カンパネルラ (河出文庫 な 7-6 BUNGEI Collection)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (139ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309403953

感想・レビュー・書評

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  • ・12月8日に読みはじめ、10日に読み終えました。


    ・長野まゆみのつめたくつれない少年、妖しい少年、翻弄される少年…… うれしい。柊一と一緒に夏織を探している気分になった。

    ・硝子の魚を夏織に渡せていたら、夏織のことを繋ぎ止められていたのかなとかなんとなく思う。夏織の真意は語られないままだったので、全然わかんないけど。夏織も柊一もカンパネルラに手を引かれたのか翻弄されたのか……

    ・最後に追っていた背中が「兄さん」から「少年」に変わったところ、よかったな。顔も曖昧で存在も危うくなっていた夏織が、ついにほどけてしまった、そんな感覚。

    ・「文藝」2001年夏号のインタビューを読んでみたら、「木のうろ」ではなく、「木が密になっているところにちょうど人ひとり入れるというもの」とあった。『カンパネルラ』のことではなく『銀木犀』のことっぽいんだけど、どちらも双子のような作品と言っているので同じように思っても良いのかな? 宿り木や冬虫夏草のようなイメージ、とあって、宿り木の少年なんて耽美すぎる…… と思う。木に取り込まれてしまったとか、そういう雰囲気でなんとなく把握していたものが「宿り木」とかしっかりしたことばで言われると、なんかインモラルな感触を覚えてしまうな……


    ・初期の長野まゆみは耽美に振り切ってるなと思った。書式も相まって…… でも生と死の境目にいるような少年はずっと出てきてるよな~…… 続きなのか、似たような感じのやつなのか、『銀木犀』という作品があることを知ったので、なんとか手に入れたい。新刊書店じゃあまり売ってないんだよなこのへんのは……

  • 久々に再読。
    夏のイメージの物語。

    個人的に、いつまでもキラキラした世界に浸れる青春の書。

  • こちらも夏の清涼剤でした。
    夏織は初めから居なかったのでは…と思います。
    柊一とのやりとりしか無いですし。柊一は夏織が療養していると思っているけど、既に他界しているのでは。。
    こちらの長野さんはどんどん自分が不安定になっていく感覚があります。でも不快では全くなく、心細いけれどどこか陶酔してしまいます。

  • 約20年ぶりに再読。
    長野まゆみ作品を読むこと自体が約15年ぶりくらい。昔ファンでした。
    いやぁ耽美ですね!
    懐かしいというか、当時は登場人物達に萌えながら読んでいたのだけど、やっぱり久しぶりに読んでも、きょうだいのつれない感じに萌えますね(笑)。
    あと自然風景の描写がさすが緻密で美しいのだが、しばらくこの世界から離れていた私には情景を想像するのが難しかったです。当時の私は理解できていたのだろうか。

    簡単なあらすじ。
    夏、祖父の家で療養している兄・夏織を訪れた弟・柊一。冷たい態度の兄に焦がれる柊一は、お土産の硝子の小魚を渡そうにも渡せない。
    常に眠っているイメージの祖父に読み聞かせを兄と交替ですることになった柊一は、本にはさまれた兄が描いた絵を見つける。署名にはなぜか「カンパネルラ」。
    兄が午後から川をボートで漕いでどこかへ行くのを気にした柊一は、兄の秘密の隠れ処であろう場所を見つける。
    と同時に、兄の描いた絵が変化していく……。

    なぜ、カンパネルラと署名したのか?絵にはどんな秘密が隠されているのか? と謎を追いつつ読み進められたのが楽しかった反面、明確に謎が解明されないまま終わりました。

    だいたい耽美、幻想的な作風というのは、ストーリーではなく世界観に耽溺するものなので、何がどうなったとハッキリ解明するのも野暮なんですが。
    たぶん、夏織は、みんな大好きカンパネルラ(銀河鉄道の夜)その人だったか、もしくは、カンパネルラに惹かれて連れ去られた結果カンパネルラ的存在になったか。つまり、柊一が祖父の家を訪れた時点であの世の人だった、もしくは死後まもない状態だったか。
    要するに、兄が天上へ旅立とうとする時の柊一の心情をファンタジックに描いたのがこの作品なのかな。祖父も生きてんだかよくわからない存在だし、河畔の風景も柊一の心の中の風景なのか……、
    とか解説しちゃうとなんか、やはり野暮ったくなってしまいましたね。
    幻想は幻想のままが良いのですね。

    最後は柊一も兄の後を追っちゃうのかな? カンパネルラに呼ばれて、三途の川を渡るのか渡らないのか。

    またいろいろと再読したいな〜と思うけど作品数が多いので読破するにはかなりかかりそう。

  • 出、出た~~~~~~~~~~
    長野まゆみの伝家の宝刀、病弱なのに上から目線兄とそれに焦がれる弟~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!
    しかも共倒れENDっぽいよ!!!!!!!!!!そうだね、長野まゆみ的銀河鉄道の夜メリバ二次創作だね

  • ほわほわと存在感のない人々が、ほわほわと同じ場所を行ったり来たり。ロケシーン少な過ぎの低予算映画かよ!って小説だけど。
    まぁ存在感のなさで言うなら爺ちゃんは本当に存在したのか謎。死んでんじゃねーのか。爺さんを殺してその罪悪感に苛ませるままに幻覚に囚われて第二の人格お兄ちゃんを生み出して最終的には誰もいない一人きりで爺ちゃんを埋めたところに生えてきた銀木犀がすくすく育って犯罪がバレる、という話になってた。嘘だけど。
    そんなこんなで実際にはほわほわだった。

  • カンパネルラと言う題名で選んだ本でしたが、長野まゆみさんの少年アリスを読んだ事があるので期待して読みました。子供の頃銀河鉄道が本当に走っている光景を信じていた幼い私。カンパネラはザネリを救うために川へ入りそのまま帰ってこなかった、夏織も又帰って来なかった、その存在すら曖昧になっていった。カンパネルラは宮澤賢治ファンにとってむやみに使う事は許せないのですが、私の中ではOKでした。

  • 夏なので夏っぽい長野まゆみ作品を再読しようキャンペーンそのさん。これも10年ぶり。
    これの後に『銀木犀』なんかを読むとごっちゃになる。

    緑と透き通った水と、そこに溶けてしまいそうな兄と、(もうすでに溶けてるかもしれない祖父と)謎の少年がいる話。色合いが澄んでてきれいで涼しくなるよ。
    柊一が誰かとコミュニケーション取ってる感じがしないのよねこの話。『銀木犀』もそんな印象があったけど(読んだのは10年くらい前やけど)たったひとりで動いてる感じがする。もちろん兄とやりとりしてる描写あるんやけど、顔も見てない憶えてられないていうのはものすごい夢の中感。

    カンパネルラは、後書きによると「誰にとっても自由であり、特定されることを拒む少年の名を、描くことのできない少年の代名詞として拝借した」んだそうだ。
    そういう存在と、兄との境界が分からんようになったのね。しかも、それがこれまで冷たい、でも心を通わせたい兄に向けて欲しいと思っていた顔と重なっている。

    匂いに誘われて植物にくわれる話、萩尾望都にもあったよね。

    ところで、後書きの改訂前銀河鉄道の夜の構成がごそっと変わってるという話結構衝撃やぞ。

  • 夏に遊びに行く祖父の家。
    そこにいる兄との話し。
    後ろ姿しか思い出せない。
    兄はいつも午後にどこに消えるのか。

    不思議な雰囲気の文体と白昼夢みたいな宮沢賢治的な(←読んだことない笑)そんな感じのお話し。
    最後どうなったのかなー。
    ちょっと雰囲気掴むまで読みにくい。
    好きな人は好きな文体。あたしも昔は好きだった(笑)

  • 一つ一つのモチーフが美しくて絵画的です。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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