雨更紗 (河出文庫 な 7-22 BUNGEI Collection)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (148ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309405971

感想・レビュー・書評

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  • 酔わされた一冊。

    どストライクな世界。

    彼岸と此岸どちらにもギリギリ足がついていないような世界に心は放り込まれた。

    まるで薄く仄暗く煙る世界。微かに見える少年達の蒼白い肌。
    そこに数々の色彩が時折目に飛び込んでくるかのような瞬間を、手首を掴む、喉に触れる朱唇のひんやりとした感触を、雨が奏でるいくつものリズムを、更紗、紅球(ほおずき)、漢字が醸し出す圧倒的な言葉の美を味わい尽くした。

    なまめかしく光る肌。

    玲、哉、どちらがどちらの心を呑み込んだ?

    曖昧な感覚、雨に濡れる草が永遠に揺れるような感覚にひたすら酔わされた。

    • 地球っこさん
      くるたんさん、こんばんは♪

      長野まゆみさん、漢字の雰囲気が魅惑的で美しいですよね。
      わたしも好きです。

      「鉱石倶楽部」「天体議...
      くるたんさん、こんばんは♪

      長野まゆみさん、漢字の雰囲気が魅惑的で美しいですよね。
      わたしも好きです。

      「鉱石倶楽部」「天体議会」が天体や鉱石の漢字、言葉がキラキラしていて好きです。
      「雨更紗」もタイトルからして気になります。
      だいぶん長野作品からは離れてたけど、また読みたくなりました。
      2021/06/18
    • くるたんさん
      地球っこさん♪こんばんは♪

      私も久々過ぎる長野まゆみさんでした。
      実はその鉱物、天体系はなぜか未読なんです。琥珀とかいっぱいキラキラ心輝く...
      地球っこさん♪こんばんは♪

      私も久々過ぎる長野まゆみさんでした。
      実はその鉱物、天体系はなぜか未読なんです。琥珀とかいっぱいキラキラ心輝く言葉に出会えそうですね♫

      少年アリス、野ばら…とかよく読んだなぁ。

      こちらはBLもほんのりで良かったです。
      長野まゆみさんの言葉、世界、酔わされちゃいますね〜¨̮♡
      2021/06/18
  • 正直、何が言いたいのかわかりませんでした
    主人公のハジメはいったい・・・
    アキラと同一人物なんだろうけど
    多重人格者とかそういうことなのかな?

  • 雨、雨、雨。白雲母でも玻璃でもない、光り輝く螺鈿の夜行貝の様に光沢はなまめかしく、蒼白い肌を持つ1人の少年は、哉と玲を間を揺蕩う。幻影に見るのは、過去に池で溺れて死んだ大叔母の弟、御幸か。そして先生や画家の暮林に抱かれる玲。発作の様に17、8歳の頃の少女に戻ってしまう大叔母。哉を現実に引き戻そうとする、叔母と玉於屋の女、常に着物姿の山口安。夏の初め前の雨降る児手山界隈はさながら異界のよう。どのページからも雨と濡れた土の匂いが漂ってくる。個人的には登場人物が「少年」ではなく「少女」の小説だったら、と思った。

  • tinderでやりとりした方におすすめされた長野まゆみさん、初めて読んだ。私にとっては難しい言葉(漢字がわからないはもちろん意味もわからず何度も検索しながら読んだ知識薄恥ずかしい)が並んでいるのに読みやすい...皆川博子さん感がある。
    どえらいものを読んで、どえらい世界を知ってしまった、サスペンス?ミステリー?とびくびくしながら読みキーになる部分でがつんときた、混乱。進むにつれああ、あああ...混乱続きであった(上手く当てはめられる言葉が分からない)。
    風景はもちろん温湿度と、あとはやっぱり人間の身体や所作の美しさがたまらなかった。越知に恋。
    20230124

  • 再読。境界を浸す絢爛な雨が、静かに、時に激しく降っている。夢とうつつ、過去と現在、正気と狂気、わたしとあなた。雨のにおいが体に雪崩れこむとどうにも調子がわるくなって困る。つめたい。次第に体を満たしている記憶を湿気らせていくものだから、過去はおぼろとなり、いるはずのないものが見え、目覚めていることさえ夢になってゆく。
    一つの体に宿る二つの魂。椀に落ちて溜まった雨の滴のように、別々に分かつことはできない。どちらも受け入れてもらわなければ生き永らえていかれない。くちびるを最後の母音のかたちにふくらませ、名を呼ぶ。

  • 単行本の初版を買ってた。ものすごく久しぶりに再読。
    美しい文章と解けない謎。閉じた世界からいつまでも抜け出すことが出来ない…。
    と、この何ともいえない気持ちを文章に残せないことがもどかしい!

  • いつぶりに読んだか?久々に再読。

    言葉の選び方が独特で美しい。
    「雨更紗」というタイトルのとおり、物語全体が雨の向こうにぼんやりと浮かび上がっているイメージ。
    登場人物たちも、物語自体も、雨の向こうで崩れそうな輪郭で浮かんでいる。

  • 昭和初期の匂いを持つ耽美小説
    閉鎖的な集落の名門の素封家で何があったのか。
    二重人格である哉と玲。
    彼らを愛する学校の教師や画家…BLというより
    背徳小説の感じ。

    この少年の多重人格と、彼の血縁で過去の世界に
    精神を飛ばして生きている寧子おば。
    彼女がかつて亡きものにした御幸。

    この三人と、この集落で行われる宵祭の晩の
    少年の死が軸になって、解決されない狂気が
    雨に閉じ込められた世界で綴られていきます。

    薄くてすぐ読み終わってしまいますが、これが長かったら途中で読み疲れてやめたろうから、これで良かったのでしょう。

    事件の真相や多重人格は解決されていませんが、解決や手の内を見せることを狙ったお話ではないので、雨に降り込まれて、周囲の人々のように

    「こうだったのではないか」

    と朧に考えてページを閉じるのが正解だと思いました。

    ちょっとヘルマン・ヘッセの小説を思い出したのは
    私だけかな?

  • 事の真相も、これからどう話が進んで行くのかもハッキリしないまま閉じられてしまう、宛ら辻褄の合わない夢の中の出来事のようでモヤモヤ感がある。なのに、そのモヤモヤ感すら耽美という世界に変えて「これでいいんだ」とうっかり思わせてしまう妙技、長野さん流石です。相変わらず言葉遣いが美しいです。

  • ああ、長野まゆみ。なんだかんだ、わたしはこの人の本を結構読んでいるんだけれども、久しぶりに読みました。夏になると読みたくなる作家さん。内容的には、少年と和と雨と狂気、この人の美学が余すところなく発揮されたもの。みんな頭がおかしくて、不穏な影があって、少年はうつくしくて、女性はこわい。この人の小説には美しいものがたくさん詰め込まれていて、それは汚くみすぼらしい現実を徹底的に排除することで、長野まゆみの持つ、そういう夢見る意志の強固さにわたしは惹かれる。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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