死してなお踊れ: 一遍上人伝

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著者 : 栗原康
  • 河出書房新社 (2017年1月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309247915

死してなお踊れ: 一遍上人伝の感想・レビュー・書評

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  •  独特の文体で一遍上人の生涯を追う。フオオ、フオオオオオ!

     一遍上人といえば踊念仏であり、市井の人に混じって念仏を説いて回った鎌倉時代のお坊さんである。日本史の教科書にも載るくらいの有名人であって名前と踊念仏くらいは覚えているが、生涯の詳細のことはあまりよく知らなかった。
     鎌倉時代に限らず坊主というのは汚職と堕落にまみれていたし、仏教自体が国体に飲み込まれたり、生臭坊主の飯の種になったりしていた。血の穢れと称して女性への差別が強くなっていったのもちょうどこの頃である。
     そんな時代に身分も貴賤も男女も関係なく念仏による救いを説いて廻ったのが一遍上人であって、差別の歴史を考える上でも実は重要な人物である。

     本書の特色といえば冒頭触れたとおり帯でも触れられているとおり、独特の文体、口語混じりの勢いであろう。例えば13歳から25歳まで九州で仏門修行に出ていた一遍が呼び戻された後のくだりである。

    「一遍は、十二年ぶりに故郷の道後にもどった。きっと、お兄さんも弟たちもよろこんでくれたことだろう。その後、ちょっとした屋敷をかまえて結婚もした。一遍もいい歳だ。そりゃあやることはまあきまっている。セックス、セックス、セックスだ。子どももうまれた。女の子。しかも、ひとりではない。どうも一遍には、もうひとり奥さんがいたらしく、そっちにも女の子がうまれている。いいね、煮ても焼いてもセックスだ」

     別に一遍は生涯性豪だったわけではなく、後に再出家して旅に出てからは淫戒を守っている。ただまあ、本書全体がこういう雰囲気で進んでいく。ところどころに著者の感想が織り込まれてくる。いいね、とか、かっこよすぎる、とか、そういうのがちょいちょい入ってくる。好みの問題であろうが、授業というよりは講談のような勢いである。

     一遍上人そのものでなく、著者が一遍上人をどう見ているか、が本書の主題であろう。著者のことはよく知らないが、この人がこんなにも愛してやまない一遍上人とはどういう人だろう、みたいな興味が湧く。人の心理とはそういうものだ。詳しく知りたかったら別の資料を追えばいい。巻末に大量の資料が掲載されている。膨大なバックボーンがそこにあるのだが、別に難しいことは考えなくていい、ただこの文体の流れに乗って踊ればいい。それが一遍上人の教えであろう。

     あえて注文をつければ一遍上人に関する絵図は数多く残されているのだから、関連する絵図を掲載して欲しかった。権利とかいろいろあったのだろうか。

  • 「人」を語り継ぐことは
    なかなか難しい
    ややもすれば、無条件の礼賛になってしまって
    そりゃ、いい人なんだろうけれど…
    となってしまって
    あなたはそう思ったのだろうけれど…
    になってしまいがちである

    ところが
    栗原康さんが語れば
    いや、これが面白いのなんの
    良いことも、だめなことも
    なにもかもみんなひっくるめて
    そりゃあ、次に伝えたい
    この人
    だろうね
    になっていく

    一遍上人の
    姿、形、人となり
    息遣いまで届いてきそうです

  • 鎌倉新仏教・時宗の開祖で、踊り念仏で知られる一遍上人についてのまとめた本。

    この本面白いんだけど、ほとんどマンガみたいな世界観というか、一遍上人を材料に著者の栗原さんが言いたいこと言ってるだけじゃねーのかって感じしかしない笑
    しかし、意外とそこまで抵抗感がなく読めたので、その理由を考えてみたい。

    この本に限らず、栗原さんの本はどこまでが客観的な事実の説明で、どこからが栗原さんの主観や想像なのかということがよくわからないことが多い。そしてこの本では、特にそれが顕著である。

    というか、実際に一遍がある出来事に遭遇した時にどのように感じたか、何を言ったかなど、細かく残っているわけではないので、ほとんどは栗原さんの妄想であるといって差し支えない。その証拠に「……と思ったにちがいない」みたいな、根拠のよくわからない断定が多い。いや、多すぎる。

    だから、それはまあ妄想なのだけど、こうした時代劇レベルの人物が主人公になると、(大杉栄や伊藤野枝のような近代の思想家よりも)フィクションをぶっこんでもなんとなくゆるされるような雰囲気が出てくると感じるのは僕だけだろうか。
    実際、時代劇だって史実だけで物語を作るわけではなく、そこに作者の言いたいことや想像や妄想を入れ込み、話を展開させるわけだから、やっていることは同じである。

    そもそも、一遍の行いを記録したとされる絵巻などは、人間の生活をデフォルメして描いており、またあったかどうかよくわからない「奇跡」のような出来事を記録しているものであるために、神話に近い。栗原さんの本は、人間の感情の描き方が極端なのが難点だが、そうした極端な描き方は、神話的なものとは親和的である(別に駄洒落ではない) そうして点で、あまり違和感がないのであった。

    それで、一遍の憑依した栗原さんによって何が語られているのかというと、大事なことは以下のような話だ。

    すなわち、

    世俗的な価値を打ち棄てること、世俗的な価値を打ち棄てた先にちゃっかり存在する宗教的ヒエラルキーも打ち棄てること、私有財産を否定すること、「いまここ」で歓びを実現すること。

    こう書くと、ほとんどアナーキズムとか反グローバリゼーションの価値観である。まぁ主張が一貫してるのは良いことである。なんでアナーキズム研究してる人が一遍上人なんかを取り上げるんだって疑問はここで解消される。要は、一遍にアナーキズムを見出したってことでしょうね。「来たれ、極楽コミュニズム」(p248)なんだかわからないけど、そういうことなんでしょう。

    ところで、踊り念仏なるものは、どう考えてもトランス状態を目指すレイヴだし、端的に言って楽しそうである。「テクノ法要」みたいなのもあることだし、「レイヴ念仏」みたいなイベントとかあったら行ってみたい。

    個人的には、このフィクショナルな物語を元にして、ぜひともスピリチュアルな世界観を描いたアニメ作品とか、観てみたい。観てみたくないですか?

  • 捨てる。何もかも。
    踊っちまえば救われる。一編上人入門。
    軽快な語りなので文章があえば楽しく読めるかと。
    出典が多いので元ネタが参考になる。

  • 2017年12月10日に紹介されました!

  • 踊り念仏って中学校の歴史の中で習う、よくわからないけど印象に残る、一遍という名前と共に、記憶には残っているがよく知らない代表的なものの一つ。今更ながら踊り念仏とはなんぞやという気持ちで読んでみる。。。楽しそう。たぶん、この時代に私が生きていたらハマる。空也とのつながりなどは全く知らなかった。他力本願という意味も全然理解していなかった。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏としばらく無心で唱えてみたくなる。

    ただ、本の内容はとても興味深いものの、文体に最後まで慣れずに終わった。

  • 町田康を思わせる、爆裂文体。

    読んでいるとボーッとしてきて、ほんとに死んでしまうかもと思った。

  • 究極のかたちって、とてもシンプルなのかも。

  • 半分くらいでギブアップ。

    半分も読んだのに私には一遍上人という人の何が魅力なのか、本に書かれるほどのものが何なのかが全然わからなかった。

    というか、とどのつまりはある程度のデリカシーという才能を持つ著者が金に困って思いついちゃったよ的なビジネスをおっ始めたが、それが抜群の演技力という才能をも兼ね備えていたもので、ならもうおれは人間やめるぞ。

    という流れになった的な印象。

    汚れる選択肢をも奪われた人というのもあまり幸せそうではないが、汚れるしかない人もこれまたあまり幸せそうではない。

    知人が、坊主や牧師、寺や教会という存在は、概念としてのスケープゴートを請け負うビジネスに過ぎず、原罪を請け負っている本体はまた別にいる、と言っていた。
    その構図をこの本で見た気がした。

  • 一遍上人伝
    でも、退屈な伝記ではない。
    宗教の解説書でもない。

    というか、私はきちんと一遍上人を学んだことはないけれど、たぶん言ってることは、びんびん伝わってくる気がする。

    捨てろ捨てろ捨てろ
    一所懸命、報償として土地をもらい。
    それを守る武家社会において、独自の宗教理論を展開し、広めた一遍上人。
    独特な筆者の語り口を含めて、読む価値のある一冊だと、私は思います。

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