悪魔礼拝 (河出文庫 126E)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309402147

感想・レビュー・書評

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  • ヨーロッパの歴史のなかで悪魔崇拝の諸事例を紹介しつつ、その精神史的な意味について考察をしているエッセイです。

    著者は、澁澤龍彦とともにヨーロッパの幻想文学や異端思想に造詣が深く、それらを一般の読者に向けて紹介してきたことで知られていますが、本書もそうした関心をいだく読者にこたえるような内容になっています。

    「悪魔崇拝」とは、キリスト教を正統とする立場からあたえられた規定であり、キリスト教の「ネガ」として位置づけられています。そうした信仰のありかたに、キリスト教以前の原初的な精神のありようを読み取ろうとする論者も多く、たとえば思想史的な立場からユング心理学についての研究をおこなった湯浅泰雄は、キリスト教の基底へ向けての思索を展開していました。これに対して本書では、あくまで「悪魔崇拝」をキリスト教の「ネガ」として理解し、「悪」を自覚的に引き受ける精神のありかたに関心を向けています。さらにこうした著者の態度は、「悪魔崇拝」という本書のテーマそのものに耽溺する著者自身のスタンスとかさなって、そのことがこうしたテーマに関心をいだく読者の支持を集めているのではないかと思います。他方で、悪魔崇拝に、キリスト教の枠組みを超えたいっそう普遍的な人間の心性を求めようとする読者は、異端趣味的な著者の態度に不満をいだくかもしれません。

  • 2015/4/4購入

  • 12/22 読了。

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著者プロフィール

種村 季弘(たねむら・すえひろ):1933-2004年。東京都生まれ。東京大学文学部卒業。ドイツ文学者。該博な知識人として文学、美術、映画から魔術、神秘学にいたるまで多彩なジャンルにわたり執筆活動を展開した。著書に『ビンゲンのヒルデガルトの世界』(芸術選奨文部大臣賞、斎藤緑雨賞受賞)、『書国探検記』、『魔術的リアリズム』など、訳書に『パニッツァ全集』(全3巻)などがある。

「2024年 『種村季弘コレクション 驚異の函』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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