北斎漫画[肉筆未刊行版]

制作 : セーラ・トンプソン 
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 45
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309255828

感想・レビュー・書評

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  • 北斎肉筆の画帖3冊を原寸大で紹介する画集。
    表表紙から、解題・図版解説。
    裏表紙から、北斎漫画[肉筆未刊行版]初編・二編・三編。
    ボストン美術館所蔵の北斎肉筆の素描・・・絵本の版下本として
    描かれた画帖3冊は、「北斎漫画」の続編「為一先醒鶏肋画譜」の
    版下本ではないかと推測されています。
    出版されるときは下絵として使われ、本来は失ってしまうもの。
    それが何らかの要因で残されたらしい。
    初編は、仕事と商売、産物、祀られる天神、
    想像の動物、実在の魚貝類と植物。
    二編は、森羅万象・・・自然現象や地形、水景、星座関係。
    三編は、建造物とその細部、旅の折々の風景、老若男女、
    歴史上の人物、神仙や仏、様々な職業。
    身体や病の絵もあります。
    朱で欄外に文字があるのは、版下本だからでしょう。
    また、仕事や産物は、江戸時代の風俗が細やかに
    描かれ、民俗や文化の資料としても貴重なものです。
    それらの繊細な筆遣いと緻密な描写が圧倒的です。
    デッサン力の素晴らしさと北斎ならではの独特の表現に、感嘆!
    何でも描いちゃう北斎の素晴らしさが楽しめる画集です。

  • 『北斎漫画』といえば江戸の画狂人、葛飾北斎による一大ベストセラーである。ありとあらゆるものを描いた「絵手本」全15巻。現代の漫画やアニメの元祖とも目され、世界でもよく知られている。漫画というと現在では「絵による物語」を指すことが多いが、北斎の時代には「筆のおもむくままに描いた素描」を指し、『北斎漫画』は特にストーリーがなく、風景や生き物、人の生活の諸相などを描いている。絵を志す人の手本ともなる一方、一般の人が眺めても十分に楽しめるものである。

    本書は、その北斎漫画の続編と見られる北斎の肉筆画帖3冊を、解説とともに全編収めたもの。1823年に「為一(*北斎の画号の1つ)先醒鶏肋画譜」と題する本が出版される予定であったが、何らかの理由で出版されなかったと見られており、本書はその原画にあたるものと考えられている。実際に木版画版が出版されていれば、本書に収録された肉筆画は版木制作過程で失われていたはずのものである。
    出版に至らなかった理由はいくつか推測されているが、版型が通常のものと異なること、北斎の金銭的トラブルや体調不良、金持ちの数寄者が独占するために買い取りを希望したことなどが挙げられている。
    いずれにしても、出版がならなかったがために、鮮明な肉筆画が残ったということになる。

    ボストン美術館は日本美術作品を多く収蔵することで知られるが、本書収録の3冊はそのコレクションから見つかったものである。解説を執筆したのはボストン美術館の学芸員で、英語の解説を日本語に訳した形である。日本美術のみならず、文化への深い造詣も感じさせる、簡潔だが興味深い解説である。

    概要の後に各図版の解説があり、そのまま見ていくと画譜が始まるのだが、ページ数が大きい方から振られていて少々戸惑う。画譜の方は、元の和綴じの冊子の順序にしたがい、裏表紙側からページ数の小さい順に並んでいる。元の冊子を眺めているように見ていけばよいわけだ。

    3冊の最初の1冊は、商売や交易、養蚕、魚介、漁猟などの様子を描く。
    2冊目は天体、星や宮を司る神々、山河の風景など。
    3冊目は城や塀などの建築物、さまざまな身分・職業の人が登場する。

    とにもかくにも、森羅万象・諸事万端が生き生きと描かれ、見ていると心の隅々がのびやかに広がっていくような心地がする。
    北斎という人は、本当にいろんなものに興味があり、あらゆるものを描きとめようとしたのだと思う。
    画狂人、恐るべし。

  • 刊行された「北斎漫画」の続編として用意が進んでいた版下絵集。版下絵は、木版を彫るときには失われてしまうが、これは「運良く」出版が実現せずそのままの版下絵が残り、ボストン美術館に所蔵されているもの。
    刷られた漫画を見るのも大切だが、このような版下絵を今の時代で見れるのはなんともありがたい。
    北斎の天才を知るに貴重(過ぎる)出版物であろう。

  •  まず普段は買えない美術書を買いたく、「北斎漫画[肉筆未刊行版]」を買った。247ページ。
     実は未刊行版を見落としていて、既刊の「北斎漫画」だと思っていたのだ。ボストン美術館蔵の未刊行画の画集らしい。面白い絵が多く、既刊本はまた、余裕のできた時に古本を買おう。

    感想
     「富嶽三十六景」の元のアイデアとなったらしい図がある。様々な職業の図があり、当時の仕事ぶりがわかりそうだ。神仏・鬼神は、デフォルメされて、素描とはいえ、信仰篤くはなかったようである。
     人々の表情・体格も今とは違って、実際多少は違っても、デフォルメされていると思う。
     魚類、草花類の図も多く、精細に描かれて、実際的と思われる。
     北斎の「富嶽三十六景」を頂点とする、多くの浮世絵も、こうしたデッサン力を溜めての画業だろう。

  • 版下絵となる肉筆なので、あぁ、こういう線が、版本のあぁいう表現のもとにあったのか、という発見もあって楽しい

    作品それぞれとしては、なんかもうどれでもなんでもいいわ、多過ぎ

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著者プロフィール

1760?1849年。江戸後期の浮世絵師。代表作に『富嶽三十六景』『北斎漫画』他、多数。世界的に有名な日本を代表する画家で、とくにヨーロッパ印象派の発生にも多大なる影響を与えた。

「2017年 『北斎漫画[肉筆未刊行版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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