生物はなぜ誕生したのか:生命の起源と進化の最新科学

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309253404

感想・レビュー・書評

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  • ■『生物はなぜ誕生したのか:生命の起源と進化の最新科学』読了 ★4つ(5点満点)
    https://www.amazon.co.jp/gp/product/4309253407/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4309253407&linkCode=as2&tag=hitoshiebih0a-22

    最近、古生物学、生物進化学、地質学などを読みまくって、たどり着いたのが、この本。まず、この企画を考えた著者2人とと編集者を賞賛したい。
    アマゾンの評価も高いのだが、「一般書のレベルを遙かに超えて、大学教科書レベル」という、この超ニッチな本をよく成立させてくれました^^ (多分著者の趣味だろう)。

    内容は生物の誕生と進化の40億年史をまとめたものだが、この本の本のすごいところは2つ。
    まず、著者が「ピーター・ウォード」「ジョセフ・カーシェビング」という古生物学、生物学の超重鎮の2人。出てくる参考の説が友人の地質学者に直接聞いたとかばかり、なのはこの2人しかできない。
    もう1つ最大のチャレンジは、書評で多数の指摘があるように、原題は「NEW HISTORY OF LIFE」。つまり、新しい生命史なのだ。
    網羅している内容は、地球誕生から現在、そして、未来予測まである、サイエンス書にありがちな「全史」。

    この本のすごいのは、原書の発売が2015年なのだが、「New History」の名の通り、21世紀、つまりここ10年、20年ぐらいの新発見・新説を評価が、まだ固まってないことまで含めてバシバシ使っているところ。
    「全史」なのに、全編にわたって新説をここまで入れた本はみたことない。

    書評で「この本を読めばあとは10年間は、この分野で新しい本を読まなくてよい」というコメントがあったが、この人がどこまで意識して書いたかかわからないが、これは、勘違いしやすいコメントだ。
    一般に「10年」というと長いと感じるが、なんたって「40億年の全史」ですから。

    技術は別だが、100年単位で発展してきた、科学の世界で10年でまた、生命の見方が変わるかもしれないというのはすごいことだ。
    実際に、進化学、古生物学では、この10年ぐらいに新しい発見がたくさんされているらしく、今後も発見されるだろう。
    10年後に、新版を見たい本。

  • 本書は、原題が表現する通り、地球における生命の誕生から絶滅を含む進化を、新しく得られた知見と著者の研究成果に基づき解説したものである。いかにして生物種が今あるような状態になったのか、ということを宇宙生物学と地球生物学の進展も踏まえて非常に詳細に描いたものである。生命は自滅的な共倒れや絶滅を繰り返してきたという「メデア仮説」や地球型生命は宇宙でも非常に稀であるとする「レアアース仮説」で知られるピーター・ウォード氏と「スノーボールアース仮説」の提唱者や「生命火星起源説」でも有名なカーシュヴィング氏の共著になっている。『生命はなぜ誕生したのか』というタイトルが付けられたことには違和感がある。そもそも宇宙や生物の「起源」を問う研究において、「なぜ (WHY)」と「いかに (HOW)」は厳密に区別されなくてはならない。原題は”A New History of Life: The Radical New Discoveries About the Origins and Evolution of Life on Earth”なので、翻訳者や出版社が意識をせずにインパクトを狙って付けた可能性がある。残念である。なお、生命の誕生の部分のテーマを扱った著作として、ニック・レーンの『生命、エネルギー、進化』『生命の跳躍』『ミトコンドリアが進化を決めた』があるが、実際に著者は本書を書くにあたってニック・レーンから影響を受けたとわざわざ語っている。また、気候変動については大河内直彦氏の『チェンジング・ブルー』とも重なるところがあるので参考にすると理解が深まるのではないだろうか(ミランコビッチサイクルや氷床コアの調査などに触れられている)。かなり裾野の広いテーマを扱った本である。

    本書の軸としては、生命の歴史が最も強い影響を受けたのは環境の激変であり、中でも酸素、二酸化炭素、硫化硫黄の三種類の気体の濃度変化が大きく影響を与えており、現存する生物が今のような顔ぶれになったのは、生物自体の進化よりもこれら気体濃度を含む生態系の進化が最も大きな要因として働いているというものである。

    著者はまず生命の起源から話を始める。ここでは、ニック・レーンによる熱水噴出孔で生命が始まったという説に触れて賛同している。一方で、著者らが支持する説の特徴として、生命が火星で生まれて、隕石として地球に到達したというものがある。重力の小さな火星からは容易に物質が地球に到達しえたということと、火星の環境の方がRNAの形成に適していることから著者らはその可能性の方が高いと結論している。これについてはニック・レーンはその説には依拠していないし、結論は出ていない(ニック・レーンは自分が理解する範囲ではこの説には否定的だ)。個人的には、生命の種があったとしても、それが単発的に地球に到達した後に複製によって増えるプロセスが受け入れられない。ただ、熱水孔における生命の進化などについてはある程度の共通の見解ができていそうではある。

    生命の起源の後、著者らは大量絶滅など地球上で起きた生物種に対する歴史を分析する。先に述べたとおり、地球の環境の中でも二酸化炭素と酸素の濃度が生物の種の分化や絶滅、つまり生物の多様性にも影響していたと結論付ける。たとえば、ペルム紀の大量絶滅は酸素濃度の低下とそれに続く硫化水素濃度の増加によって引き起こされたと著者は見ている。また、酸素濃度によって生物の体の大きさや種の数が規定されることにも触れられている。生物が、酸素と二酸化炭素を利用してエネルギーを得ていることから、これらの濃度によって規定される地球環境が想定以上に生物に影響を与えているのだということがわかる。また、これらの濃度が長い地球の歴史の中で大きく変わっていることも研究により明らかになっている。二酸化炭素濃度は知られているとおり、地球の温度に影響を与えるし、生物相の変化も二酸化炭素を始め重要な気体の濃度に影響を与えるのである。そして、低酸素濃度の環境は絶滅とともに進化や種としての新機軸の発生を促すこととなる。ペルム紀の絶滅ののちに哺乳類と恐竜を生むこととなったのもそのような結果でもある。クジラ、アザラシ、ペンギンなどの海に戻った生物もこの時期に生まれたとされる。ペルム紀の絶滅が効率的な肺を持ったとされる恐竜が生まれる余地を生み、低酸素濃度の期間は小さく種数も少なかった恐竜が、酸素濃度が高まったジュラ紀後期から白亜紀にかけて大型化と種数の増加を見ることになったのである。

    一方、恐竜を絶滅させたK-Tイベントの絶滅は、ユカタン半島近辺における小惑星の衝突が原因であったことは、多くの証拠からおそらく正しそうである。チュクシルーブ・クレーター跡だけでなく、地層に含まれるイリジウムの存在や、衝撃石英の存在などから隕石衝突の跡が確かめられている。

    本書では、ビッグファイブと呼ばれる五つの大量絶滅 - オルドビス紀、デボン紀、ペルム紀、三畳紀、白亜紀のそれぞれの末に起きた絶滅 - も含めて少なくとも10回の絶滅があったと考えている。それぞれの原因は同じとは限らない。

    1. 大酸化事変による大量絶滅 (有毒な酸素濃度増加とスノーボールアース)
    2. クライオジェニア紀の絶滅 (二度のスノーボールアース現象)
    3. エディアカラ紀後期の絶滅 (動物による微生物の絶滅)
    4. カンブリア紀後期の絶滅 (SPICEイベント)
    5. オルドビス紀の大量絶滅 (寒冷もしくは海水面変動)
    6. デボン紀の大量絶滅 (温室効果)
    7. ペルム紀の大量絶滅 (温室効果)
    8. 三畳紀の大量絶滅 (温室効果)
    9. 白亜紀-古第三紀境界の大量絶滅 (隕石衝突)
    10. 更新世末期~完新世にかけての大量絶滅 (気候変動と人間の活動)

    特に最後の人間の活動による特に大型動物の絶滅にも注目するべきだという。一方で、現在は種数でいうとかなり多様な種が存在する時期であるともいう。この種の多様性を維持することが今後も生物が地球上で存在していくためには重要であるという。

    もう少し長期的視点からは、太陽は今よりもさらに明るくなり、最終的には地球の過熱化が二十億年後か三十億年後には起きて、地球の平均気温は五十度を超えることになる。だがその前、今から五億年後か十億年後には二酸化炭素濃度が下がりすぎて、現生の植物が存在できなくなるという時期が来ると予想されている。

    内容としては結構難しいが、興味深い内容を含む本。

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    【関連書籍のレビュー】
    『ミトコンドリアが進化を決めた』(ニック・レーン)のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4622073404
    『生命の跳躍――進化の10大発明』(ニック・レーン)のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/462207575X
    『生命、エネルギー、進化』(ニック・レーン)のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4622085348
    『チェンジング・ブルー――気候変動の謎に迫る』(大河内直彦)のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4006032803
    『生命の星の条件を探る』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4163903224
    『生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4062882620
    『できたての地球――生命誕生の条件』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4000296388
    『一万年の進化爆発』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822283992

  • 46億年前に地球が誕生し、40億年前には既に生物が誕生していたという。そこから人類が登場するのはずっと後の20万年前だ。その壮大なドラマが記されている。
    この本には、2016年時点での最新の内容を中心に記載されている。どの時代の話も驚くことばかりである。そしてその解明は、化石と、その化石が発見された地層から読み解くという、多くの人の気の遠くなる様な地道な努力によってなされたものだ。
    過去にはビッグ5言われる、全体の半分以上が絶滅した時期が5回もあり、その間にも小規模だが何度も絶滅時期があったらしい。また、絶滅の原因も分かってきている。例えば、温暖化、寒冷化、二酸化炭素の欠乏、酸素の欠乏、隕石の衝突などが挙げられている。
    現在私達は、このまま二酸化炭素を放出し続ければ、益々温暖化し、大絶滅の時期を迎えてしまうように思う。その環境変化は過去に例のない急激なものである。人類の叡智により回避できるのだろうか。

  • ■著者
    ウォード 古生物学者 大量絶滅について
    ・ワシントン大 生物学・地球科学・宇宙科学教授

    カーシュヴィンク カリフォルニア工科大教授
    ・スノーボールアースを発見、地球物理生物学者


    ●歴史の3つのテーマ p16

    1 生命の歴史が最も強い影響を受けてきたのは環境の激変である

    2 生命の歴史に最も大きな影響を与えたものは単純な3種類の気体分子である。酸素、二酸化炭素、硫化水素。さらに踏み込むなら、硫黄といっていいかもしれない。

    3 現存する生物が今の顔ぶれになったのは、生物自体ではなく生態系の進化が最も大きな要因として働いている。

    ■19章 人類と10度目の大絶滅 p493

    ・化石記録によると、原生人類のうち、現時点でわかっている限り最古の仲間は、十九万五千年前に現在のエチオピアにあたる地域で暮らしていた。

    人類の拡散  496
    ・およそ三万五千年前、進化における最後の微調整が行われ、私たちは今のような姿になったとみられる。
    ・数千年をかけて世界中に拡散

  • P.80まで

  • ☆地球科学(地質学)のロマンを感じるな。
    (参考)
    アメリカの歴史教科書問題 ローウェン
    『生命40億年全史』 フォーティ
    『バージェス頁岩化石図譜』
    『シマウマの縞 蝶の模様』 キャロル
    『植物が出現し、気候を変えた』 ビアリング
    生と死の自然史 レーン

  • 地球と生命の歴史について最新の見解をうまくまとめている、必読の書といえる。自分が子供の頃にあった恐竜図鑑ではカンブリア以前など謎の空白地帯であり、恐竜絶滅原因も説が多々あり、変温動物の可能性が高いとされていた。あれから30年も経たないうちに、これだけの証拠や新学問によって数々の謎が解けつつあるとは驚愕
    かなりの労力、コスト、頭脳を結集した自然科学の最新書・・・読まないのは勿体なさすぎる
    ただ、本の和文タイトルは内容に沿わない。Xエラストテネス→○エラトステネス などの誤植もある。 編集者のレベルの問題か

  • 生物はなぜ誕生したのか:生命の起源と進化の最新科学

    2016/9/11 予約  9/14 借りる。2017/1/10 読み始める。1/27 読みたいが忙しいのでほとんど読まずに いったん返却。

    内容 : 原タイトル:A new history of life
    生命はどこでどのように誕生し、何が進化を推し進めたのかを、
    宇宙生物学や地球生物学といった最新の研究結果をもとに解き明かし、
    生物の生き残りをかけた巧妙な戦略と苦闘の歴史を描く。

    著者 :
    ピーター・ウォード  Ward,Peter Douglas
    ジョゼフ・カーシュヴィンク Kirschvink,Joseph

     ワシントン大学生物学、地球科学及び宇宙科学教授。
     

  •  著者の1人ピーター・ウォードには、一般向け科学書の著書が多くある。私も、そのうちの一冊――『生命と非生命のあいだ』という本を読んだ。
     本書は、ウォードが研究者仲間のカーシュヴィンクとともに書き上げた、地球における生命進化の通史である。

     この分野では過去20年来、画期的な新発見が相次ぎ、生命史が大きく書き換えられてきた。
     たとえば、ウォード自身が主要研究者と目される「宇宙生物学」は、90年代中盤まで分野自体が存在しなかったのだ。

     近年の新発見・新解釈をふんだんに盛り込んだ新たな通史である本書の登場によって、過去の類書は去年のカレンダーのように用済みになった。そう言い切ってもよいくらい、価値ある一書。

     著者たちの語り口は上品なユーモアとウイットに富み、読みやすい。そして、随所に常識をひっくり返す驚きがある。知的興奮の連打で、400ページ超の本を一気読みした。

     再読、三読に値する、第一級の科学啓蒙書である。

  • 読み始めてすぐに既視感にとらわれる。
    「あれ?これってスノーボールアースbyガブリエル・ウォーカーと同じような内容では?」
    それもそのはず、本書共著者の一人ジョゼフ・カーシュヴィングさんはスノーボールアース仮説の提唱者だそうだ。

    地球45億年の歴史において、生命誕生から絶滅の危機を何度も繰り返し、そこからの復活のたびに種類が爆発的に増えてきたという説について、丁寧に書かれている。

    それにしても日本語のタイトル「生物はなぜ誕生しのたか」では本書の内容と全く一致していない。これだとタイトルから期待される、「生物誕生の仕組みやその理由」が書かれているように誤解を受ける。
    英語の「A New History of Life」そのままの方が十分本書の内容を表していると思うのだが、日本語版のタイトルは誰がどのように決定するのでしょうかね?

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著者プロフィール

ワシントン大学生物学教授にして、地球科学および宇宙科学の教授。数多くのドキュメンタリー番組にも出演。著書に『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』『生命と非生命のあいだ』『地球生命は自滅するのか?』など。

「2020年 『生物はなぜ誕生したのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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