上陸 (河出文庫)

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著者 : 田中小実昌
  • 河出書房新社 (2005年9月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407579

上陸 (河出文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 2015/3/7購入

  •  同人誌時代を中心に、1950~1958年に発表された作者の初期短篇アンソロジー。河出文庫のオリジナル編集とのことだが、この書き手の特質がよくあらわれた興味深いセレクションになっている。

     田中の描く人物たちは、現在のことばで言えば「解離」の技法を駆使して、目をそむけたくなるような苛酷な現実をやり過ごそうとする(これは、主体にとっては、自己が「演技」していると意識される)。しかし、その技法は見えざる緊張と澱のような痕跡を身体に蓄積させ、意識を脅かしつづけているから、さらにその「演技」は強められなければならない。
    時折、主体にとっての「不安」となって回帰してくるその距離を含んだ反復性が、なんとも重苦しく、どんよりとした空気を作中の世界に漂わせることになる。だから、この作品集の物語は、ユーモアがあるのに笑えない。ユーモアなしに生きられない世界の重苦しさ自体を意識させてしまうからなのだろう。

  • つとつとと語る口調が、この頃はまだ少しだけ芝居がかっていて、それはそれで面白い。もっと後の方の、考えることに関して考え過ぎたくらいの作品のほうが、天の邪鬼な自分には面白いのだけれど。
    書くことをやめないことを、考える。

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