くまとやまねこ

著者 :
  • 河出書房新社
4.37
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本棚登録 : 2249
感想 : 325
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  • Amazon.co.jp ・本 (48ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309270074

作品紹介・あらすじ

突然、最愛の友だち・ことりをなくしてしまった、くま。くらくしめきった部屋に、ひとり閉じこもっていたくまが、やがて見つけた、あたらしい時のかがやき。感動の絵本。

感想・レビュー・書評

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  • 第40回講談社出版文化賞絵本賞受賞

    大切な人を喪った人をどうやって再生させるのかをやさしく描いた絵本だと思います。
    くまのかなしみ、なくなったことりの愛らしさ、森のどうぶつたちの心配。

    大切な人の葬り方、新しい友だちややまねこの理解力とやさしさ、くまの再生力などがとても簡単なことばで描かれていると思います。

    誰かはじめて大切な人をなくした子どもに読んであげてほしい絵本です。



    以下ストーリーを抜粋します。ネタバレしているのでこれから読まれる方はお気をつけください。




    ある朝、なかよしのことりがしんでしまってないているくま。

    くまは小さな箱を木の実のしるできれいな色にそめ、なかに花びらをしきつめことりをそっと箱の中にいれました。
    「ああ、きのうはきみがしんでしまうなんて、ぼくは知りもしなかった。もしもきのうの朝にもどれるなら、ぼくはなにもいらないよ」
    くまは大つぶのなみだをこぼしていました。

    森のどうぶつたちはその箱をみせられるといいました。
    「くまくん。ことりはもうかえってこないんだ。わすれなくちゃ」

    くまがいえのそとへあるきだし、川べりの土手でひるねをしていました。するとおかしなかたちの箱をもっているやまねこにあいました。

    やまねこに箱のなかをみせてもらいたいというくま。
    やまねこはくまの箱をみせてくれればみせるといいました。

    やまねこは「きみはことりがしんで、ずいぶんさびしい思いをしているんだろうね」といい、じぶんの箱をみせてくれました。

    なかからでてきたのはバイオリンでした。
    やまねこはことりのためにバイオリンをひいてくれました。
    そのあいだくまは、ことりとのなつかしい日々を思いだしました。

    くまはことりを森のなかの日のあたるばしょにうめました。そして石をおき花でかざりました。

    やまねこは「さて、そろそろ行くとするかな」といってバイオリンケースをかつぎました。
    「きみもいっしょにくるかい?」

    やまねこはリュックサックからタンバリンをとりだしました。ふるいタンバリンでした。くまはいったいタンバリンはだれがたたいていたのでしょう、やまねこにもずっといっしょだった友だちがいたのでしょうか…と思いました。

    きいてみるかわりにくまはいいました。
    「ぼくれんしゅうするよ。おどりながらタンバリンをたたけるようになりたいな」

  • あの「よるくま」の酒井駒子さんの絵。もう例えようもなく素晴らしい。詩的で無限の趣がある。仲良しのことりを亡くしたくまが立ち直るまでの話。

  • 大切な友を喪い、心の拠り所を無くした、くまの内面の葛藤を描いた、喪失から再生への物語。

    モノクロの絵と周りのデザインは、心の中の映像であるかのように感じ、華美な装飾もなく、厳かでいて、淡々と事実を伝える描写には、余計なものがない分、却って、胸を締め付けられるものがある。

    かえってこないからといって、別に忘れなくてもいい。

    なぜなら、くまの心の中では、大切な友が、いつまでも存在し続けることを、教えてくれたからであり、それを教える事ができたのは、その気持ちが、痛いほど分かるからなのかもしれない。

    • たださん
      猫丸さん

      「詩人の生涯」、なるほど。
      確かに、よくよく見ると人形(立体)ではありませんね。失礼しました。切り紙ですか。改めて見ると、雪の文...
      猫丸さん

      「詩人の生涯」、なるほど。
      確かに、よくよく見ると人形(立体)ではありませんね。失礼しました。切り紙ですか。改めて見ると、雪の文様が、とても綺麗ですね。

      安部公房のお薦め本、教えて下さり、ありがとうございます。
      エッセイから読んでみます(^_^)
      2022/07/31
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      たださん
      スミマセン、つい偉そうに書いちゃいました。
      たださん
      スミマセン、つい偉そうに書いちゃいました。
      2022/08/01
    • たださん
      猫丸さん

      いえいえ。
      猫丸さん

      いえいえ。
      2022/08/03
  • 癒されることのない想いを抱いて生きていくことを知る人に。
    思い出は心を刺すけれど、同時に心を温めてくれる。
    悲しみと喜びを分けることなんてできないのだから。

  • 〝ある朝、くま は泣いていました。仲良しのことりが、死んでしまったのです〟「だって、ぼくたちは ずっとずっといっしょなんだ...」 突然、最愛の友だちをなくし、悲しみに暮れる くまは、暗く締め切った部屋に閉じこもる・・・。やがて、花咲く時が訪れ、やまねこ の弾くバイオリンの音色が聴こえてきて・・・。 小説『夏の庭 -The Friends-』の<湯本香樹実さん>が、〝死別と邂逅〟をとおして〝生きること〟を詠った創作童話に、<酒井駒子さん>のしっとり落ちつきのあるエッチングが醸し出す、心ゆさぶる感動絵本。

  • 死んでしまった人との別れが辛い、こういう経験を子どもに伝えるのに良い絵本。もちろん、大人にも。
    白黒の絵が死を経験している辛い心とマッチしていて深く心をえぐってくると同時に、やまねこの音楽が色付きで見えてくるような感覚を感じた気がする。
    国語の教科書にあったスーザン・バーレイの『わすれられないおくりもの』とともに死について考える本として合わせて読むのも良いと思う。

  • やまねこが待ってくれる友達で本当によかった。

    あなたのそばで、悲しんでいる人がいたら

    どうか待ってあげてほしい。

    自然に心が癒えるまで。

    自分の心に逆らわず、静かに時を待って

    少しずつ顔を上げられるようになるまで。

    また笑えるようになるまで。

  • ぼくは、きのうの朝より、あしたの朝より
    きょうの朝が一番好きさ

  • 2008年発表。


    だって僕たちは、
    ずっとずっと
    いっしょなんだ。



    突然最愛の友達である
    「ことり」を亡くしてしまった、くま。


    くまは手作りの箱に
    花びらを敷き詰めて
    そっと「ことり」を入れ、持ち歩くようになります。


    箱の中を見るたびに
    困った顔をする森の動物たち。
    そしてみんな決まって言うのでした。

    『くまくん、ことりはもうかえってこないんだ。つらいだろうけど、わすれなくちゃ』


    くまは、暗く締め切った部屋に、ひとり閉じ籠ってしまいます。

    でも、やがてくまにも
    光あふれる、新しい時が訪れて…。



    小説『夏の庭』でお馴染みの湯本香樹実さんと
    絵本作家・酒井駒子さんの夢のタッグが実現したコラボレーション絵本です。



    酒井さんの描いた
    モノクロの
    繊細かつ重厚な絵柄と共に
    『ことり』を失い
    誰とも口をきかなくなった
    くまの悲しみが
    ひしひしと伝わってきて
    本屋さんで涙ウルウルになりました(汗)



    くまは
    音楽を弾きながら
    世界中を旅して回る
    『やまねこ』と
    やがて運命の出会いをします。


    くまの悲しみを受け止めて
    優しく寄り添ってあげることのできる
    『やまねこ』も
    過去に同じように
    死を乗り越えてきたからなのかもしれない。

    『やまねこ』のような人に
    自分もなれるかな。


    死と向き合い
    乗り越えていかなくちゃ。


    忘れるのではなく
    思い出として
    一緒に生きていこうと誓ったくまのように
    愛する人や身近な人との別れを
    人はどう受け止め
    乗り越えていけばいいのかを
    優しく教えてくれます。


    突然やってくる死や別れを
    怖れることなく
    忘れることなく


    やがて来る新しい出会いに
    胸ときめかせて。

  • 突然、最愛の友だちの小鳥を亡くしたくま。悲しんでいるくまに、森の動物たちは、つらいけど忘れることだと言う。部屋に閉じこもっていたくまが、ある日やまねこと出会う。やまねこは、くまの寂しさに共感し、くまのためにバイオリンを弾く。くまは、小鳥と過ごした楽しいことを思い出す。二人で小鳥の墓を作った後、やまねこが一緒に旅に出ようと誘う。くまが古いタンバリンをたたくことになり、旅の音楽団として大人気になる。
    ※やまねこもタンバリンをたたいていた友だちを亡くくしたのだろうか。くまとやまねこの気持ちがていねいに描かれている。酒井駒子さんの絵も好き。

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著者プロフィール

1959年東京都生まれ。作家。著書に、小説『夏の庭 ――The Friends――』『岸辺の旅』、絵本『くまとやまねこ』(絵:酒井駒子)『あなたがおとなになったとき』(絵:はたこうしろう)など。

「2022年 『橋の上で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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