テレヴィジョン・シティ 下 (河出文庫 な 7-18 BUNGEI Collection)

著者 :
  • 河出書房新社
3.82
  • (169)
  • (92)
  • (245)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 959
感想 : 75
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309404806

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2012.5.24.thu

    【経路】
    本会でNさんに借りて。

    【感想】
    ・世界観にどっぷりハマる。なかなか帰って来れない、そんな小説。

    ・隔離されて白いスーツで過ごしてる、来し方行く末を知らない近未来人が、映画「アイランド」(じぶんの遺伝子でドナーを育てる施設)みたいだし、狭い世界での少年の倒錯さは漫画「輝夜姫」(これもドナー話)っぽくて話の展開を怪しんで読んでたんだけど、やっぱりドナー話だった。いや、それが中心ではけど!ただのエレメント!

    ・非身体的で精神的な同化を〈クロス〉としているけど、これは深いと思う。所謂 衆道に近しいと勘ぐらないにしても、「身体的に繋がってこそ分かるひとつになり切れない孤独」を超越したものだよなぁ。

    ・アーチィがイーイーと同化しての最後の終わり方が綺麗。もうふたりの世界は交わらないけど文字は残るんだね。


    【うんうん】
    ・「キラいになるのは、すごく難しいことなんだ。なぜなら、自分のことも否定しなければならないからさ。そんなのは負担だろう。」
    ・誰かをキラうというのは、同時に自分の一分を失くすことでもある。
    ・事実は不変だが、真実は不安定で、いつでも平気で嘘と入れ代わる。

    【内容メモ】
    ■もうひとつの出口
    ・手紙、ダストシュウト
    ・ゾーン・レッド
    ・手紙落
    ・金網、重力、仔犬
    ・捨てるものがない、ボディかスピリットどちらが先か
    ・ロスマリン精油
    ・シルルの狼狽
    ・追い出される前に

    ■仔犬を連れた人
    ・ジロから呼び出し、ファイルボウト
    ・ロスマリン、使?
    ・ロケットシミュレエション
    ・イーイーの不調
    ・ヴィオラ薄
    ・シルルから呼び出し
    ・ジロ、乾杯しよう
    ・シルル、ドォム、ヴィオラの原液、工場
    ・怒らない
    ・サッシャ

    ■碧い海の響き
    ・書くことがない嘘の手紙
    ・事実は不変、真実は変動する
    ・マーレ、人口砂漠、工場へ行く告白
    ・セット、レシピエントのドナー、エンゲージ
    ・イーイーの不調
    ・ライドランナー
    ・色彩の忘れ、イーイーと同化、クロス
    ・イーイーの呻き、「シルル」、ショック、海へ
    ・浄化、侵入者、一時的な混乱
    ・シルルの助け
    ・ジロ、蒸留塔
    ・RACH45がServiceするのは自分が愉しむため
    ・ママンのあの音
    ・消えた砂漠、クロスしただろう
    ・目が
    ・手紙を声に
    ・最後に何が残ると思う?

    ■南国の島
    ・手紙。Serviceでのショットもクロスも好き。
    ・ゾーン・ブルゥへ
    ・氷結、転倒、離脱
    ・ママ、リング、エレベーター
    ・見る方法
    ・取り返そうとしたのはイーイーじゃない?
    ・リング、ロケット、キィ
    ・イミテエション
    ・冷たい何か、ポケット
    ・泣いている、宿舎へ
    ・手紙、リング、追記
    ・カナリアン・ヴュウへ
    ・救援機に乗らなかったアーチイ
    ・謎掛け
    ・ことばは消えても文字は残る、それがぼくの望みだ
    ・すべてが彼だけのためにあるのだった

    ■あとがき 暗号、解くにおよばず

    【暗号】
    フランス語→日本語
    a→0 b→1…z→25
    W→. X→? Y→!
    E→´

    解くことに意義は無い。
    ことばは消えても「文字」は残る、ということが大事!

  • 静かで、心地いい。個人的なイメージソングはスピッツの「インディゴ地平線」

  • 下巻も面白かったです。
    彼らは本当に存在したのか…あやふやなまま終わるのが良いです。何度も読みたくなります。
    シルル、ジロ、イーイーと消えていき、アナナスの精神は混乱して何もかもを知っている人格が表れたりします。
    ビルディングは機能を止めて雪に閉ざされ、アナナスはイーイーの助けで碧い星へ向かう…でもその碧い星も紫外線が強く降り注ぎ屋外では生きられない世界です。
    ラストまで読んで、全てアーチィの夢というか幻…?となったのですが、最後にアナナスの思考を持って歩いている少年の外見がイーイーで…!?となりました。
    面白かったー!長野さんのSF、読みごたえありました。

    因みに、暗号は解読していません。

  • 上下巻の感想。人生を変えた本といえば、これ。
    書店でこれのハードカバーを買ったのが、長野まゆみ作品との出会いでした。一気に読んだ後、著者の本を買いあさって読んだのは20年以上前のこと。
    何度読んでも、基本的な感想は変わらない。結局、「離脱」できたのはイーイーだけなのでは…?イーイーはボディを捨てた。アナナスは空っぽになってもボディを捨てることができない。ビルディングに戻って、日付も戻るけど、帰ってもイーイーはきっといないのでは?

    ビルディングには、他の人間は存在してないっぽい。AVIANはただ機械的に浄化を繰り返しているだけに見える。つまりもう全てが終わった世界で、イーイーとアナナスだけが永遠に夏休みを繰り返す、はずだったのでは。本当のところはよくわからないのだけど…

    印象に残っているシーンは、
    ふたりでひとつになって、夜の海を感じるところ。
    「帆檣のように」佇むイーイー。イーイーと同じ船に乗りたいと願うアナナス。
    最後の、ドォムのバルコニィでの会話。
    「なくしたものを忘れるためには、そのひとと過ごしたのと同じだけの時間がかかるって、イーイーはいつか言ったよね。もしそれが本当なら、僕の天秤は一生釣り合わない。ぼくたちが一緒に過ごした時間は、そんなに短くないだろう。ものすごく長いんだ」
    何かをなくしたときには、いつもこの台詞を思い出す。
    一緒に過ごした時間について考える。いつか忘れるときがくるのだろうかとぞっとする。それだけの時間が経てば、悲しさは減るのだろうかと思ったりもする。

    アナナスはほかのことを忘れても、イーイーと一緒にいた時間の長さはおぼえている。
    そう考えると、実はイーイーとアナナスはもともとひとりなのかもしれない、とふと思った。
    だとしたら、ふたりとも離脱できたのだろうか。
    イーイーはアナナスのことをすごく大切に思っている、と思う。でも、正直言って記憶をなくす前のアナナスにそんなに魅力があると思えなくて…でもそもそも、自分と同じ存在なら…などと妄想してみた。

  • ちょっと長すぎる。もっとコンパクトにまとめてもよい。謎がそのままで終ってしまいちょっと消化不良。

  • 終末的な擬社会+階層都市+ループ こんだけでも私のツボに真ん中だな…

  • 今まで読んだ長野さんの作品で一番長いけど、長く読んだ感じがしない。良くも悪くも?読み応えはなかったということなのか…??
    こんなに長いのに登場人物が本当にごくわずかっていうところがそう感じさせるのかも。
    長野先生の話だから登場人物がたくさん出てくるとも思ってなかったけど、ほとんどアナナスとイーイーだけ(あとジロとシルル)…閉じられた世界って感じがすごくする。近未来的だけど無機質でさみしい印象。街もないし外というものもない。
    わたしの理解力の問題で、「えっ?えっ?」って思いながら終わってしまったけど、何回も読むたびに「あー!」ってなるタイプの話なんだと思う。
    ループってことなのかな…

    ふだんいかがわしいものばっか読んでるので、いちいち隠語がエロくないですか!?!?と思いながら読んだ。
    長野先生の他の作品読んでたら他意はないとは思えない…

  • ディストピア。「ことばは消えても文字は残る……」長野さんの描いた多くの少年たちの中でもイーイーが一番好き。

  • 自分の理解能力不足もあって、色々疑問が残り、もやもやしたが、美しいが切ない世界観は好きだった。イーイーが特に好き。

  • 再………読。読む毎に見落としを拾う度に、切なさが深く。うー。
    ループは元の位置へのループなのか、消えたモノはそのままなのか。ひとりぼっちは切ないよぅ。
    でもアナナスは、本来の姿じゃないほうが好感が持てます。久々の再読もぐいぐい来ましたよー。

全75件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

長野まゆみの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
長野 まゆみ
長野 まゆみ
長野 まゆみ
長野 まゆみ
長野 まゆみ
長野 まゆみ
長野 まゆみ
長野 まゆみ
長野 まゆみ
長野 まゆみ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×