- Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309267814
感想・レビュー・書評
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ディープサウスとは、メキシコ湾を囲むように位置する、ルイジアナからサウスカロライナまでの地域。アメリカ南部という言葉からは、「黒人(有色人種)差別」「性差別」「訛り」といったようなことを連想するわたしだけど、一般的にも、保守的な土地柄だとされている。
でも、じつは、わたしの好きな音楽や作家が生まれた場所は、案外、南部が多いのだ。ここ最近、南部出身の作家の著作を読んで、南部を知りたい気持ちに駆られていた。そんな時、ディープサウスを、南部出身の著者とカメラマンが綴るこの紀行本は、「南部人でなければ表現できないディテールにあふれている」などと批評されているため、読んでみた。
もしかしたら、わたしがイメージする南部の風景とは違う風景が広がっているかも…などと思ったけど、そんなことはなかった。わたしが思い描いた南部のイメージと、それほど変わらない現在の姿がそこにあった。のんびりとしていて、豊かで、ちょっと古ぼけた感じで、そして垢抜けない粗野な感じ。サックスや大太鼓などの楽器とともに写っている黒人、ストックカーでポーズを取る田舎者っぽい白人、ロブスター料理を差し出す金髪のふくよかな女性、タバスコ工場や綿花畑の労働者、ミシシッピ川。写真を見ても、ゆったりとした時間が流れている感じが伝わり、人々がのんびり話す様子が伝わってくる。とりわけ、「アメリカのメシはマズい」といわれるなか、妙においしそうに見えるケイジャン料理やクレオール料理の写真とその解説は、受け流すことができない。著者のバーダマンの説明が、また食欲をかきたてるのだ。カリフォルニアやニューヨークのような近代的な建物が立ち並ぶ町は、多くの人がイメージするアメリカではあるけど、この本を読むと、なんとなく味気なく、リアリティがないように思えてしまう。
ジャズフェスやら、ブルースのライブやら、あるのは知っている。行ってみたいと思っているのだ。でも…人種差別されたら辛いなとか、一人で行くのは危険かなとか、あれこれ考えて二の足を踏む地域でもある。いつか行けたらいいけどいつになるだろう。 -
ブルースの魂と、ミシシッピを胸に──街に流れるベニエとチコリコーヒーの香り、川面にこだまする蒸気船の汽笛、そして果てしないデルタの平野は季節に鳴ると真っ白な綿花で覆われる──南部出身の二人が望郷の思いとともに描く、アメリカの中の異郷。