少年アリス (河出文庫 な 7-1 BUNGEI Collection)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 2892
感想 : 275
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309403380

作品紹介・あらすじ

兄に借りた色鉛筆を教室に忘れてきた蜜蜂は、友人のアリスと共に、夜の学校に忍び込む。誰もいないはずの理科室で不思議な授業を覗き見た彼は教師に獲えられてしまう……。第二十五回文藝賞受賞のメルヘン。

感想・レビュー・書評

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  • 1989年の作品で、2011年に購入して積読していた一冊。
    綺麗な漢字、日本語、
    不思議な世界観の本を読みたくて、
    手に取りました。

    当時の購入金額は380円(税別)!
    安いと思ってしまうのは、
    今の物価高の影響でしょうか。苦笑

    兄に借りた色鉛筆を取りに夜の学校に忍び込んだ、蜜蜂とアリス。
    そしてアリスの愛犬、耳丸。
    誰もいないはずの理科室から広がっていく別世界。

    言葉が綺麗で、
    時間の流れが独特で、
    お風呂の中で読んでいましたが、
    とても良い読書時間でした。

  • 子供の頃に、こんな冒険できたらと想像していたような感じのおとぎ話。
    情景が鮮やかでキラキラしていて素敵。

  • 群青天鵞絨色の天幕が降りる。今夜もブリキの月と貝の星が煌めく夜。深い眠りにつくまでの微睡みのなか、私はモルタル二階建ての校舎の前に立っている。仄かに明かりが灯る理科室。夏と秋とがすれ違う噴水池に浮かぶ銀の実。水盤上の水鳥は宙を泳ぎ蛍星は消えてしまった。私は裸足でたっているのだけれど、吹く風の冷たさも踏みしめる砂の痛さも感じない。ただ、月が天蓋を這っていくなかぽつりと佇んでいる。誰にも秘密。私だけの物語。

  • 足穂だ!
    書評を先に読んでしまい興味を持った。
    幻想的であり、夢のようでもあり。

    卵(鳥になれなかった=未熟な?
    子どもから大人になるでもなく、子どものままでいるのでもない。
    月の光:霧につつまれた様な雰囲気。

  • 美しくて淡くて清清しい、少年のある夜の冒険譚。
    現実の世界とは異なるたゆたうような世界に迷い込んだアリスと
    現実の世界でとまどう蜜蜂。

    金木犀が淡く香る群青天鵞絨の天幕の空に細かく砕いた貝殻
    を散りばめて作った星を縫いつける。

    初めてこの本を読んだ日から20年ぐらいたっていることにびっくり。

    改めて読みたくて、文庫で買い直しして読んでみると、
    あの頃とはまた違う面が見えて改めて大好きだなぁと。

    夢と現実のあわいでいない相手のことを想い、お互いに自分を見つめ
    そっと自分の欠点に気づいていくところもいいなぁ。

    改造版も購入したので、どんな違いがあるのか楽しみ♡

    • kuroayameさん
      今もされているのかわからないのですが(少年アリスを読みはじめた頃、moeか何かで紹介されていて、長野さんが鉱石とか珍しい品々(物語に登場して...
      今もされているのかわからないのですが(少年アリスを読みはじめた頃、moeか何かで紹介されていて、長野さんが鉱石とか珍しい品々(物語に登場してるのでは?と思ったりしちゃったのですが)を販売しているショップがあり、憧れていたのですが、何分当時北海道にいたもので、東京など身近な場所でまだショップがあるようでしたら出かけてみたいと思いました(*^^*)。あやたんのレビューを拝見させていただき、今まで忘れていたことだったのでとても懐かしいです♪───O(≧∇≦)O────♪
      2012/11/14
  • 【文字で読みたい日本語】

    こればっかりは<読んで>もらわなければわからない。
    群青天鵞絨。凌霄花。橡や椅の樹木。
    もちろん、声にだして読んでも、読み聞かせでもいいかもしれない。
    なんてったて出だしが『睡蓮の開く音がする月夜だった』だよ。

  • 思春期に長野まゆみ作品と出会ったことが、すべての原点になっていると思います。

  • 最初の一行からどっぷりと世界に浸かれるような作品で、一言一言がほんのり発光しているような控えめな美しさがある。何故だか死のにおいがちょっとして、アリスが迷い込んだあの世界は本当に怖かった。私はアリスが死んだんじゃないかと思っていた。
    でも結局アリスは時間のゆがみはあったものの元の(冒頭の)世界に帰って来れた。これが本当に本当なのかな、という疑惑は拭えず。本当にあの教師の言うとおり、アリスは夢をみていたのかもしれない。
    そういう、疑うに足る端くれを見つけるまではそのような問いは不適切であると思うけれど、実際そう深く感じられる世界を垣間見せられたあとではどうしてもそういう(平たく言えばマトリックスの培養液の中みたいな)世界であると疑うことをやめられない。

  • 何よりも言葉が綺麗。登場人物が蜜蜂とかアリスとか、ちょっと変わった感じなのも面白い。雰囲気が宮沢賢治っぽいな~と思った。理屈ではなく、心で感じるタイプの物語。

  • 高山宏さんの解説が正鵠を射ているのでもはや私の劣文は必要ない気もしますが、とにかく、『少年アリス』はさまざまなものから「解放」されている作品として群青天鵞絨に輝く屈指の幻想譚だと言うことができるのです。
    澁澤龍彦さんや短歌の好きな私は、前者には博物誌的な面白さを、後者には音とリズムに凝縮した言葉の感覚の面白さを見出します。ペダンティックな充足を得ることの面白さというより、普段私たちが使う言葉とは違った場所に居る言葉を採集することの面白さを求めて、手を伸ばしているのです。これが私の読書傾向かつ好みです。
    そして私の好む作家さんの中に、まちがいなく長野さんも含まれています。解説で高山さんは長野さんを「マニエリスト」と述べ、「意味の重圧から言葉を解放した」本書を評価しています。まったくもっておっしゃる通りだと思います。文字どうしの間隔、本文の余白も趣があります。
    さて、私は今回の感想で作中の内容にあまり触れていませんが、いいのです。それこそ私の「言葉」で語るに語れない『少年アリス』の感慨は、言葉や記憶にとどめるよりも、螢星が消えた一夜の出来事のように、夢うつつとしていいものなのです。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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