螺子式少年 (河出文庫 な 7-12 BUNGEI Collection)
- 河出書房新社 (1995年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309404479
感想・レビュー・書評
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長野まゆみは高校生の時にハマって、今読んでもやっぱりよかったからよかった
夏休み前の高校の図書館を思い出すな
本当に可愛くて、なんていうか綺麗な緑色の世界観
この文藝文庫?っていうのも可愛くて好き
誰か見つけて映像化してー頼むー詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かったです。
百合彦も野茨も葡萄丸も、少年たちが誰も彼もレプリカだと思ってしまう、ぐらぐらする世界でした。
野茨が本物かレプリカか見分けられない百合彦と、どちらなのか即答する葡萄丸。
人の見る力なんて当てにはならないのかも、と思いました。
そして近未来と懐古が混じり合う空気とディストピアな雰囲気…たいへん好みです。
「寝ても覚めても」と、人の認識の曖昧さを感じる作品が続きました。 -
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長野作品の中では比較的わかりやすいテーマだった。物語もわかりやすい。後半になるにつれこの主人公達はレプリカなのか、本物なのか、いよいよわからなくなっていくのだが、そんなこと関係ないんじゃないか。という気さえしてくる。大切なのは本物なのか偽物なのかどうかではなくて、自分がどう向き合うかという、信頼の問題なのだという。
代わりに葡萄丸のレプリカが送られてきて、彼との生活が始まる、となった時、このようにどんどんレプリカは増えていくのだと思うと、少し怖くなった。ある意味ホラー? -
「つまりね、ホンモノかレプリカかということが、なぜ重要なのかということだよ。」(p.154)
本人と区別がつかないほど精巧に作られたレプリカキットが出回る世界。従弟の葡萄丸と暮らす百合彦と、彼の友人野茨を中心としたSF風のお話。
野茨とレプリカの区別がつかない百合彦は本物の野茨を探すうちに、一体、何が野茨を本物と証明することになるのかと考え始める。
一方、本物の野茨はレプリカの百合彦と会っていたらしく、自分の気付かないうちに自分のレプリカが作られ、動いている。それも、1つではなく無数に存在するとなるともう本物がどれだったのかさえわからなくなる。
案外、友人のレプリカに戸惑う百合彦本人がレプリカだった…なんてことも考えられる。
ラストで新たなレプリカが登場したことにより、いなくなった人の埋め合わせとして、すぐに入れ替わりのレプリカが送られてくるのかもな…と思った。そうやってレプリカにどんどん交代させていくと、もう生身の人間が1人もいなくなるのかもしれないなぁ……結構怖い。 -
<・・・このレプリカは組み立て完成品でございます。分解は自由、簡単。再組み立ても可能です。ご希望であれば、モデルの意識を複製することもでき、よりリアルにお使いいただけること請け合いです。登録品ですので、まずは当社までご連絡を。>
じぶんと同じ顔、同じ背格好の「レプリカ」が当たり前に存在している近未来世界の、少年たちの話。SFと筆者の文体がふしぎといいぐあいにマッチしていて心地いい 読みながら舞台はエーゲ海沿いの街並みをイメージしていた 葡萄丸や百合彦の父親たちのおだやかに諭す感じの口調が気にいった まあ彼らもレプリカかもしれないんだけどね。 -
熱に浮かされながら螺旋階段を歩く。先刻見た景色はわずかな変化を伴って再び目の前に現れ、極上の光輝と色彩を放つ言葉に目眩がした。
酒と煙草のせいでプログラムにエラーを起こしているレプリカ。たとえイレモノである体が壊れてしまっても、複製すれば元通り。レプリカだらけの世界で自分の隣にいるのが〈ホンモノ〉か〈レプリカ〉か、は大した問題じゃない。
『あれは野茨だよ、見たらわかるぢゃないか。』
彼が彼であることを信じる私が私自身を信じられるか、が問題なんだ。ただそれは、私が「私」であることが前提の話、なのかもしれない。
初期の長野作品を夏に読むと、フルーツジュースにサイダーを加えて作ったゼリー(数種類あると彩り鮮やか)をサイコロ状に切って、透明なグラスに積み上げて食べる、ということをしたくなります。
《2014.06.04》 -
相変わらず素晴らしい世界観。読み始めるとすぐにどっぷり浸かれる。SFなんだけどファンタジー色が強いからそこまで固くないので好き。この世界では色んな人がレプリカされているんだろう。葡萄丸のお父さんがレプリカなのも実は死んで仕舞ったんじゃあないかとか、野茨のママも本当の野茨を亡くしてレプリカを作ったんじゃないかとか憶測だけど、考えてしまう。 それにしても、長野まゆみの世界は全てが綺羅綺羅している。夜警が買ってた果実入りのシトロネル酒私も飲んでみたい。