この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた

  • 河出書房新社
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感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309253251

感想・レビュー・書評

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  • >僕らの知っていた世界は終わりを遂げた。

    (パンデミックや核戦争や小惑星の衝突や、はたまた南米発の石化光線などで)科学文明の恩恵を受けられなくなった少数の現代人が、どうやって当座を生き延び、さらに再び人口を増やしていけば良いのか、その参考書であり、翻って現代科学文明の基礎に関する入門書でもある1冊。

    とってもエキサイティング!

    クラークの第三法則(十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。)を引き合いに出すまでもなく、私たちは手元にある薄い板の中身について何一つ知らないし、田畑に撒く肥料の作り方も知らない。石鹸の作り方?マンガで何度も見ましたね、確か灰を集めて…どうするんでしたっけ…。
    異世界転生しても現代知識チートで生き延びるのは難しすぎる。

    でもこの本が破局後の世界で手元にあれば、少なくとも途方に暮れることだけは避けられるでしょう。
    何千年もかけて大量の死者を出しながら試行錯誤しなくても、一足飛び二足飛びに科学の発展をトレースすることが出来ます。

    これがあれば、ノルウェーの北、スピッツベルゲン島の海抜125メートルの山腹に建設されている、鉄筋コンクリートの壁に防爆扉、および気密室が守る「スヴァールヴァル世界種子貯蔵庫」の存在を知ることができる。

    まず初めに手に入れようとしなければならない物質が炭酸カルシウムであることを知ることもできる。
    そこから消毒薬、建設資材、石鹸を作るのだ。

    さらに文明復興が進んだ後に、動力・印刷・医薬品・通信・時計などを作っていく過程についても説明される。
    もちろん概要の表面を撫でていくような物だけど、こういう知識があるのと無いのとでは天と地ほどの差があるだろう。具体的な方法を調べるとっかかりがあるのとないのとでは。それにしても人類、良くもまあこんな複雑な数々のテクノロジーを作り上げたなあ。すごい。

    ということで大変読みごたえがある素晴らしい一冊でした。これでいつ石化したツバメを発見しても大丈夫。いやあの世界は本は残ってないから無理か。

  • タイトル通りの本なのですが、個人向けマニュアルではなく、文明にとって重要な要素を復興させるためにどうするのか?を思考実験したものです。文明が発展してきた間の科学者の葛藤は全てすっ飛ばせるので、アカデミックかつ壮大な「たられば論」にもなっています。

    評価は高めにつけたのですが、正直中身は流し読みのところもチラホラ。製紙の方法とか水車の原理とか、読んでもどうにもならないと思ってしまうのです。
    だからこそ、ここまで幅広い分野にわたって文明の成り立ちを書ききったこと自体がただただ凄いと思うし、今の文明の積み重なりぶりってのも恐ろしいレベルだなぁと思うわけで。
    ※しかし、それにしてももうちょっと図解とか欲しかった。。

    最終章の冒頭にあった、「なぜ産業革命はヨーロッパで起きたのか?」というくだりは考えさせられました。

  • 人類が滅亡した後に、再び文明を起こすためにはどうしたらいいのかが書かれた本。
    まず人類が滅亡したら、建物の並ぶ都市はどうなるのかという話から始まり、残された建物や食料で食いつなぎ生き延びる方法が書かれている。
    例えばスーパーマーケットの棚に商品が丸々残っていたら、一人当たり何年生き延びられるのかなど興味深い計算もある。

    生き延びるために農業で食料を作り、衣服を作り、その他の物質を作るためには材料集めから作り方からどうしたらいいのか、医薬品はどうしたらいいのか、など章に分けられながら書かれている。

  • 具体的で面白い!

    p87
    「余剰農産物」が文明の進歩を推し進める基本的なエンジンなのである。
    大破局後の社会が前進するためには、なんとしても確固たる農業基盤を築かなければならない。

    p92
    砂糖は熱帯のサトウキビもしくは温帯で育つサトウダイコンの根から抽出できる

    97
    穀物の粒をすり潰す方法として「最も単純な方法は一握りの粒を滑らかで平らな石の上に置いて、前屈みになって体重をかけ、すり石の下ですり潰すことだ」って書いてて、「前屈みになって体重をかけ」の部分って普通は省略するような細かい、もはや冗長にすら思えるほどの超具体的な記述なんだけど、やってるとこをイメージできてすごく好きだなあって思った。

  • 文明社会の崩壊。途方もないような話だ。例えば地球温暖化で、核戦争で、人とツバメだけが石化する謎の病で、文明が滅びてしまったら、そこから文明を再興するためにはどんな知識が必要なのだろうか。唆るぜこれは!
    週刊少年ジャンプで2017年現在連載中のマンガがどうも似ているなぁと、買ってから積んであった本を手にとって読み始めたら面白かった!コミックスによればどうも主要な参考文献のようで。そちらもカリ、鉄、ガラス、位置情報など、マンガとしての味付けをされて面白く読める。もしこちらを挫折した人がいたらそちらを読んでもよいかもしれない。
    内容は、世にあまねく科学知識の中から、文明崩壊後に必要と思われる知識から順に説明していく。高校科学の知識でもギリギリ、ギリギリ読めるかなぁ。身近な、でも何がどうなってできているのか知らないあれこれの科学的な由来が知れて、知的な満足感が得られる本。
    正直道具の仕組みを文章で語られてもいまいちピンと来なかったところはある。六分儀とか何がどうなっているのやらって感じもあったけど、わかる範囲で楽しめば良いのではないでしょうか!

  • 本書でも引き合いに出されている映画『マッド・マックス』やコーマック・マッカーシー『ザ・ロード』に描かれたような大破局後の世界に生き延びてしまったとき、まずなすべきことは、破壊されずに残った図書館に行って本書を手にし、その後博物館へ行って人類の文明の歴史と人類が発明してきた数々の道具を見ることである。

    大破局後に大幅に減ってしまった人類がそれまでの文明を維持するのは至難の技で、その人口に見合った文明レベルまで後退せざるを得ない。
    科学技術の発展というのは人口に合わせ、段階的に積み上げられてゆくものだということが理解できた。

    それにしても私には、本書で取り上げられているような農業、天文、科学、化学や技術の知識がまるでないため、生き延びたとしても何の役にも立たない。大破局の際には確実に死んでおきたいものである。

  • 現代の文明がなんらかの形で崩壊してしまい、その後生き残ってしまった場合、どのようにしてそこから生きていけばよいのか。早急に行わなければならないことは何なのか。そしてどこまで文明を回復していけば良いのか。それらについての答えを、今の文明の利器がどのように作られていったのかを追いながら、それをどのように復活させるのかという視点で書かれています。あくまで文明の復興の最優先の事項に限って書かれていますので、今の文明を残すとかいう視点では書かれていません。
    最低限の今の生活を行うだけでも、化学や工学などの知識が必要だということ。何と何を組み合わせて、何を作ることが出来るのかを知っておく必要があるということ。そしてその具体的な方法も書かれており、もし世界がほんとうに崩壊した場合に、新しい世界で前に進む方法が書かれています。

  • 原題 How to buid our world from scratch

    映画やアニメでよく出てくるポストワールドにおいて、世界をどうやって再構築するかという話。要は、現代社会の基礎技術の説明。世界が消えた後になぜ自分たちが 生き残っているかとか、インフラを再生したほうが手っ取り早いのでは、とか、前提自体には疑問があるが、
    退屈になりそうな技術解説が、世界の再構築という枠で語られたことによって、とても興味深く読めた。

    翻訳も的確と思われすが、p224 三極管の記述で電子がフィラメントを加熱させ、とあるのはあきらかな誤訳。加熱したフィラメントから電子が出る。

  • 著者も断言しているように、本書は個人レベルのサバイバル本ではなく、社会として科学技術をいかに保持・維持・復活再発展させるか? という内容。あくまでも一般書ではあるが、中・高レベルの「化学はまかせとけ!」と自信を持って言える人でないと、多少敷居が高いかもしれない。理科70点の私程度では、とりあえず書いてある日本語が理解できないということはないのだが、いまいちイメージ湧かないというか、脳内に像を結ばないというか…もう少し図版があればありがたかったかも。
    しかし、内容そのものはめちゃくちゃ興味深いし面白い。個人的に、なかなか悩ましい本だった。

    2016/1/31~2/3読了

  • 地球か滅びた日に、まず手に取りたい本。

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著者プロフィール

イギリス・レスター大学にあるイギリス宇宙局の研究者で、宇宙生物学が専門。サイエンスの著作で数々の賞を受賞、「ガーディアン」紙や「ザ・タイムズ」紙などに寄稿し、BBCなどテレビ番組にも複数出演している。

「2019年 『世界の起源 人類を決定づけた地球の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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