江戸の動植物図譜

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制作 : 狩野 博幸 
  • 河出書房新社 (2015年6月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (127ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309255606

江戸の動植物図譜の感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代、自然界から薬になりうる動植物を探求しようとする本草学は、医者が学ぶべきこととして、大きく発展した。
    一方、各藩が殖産事業を起こすにあたり、領内の産物を調査し、まとめた「諸国産物帳」の編纂もなされた。
    こうした動きから、本草学の流れから医師が写生を行うのみならず、大名自ら図譜を描き、また絵師を抱え、さらには武士や町人からも、自然の事物の観察を行い、写生をするものが現れた。
    また、当然のことながら、この時代、「コピー」などというものは存在しない。版画はあるにはあったが、手間も費用もかかる。そのため、直接見る機会が滅多にない珍しい動物の図などは盛んに転写が行われた。この際、図だけではなく、注記や日付まで書き写された場合もあるというから念が入っている。
    こうして多くの動植物図譜が生まれた。
    本書は、多くの図譜から優れたものを選び、その図版を紹介するものである。

    大まかに植物・鳥類・獣類・蟲類・魚介類に分けられている。
    書影からも窺えるように、いずれも非常に詳細・精緻な絵である。
    江戸という時代は、平和が維持されたこともあってか、園芸が盛んになった時代でもあり、ツバキ・サクラ・ウメなどの樹木から、後にはオモト・アサガオ・フクジュソウなどの草本まで、数多くの園芸種が生み出されたという。収録された図譜には、店が多様な種の販売のために作成した展示会用カタログのようなものもある。鉢も鑑賞ポイントであったオモトのような品種では、鉢のデザインも詳細に描かれているのがおもしろいところ。
    鳥類では羽の細かい模様をいかに写し取るかが見所だろう。伊勢長島藩藩主であった増山正賢(雪斎)の「百鳥図」は息を呑む細かさ・美しさである。お殿様、藩政は大丈夫だったのでしょうか・・・? 毛利梅園の「梅園禽譜」も色とりどりの水鳥・陸鳥が美しい。これ、絵の具はどんなものをどうやって使っていたのか、ちょっと興味を惹かれる。
    獣類では「外国珍禽異鳥図」がおもしろい。珍しい動物が長崎に輸入されると、代官が御用絵師にその姿を描かせて、江戸に送るかどうか幕府にお伺いを立てていたんだそうな。ハクビシン、ヤマアラシ、セイウチ等々。確かにこういうものは文字で説明されるより、絵の方がよほどわかりやすい。
    蟲類。栗本丹洲の『千蟲譜』は日本最初の昆虫図説と言われる。絵が優れていることから、シーボルトにより、海外に紹介もされている(cf:『ザリガニ―ニホン・アメリカ・ウチダ』)。昆虫図説、と書いたが、この時代の「蟲」は昆虫だけを指すのではない。おおざっぱにいって、名称の漢字に「虫」が付いていればよいらしく、蛸や蟹、蛙なども含まれる。
    魚介類。島国で昔から海洋資源は利用してきたはずの日本だが、実は、図譜としてはあまり多くないようだ。植物図譜が広く作成されていたのに比べ、紹介されている書籍数は少ない。前述の丹洲、梅園らが表したものがある。奥倉辰行による「水族四帖 春・夏・秋・冬」は、各地での呼称や形態など注も詳細で、生き生きとした魚の姿態が楽しい。何だか「愛」が感じられる絵である。

    美しい絵に引き込まれる。これほど精緻な絵を、何を思いながら描いていたのか。対象を見つめ、筆を走らせる描き手たちの息遣いが聞こえてきそうである。

  • 花鳥、獣、虫、魚介、迷鳥・珍獣……江戸期に盛んとなった、確かな観察眼にもとづいた精緻な動植物画の世界を、ビジュアルたっぷりに紹介。ユニークな日本美術史の一ページ。オールカラー。

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