インストール (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.27
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本棚登録 : 6996
感想 : 760
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407586

作品紹介・あらすじ

学校生活&受験勉強からドロップアウトすることを決めた高校生、朝子。ゴミ捨て場で出会った小学生、かずよしに誘われておんぼろコンピューターでボロもうけを企てるが!?押入れの秘密のコンピューター部屋から覗いた大人の世界を通して、二人の成長を描く第三八回文藝賞受賞作。書き下ろし短篇を併録。

感想・レビュー・書評

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  • すごく読みやすくて飽きなかった。
    実写版の神木くん、可愛すぎるな

  • 短めの物語で、読み終わった時の感想はあまり出てこない。当時だと、コンピュータを使ってチャットで稼ぐっていう設定は新鮮だとは思う。ただただ、17歳でこの文章が書けるのがすごいな…と思った。
    印象に残ったのは、物語の内容より主人公の言葉で、「この何者にもなれないという枯れた悟りは〜」「中学生の頃には確実に両手に握り締めることができていた私のあらゆる可能性の芽が、気づいたらごそっと減っていて、このまま小さくまとまった人生をおくるのかもしれないと思うとどうにも苦しい」の部分。

  • 作者がこれを書いた年齢とかを全く加味せず評価するのならば「普通」というところに落ち着く。あっさりしてて読みやすいが特別な感動や驚きがあるわけではないかな。
    高校生という多感な時期にも関わらず、その時期にしか味わえない青春を無駄に捨ててまでテレクラをするという設定は面白いのかなと思う。

  • 久しぶりに読んだ小説。
    何を伝えたいのかはわからない。
    確実に読者に委ねられている。
    二人は成長したのだろうか。
    でもすごく印象に残るお話。

  • 学校と受験からドロップアウトすることを決めた高校生・朝子。部屋の物を捨てていた時に出会った小学生・かずよしに誘われて、おんぼろコンピューターで金儲けを狙うことに?!第三八回文藝賞受賞作。

    朝子がおじいちゃんからもらったものの、まったく使いこなせなかったコンピューター。それがなんと小学生の押入れに設置され、秘密のコンピュータールームになった。ここまでは少年心をくすぐるワクワクする話!はたしてどんな方法で金儲けするのか?!と思ったら、かずよしから持ちかけられたのは、風俗嬢のアダルトチャットのお仕事!かずよしのメール友だちが人妻子持ち風俗嬢・雅で、彼女の代わりにチャットの仕事を一緒にしませんか?という。何を言ってるのかわからねーと思うが(略)状態。ませた小学生と人生に迷った高校生の凸凹コンビが大人の世界を垣間見る!

    このカオスなスタートにしては、物語自体はシンプルに着地する。エンタメとして読もうとすると尻すぼみで唐突に終わった印象を受けた。しかし、17歳が書いた純文学として読むと、感性の原石で殴ってくるようなとんでもない作品に化ける。女子高生の感性と思考を文章という川に次々と流していくすさまじさ。時には整理され、時には支離滅裂に描かれる朝子の心象風景。17歳が同年代をこんなにも解像度高く表現できることに圧倒される。綿矢りさ先生の頭脳には何がインストールされているんだろうとさえ思う。

    朝子もかずよしも家族との関わり合いに問題を抱えていた。現実では距離が近いはずなのに上手くいかない。ネットの世界は匿名なのに、思っている以上に自分が伝わる不思議さ。現実と押入れの世界を行き来しながら、ほんの少しだけ前向きな気持ちになるというのが面白い。夢の余韻が薄く残った朝のような、そんな気持ちで読み終えた。

    p.12
    昼ご飯の時間が済んですぐの教室は、誰かのお弁当の具だった酢豚の匂いと春の暖かい陽気がこもっていてまるで人間の胃の中のようである。

    p.24
    まだお酒も飲めない車も乗れない、ついでにセックスも体験していない処女の一七歳の心に巣食う、この何者にもなれないという枯れた悟りは何だというのだろう。歌手になりたい訳じゃない作家になりたい訳じゃない、でも中学生の頃には確実に両手に握り締めることができていた私のあらゆる可能性の芽が、気づいたらごっそりと減っていて、このまま小さくまとまった人生を送るのかもしれないと思うとどうにも苦しい。もう一七歳だと焦る気持ちと、まだ一七歳だと安心する気持ちが交差する。

    p.35,36
    その大学生も最期掴んだであろう肩までの高さのコンクリートから大きく身をのりだしてみたら、恐怖で一気に力が萎えた。開けっぱなしになっている口からよだれが垂れて、それが糸を引きながら果てしなく下へ落ちていく。身体が震え、頭の重みが気になった。死んだ学生はこの本能の怯えを我慢できるくらいに現実に怯えていたのだと思うと、私なんか全然だ。

    p.43,44
    青木さんほどではないにしても、かなりの不器用である私は後ろ暗い気分で母のその言葉を聞いていた。高倉健のようなプラスの不器用さではなく、この青木さんのような、相手の人間を思わずのけぞらせてしまう程の異様な一途さをぶっつけてくるマイナスの不器用さを持った人は、実際迷惑だ。怖い。(中略)本当の不器用は、愛嬌がなく、みじめに泥臭く、見ている方の人間をぎゅっと真面目にさせるから。

  • よみやすくて、好きなストーリー、文体でした。17歳での作品とは恐れいります!

  • 普段の小説からはなかなか見ない、基礎の文法から外れた言葉遣いが出てくるところに、この作家が最初から自分の「ことば」を持っていたんだなと実感する。ともに、それがどれだけ常識と外れていても、書いてもいい、むしろそれを書くことが文学なのだということ。それに勇気付けられる。

  • 読みやすい作品で、スラスラ読み進められたが、オチが、ワタシ的には、物足りなかったケド、10代の頃の退屈な日々を想像したら、親の目を盗んでストーリが進んで行く様はドキドキとした、スリル感を味わえる作品

  • 「勝手にふるえてろ」作者の綿谷りさが17歳の頃に書いたデビュー作

    不登校の女子高生が、ゴミ捨て場で出会った小学生の少年と手を組み、壊れかけのパソコンを使って怪しいバイトをするお話

    思春期で親とも上手く行ってない女子高生と、どこか大人びた雰囲気の少年による奇妙なペアが、壊れかけのパソコンを通して大人への一歩を踏み出していく...という何とも言えない魅力がある作品

    これを書いた作者は当時17歳ということで、当時の作者自身のリアルな気持ちや考えなんかが主人公に強く反映してるんだろうなと思う

    主人公である女子高生"朝子"のアンニュイな雰囲気はきっと多くの読者の共感を呼ぶだろうし、彼女の内面や葛藤はさまざまな年齢層に訴えかけ、新しい視点を提供することになるかもしれない

    読者の年齢や性別の違いによって、異なる感情や考えを抱きそうなお話で、是非おすすめしたい一作

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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