり儲からない分野を発掘したり、装幀に力を入れたり、ニッチでも一定のファンに向けた本を出していたりと、それぞれ個性は様々だ。
県内に50社以上もの出版社があるという沖縄の話も面白い。どこも小規模で、ひとり出版社も珍しくないらしい。
小さなところだからこそ、惜しみなく力を出し合い助け合って、少しでも遠くへ本を届けようとしているという。
ひとりで出来ることと大勢だから出来ることは当然違ってくる。
共通するのは「この本を届けたい」という強い思い。理念だけでは継続できないが、その姿勢が仲間と読み手を掴んでいく過程が心地よい。
ただ、ミシマ社さんは別格かな。
2015年の本だがこの時点で8人の社員がいると書かれている。
更に「ミシマガジン」を運営することで、読者会員からの会費で共同運営というサポーター制をとっている。互いの声を届きやすくして共に励みになるという新システムだが、これは手を緩められそうもない。でもちょっと興味がある。
谷川さんの息子さんの妻・恵さんの「ゆめある舎」も登場する。
とんでもなく大きなコネクションだ・笑
しかし谷川さんはそのインタビューの中で「出版に理想なんか追っちゃダメ。食えるか食えないかですよ」と語っており思わず笑ってしまった。
「サイドビジネスとしてやるほうが、小商いとしては無理がないんじゃない」とも。
こういった現実的な声も拾っているところが、本書の面白さでもある。
検索すると、取材された出版社はどこも、現在継続中なのが素直に嬉しい。
私のように起業などとうてい無理な者には、内沼さんの言われるように「小さな本屋」として生きてゆくという道がある。
本を読み、本を紹介し本の世界へいざなう。つまり、皆さんがいつもしていること(!)。
本を楽しむひとは、出来るだけ多い方がいいものね。
生物と同じように、本の世界も多様性が未来を支えると思うから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
長いこと積ん読状態でしたが、とりま読了。
作りたいと言う情熱自体が先に立っているのかな、という印象。
作るという事を自然にできている人でなければ、
ひとり出版社などできやしないのかな、と。 -
この本からは本に対する愛情だけがただただ伝わってきた。
愛情があるからこそ斜陽産業といわれる本に携わる仕事をしている彼らの強さを感じた。
こういった人たちを本にした西山さんは素晴らしいとしか言いようがない。 -
一通り読んでわかったのは「独りで出版社を立ち上げても、人の運とヒット商品を嗅ぎ分ける嗅覚があればやっていける」ということだけだった。
結局ある程度の成功例しかなかった。世に問いたい本さえあればやっていけるもんでもないだろうに、いまのところ出版社としてもっているところだけが選ばれている感があって、勉強になるかというとそうでもない気がする。版元がなんとか状況を保っている以上に、夢半ばで潰えた出版社のことももっと話題になってよかったのではないか、とわりとまじめに思うのだった。
取り上げられていたトムズボックスさんも近々閉店するようだし、そのあたりに取材の手が入ってもいいだろう、とは思う。 -
紙の本が電子書籍に駆逐されつつある今、小さな小さな本屋さんたちの心意気がいい!
読みたい本が増えて大変