テレヴィジョン・シティ 下 (河出文庫 な 7-18 BUNGEI Collection)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309404806

感想・レビュー・書評

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  • 2012.5.24.thu

    【経路】
    本会でNさんに借りて。

    【感想】
    ・世界観にどっぷりハマる。なかなか帰って来れない、そんな小説。

    ・隔離されて白いスーツで過ごしてる、来し方行く末を知らない近未来人が、映画「アイランド」(じぶんの遺伝子でドナーを育てる施設)みたいだし、狭い世界での少年の倒錯さは漫画「輝夜姫」(これもドナー話)っぽくて話の展開を怪しんで読んでたんだけど、やっぱりドナー話だった。いや、それが中心ではけど!ただのエレメント!

    ・非身体的で精神的な同化を〈クロス〉としているけど、これは深いと思う。所謂 衆道に近しいと勘ぐらないにしても、「身体的に繋がってこそ分かるひとつになり切れない孤独」を超越したものだよなぁ。

    ・アーチィがイーイーと同化しての最後の終わり方が綺麗。もうふたりの世界は交わらないけど文字は残るんだね。


    【うんうん】
    ・「キラいになるのは、すごく難しいことなんだ。なぜなら、自分のことも否定しなければならないからさ。そんなのは負担だろう。」
    ・誰かをキラうというのは、同時に自分の一分を失くすことでもある。
    ・事実は不変だが、真実は不安定で、いつでも平気で嘘と入れ代わる。

    【内容メモ】
    ■もうひとつの出口
    ・手紙、ダストシュウト
    ・ゾーン・レッド
    ・手紙落
    ・金網、重力、仔犬
    ・捨てるものがない、ボディかスピリットどちらが先か
    ・ロスマリン精油
    ・シルルの狼狽
    ・追い出される前に

    ■仔犬を連れた人
    ・ジロから呼び出し、ファイルボウト
    ・ロスマリン、使?
    ・ロケットシミュレエション
    ・イーイーの不調
    ・ヴィオラ薄
    ・シルルから呼び出し
    ・ジロ、乾杯しよう
    ・シルル、ドォム、ヴィオラの原液、工場
    ・怒らない
    ・サッシャ

    ■碧い海の響き
    ・書くことがない嘘の手紙
    ・事実は不変、真実は変動する
    ・マーレ、人口砂漠、工場へ行く告白
    ・セット、レシピエントのドナー、エンゲージ
    ・イーイーの不調
    ・ライドランナー
    ・色彩の忘れ、イーイーと同化、クロス
    ・イーイーの呻き、「シルル」、ショック、海へ
    ・浄化、侵入者、一時的な混乱
    ・シルルの助け
    ・ジロ、蒸留塔
    ・RACH45がServiceするのは自分が愉しむため
    ・ママンのあの音
    ・消えた砂漠、クロスしただろう
    ・目が
    ・手紙を声に
    ・最後に何が残ると思う?

    ■南国の島
    ・手紙。Serviceでのショットもクロスも好き。
    ・ゾーン・ブルゥへ
    ・氷結、転倒、離脱
    ・ママ、リング、エレベーター
    ・見る方法
    ・取り返そうとしたのはイーイーじゃない?
    ・リング、ロケット、キィ
    ・イミテエション
    ・冷たい何か、ポケット
    ・泣いている、宿舎へ
    ・手紙、リング、追記
    ・カナリアン・ヴュウへ
    ・救援機に乗らなかったアーチイ
    ・謎掛け
    ・ことばは消えても文字は残る、それがぼくの望みだ
    ・すべてが彼だけのためにあるのだった

    ■あとがき 暗号、解くにおよばず

    【暗号】
    フランス語→日本語
    a→0 b→1…z→25
    W→. X→? Y→!
    E→´

    解くことに意義は無い。
    ことばは消えても「文字」は残る、ということが大事!

  • 静かで、心地いい。個人的なイメージソングはスピッツの「インディゴ地平線」

  • 下巻も面白かったです。
    彼らは本当に存在したのか…あやふやなまま終わるのが良いです。何度も読みたくなります。
    シルル、ジロ、イーイーと消えていき、アナナスの精神は混乱して何もかもを知っている人格が表れたりします。
    ビルディングは機能を止めて雪に閉ざされ、アナナスはイーイーの助けで碧い星へ向かう…でもその碧い星も紫外線が強く降り注ぎ屋外では生きられない世界です。
    ラストまで読んで、全てアーチィの夢というか幻…?となったのですが、最後にアナナスの思考を持って歩いている少年の外見がイーイーで…!?となりました。
    面白かったー!長野さんのSF、読みごたえありました。

    因みに、暗号は解読していません。

  • 自分の理解能力不足もあって、色々疑問が残り、もやもやしたが、美しいが切ない世界観は好きだった。イーイーが特に好き。

  • 身体機能が衰えてゆくイーイー。

    読後は、やはり、全貌がよく分からなかったが、切ない気分になった。

    謎を解いてみたい一冊である。

  • 今まで読んだ長野作品にあった
    くの字点や一の字点みたいな踊り字はないけど、
    やっぱり漢字のルビや言葉づかいは特徴的で、
    初めはその独特な世界観についていくのが大変。

    でも慣れてしまえばあとはぐいぐい引き込まれて、
    上巻第2話から下巻ラストまではほぼ一気読み。

    1回目読み終わった後、すぐにまた読み返して、
    めずらしく自分でがっつり考察した本。

    映像、音声、幻影、家族、友だち、影、手紙、
    精油、コンピュータ、海、ロケット、暗号、リング、
    色、感覚、鳥、空間、記憶、自由、ことば、文字。

    長野作品は感覚的に愉しむものなんだろうけど、
    この本のストーリーはどうしても自分の中でかたちにしたくて…

    2日かけて、なんとか自分なりに解釈。

    本文中に出てくるたくさんの暗号も、
    インターネットの力でほとんど解読。(翻訳機能万歳w)

    解決しようがない疑問点もいくつか残ったけど、
    考えれば考える程この物語の奥深さをさらに知り得て、
    非常に思い入れのある本になった。

    419 11418 150171411418 18E41321141141319Z11418 ♭421 1918 174181941319W

  • とても不思議な作品で、読み返しても理解ができない(私がバカなだけかもしれないけど)。
    一体どれが現実でどれが幻影なのか。
    言葉遊びも面白い。
    友情以上の絆で結ばれた少年の関係は同性愛的な要素があるのにべたべたしてないせいか嫌な感じはしない。
    抽象的な文章はいつも引き込まれる。
    何度読んでも明確な答えはなく、ミステリアスで色々と想像したり解釈する一方で、ラストは切ない感じ。
    正反対の性格の少年たちのテンポが好きだったけど、ラストではどっちがどっちかわからなかった。
    あれが彼の地なのか、それとも彼が混ざっていたのか。
    色々イメージさせられた。

    「ことばは消えても文字は残る」にはなんともいえない切なさがある。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    身体機能が衰えてゆくイーイー。
    崩壊へ突き進むビルディング。
    碧い星は本当にあるのか。
    ボディを離れたスピリットに「帰還」の場所はあるか。
    二人は果たして脱出できるのか。
    壮大なスケールで描く巨篇。

    *☆*――*☆*――*☆*

  • 2009.01

  • 10代の間に読めてよかった笑
    私の青春です

著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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