インストール (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.27
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本棚登録 : 6991
感想 : 760
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407586

作品紹介・あらすじ

学校生活&受験勉強からドロップアウトすることを決めた高校生、朝子。ゴミ捨て場で出会った小学生、かずよしに誘われておんぼろコンピューターでボロもうけを企てるが!?押入れの秘密のコンピューター部屋から覗いた大人の世界を通して、二人の成長を描く第三八回文藝賞受賞作。書き下ろし短篇を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 「インストール」
    高校二年生の時に描かれた作品なんですね。高校生ならではの瑞々しい感性が至るところに発揮されています。
    「もっと近い将来にこの時間を無駄遣いだったと悔やむんだろうか。」
    「この何者にもなれないという悟りはなんなのだろう。」
    「本当の不器用は、愛嬌がなく、惨めに泥臭く、見ている人間をぎゅっと真面目にされるから」
    こんなこと自分も潜り抜けてきたなぁと思ってるうちに、不登校、風俗チャットのなりすましとスリリングな展開がまっています。2001年といえばなんかそんなのものも社会問題になってましたね。今思えばひどく稚拙な道具ですが。
    「それが世の闇の部分を知ることで、漠然と怖かったものが減って、世の中が狭く浅くなっていく。」
    という面での気づきも生まれます。
    最後は、生身の人間にたくさんあって、大事にしたい、真面目な本能が目覚めたと新たな自分を獲得します。
    尖ってて、あやうくて、だけど瑞々しくてリアルな青春が感じられました。
    「You can keep it」
    人にものをやたらあげる城島。それで人の心を吊ろうとしている。かれの周りは偽物ばかり。
    ところが、好意を持った綾香に嘘を糾弾されることで本物への目覚めが始まります。絵はがきで適当に嘘ついてたインドに本当に行こうと思い立ち、また、保志のような友だちの存在がいることにも気づきます。これからの城島の成長や気づきに明るいものを感じました。
    大学という自由で開放的で時に退屈で、びっくり箱のようにいろんな人たちがいる不思議な空間。
    あの時間を、空気感をよく表現していたのもよかったです。

  • 毎月刊行される同人誌。そう、ある同人誌を毎月作っていた高校時代の私。読書はまだ半年の経験しかありませんが、レビューで大量の文章を日々書けるのはあの頃、あの時代に毎日大量の文章を書いていた感覚が時代を経ても自分の中に残っているのかもしれません。上手か下手かは別にして、この世には文章を書くことが好きな人と嫌いな人がいる。でも一方でいくら好きで頑張っても書けないこと、書けないものがある。十代の頃、遠くに見える未来を目を細めて見ていたあの時代、キラキラと光る世界の中にいたからこそ、見えたものと、見えなかったものがあったんだと今ならわかるあの時代。そんな時代の事ごとは、そのキラキラと光る世界から一歩出てしまうともう見えなくなってしまう。思い出して想像で書く世界は、どこまでいっても想像の世界であってリアルじゃない。では、キラキラと光るその場所にいる人がその場所を描いたら。その場所で見える、聞こえる、そして感じる全てを文字に変え、それが小説となって届けられたなら。この作品はそんな奇跡によってもたらされた綿矢りささん17歳のデビュー作です。

    『私、毎日みんなと同じ、こんな生活続けてていいのかなあ。みんなと同じ教室で同じ授業受けて、毎日。だってあたしには具体的な夢はないけど野望はあるわけ。きっと有名になるんだ』というのは高校生の野田朝子。『バカだねみんなと同じ生活が嫌なんて一体自分をどれだけ特別だと思ってるんだ努力もせず時間だけそんな惜しんで、大体アンタにゃ人生の目標がない』とクラスメイトの光一から痛烈な批判を受けます。『まあもし疲れてるんなら、一回学校休んで休養とったら?』という光一。『大丈夫、おれがナツコに言ってあんたが欠席中なのをあの怖い母さんの耳に入れさせないようにしてあげる』、と担任ナツコの彼でもある光一の言葉に従い『疲れているわたしは受験戦争から脱落することとなった』という朝子。『早速登校拒否児となり、ただ家でこんこんと眠り続け』ます。そんな中『私は大掃除、という愉快な企画をふっと思いついた』という朝子は『夜を越え、一睡もせず一心不乱に掃除しているうちに朝になってしまった』と夢中になって自室の物を捨てていきます。そして『最後に残ったこのコンピューター』、おじいちゃんの想い出残るコンピューターをゴミ置き場に運んだ朝子。『なんだか途方に暮れてそのままアスファルトの地べたに座り込んでしまった。私はさらに寝転がってみた』という朝子。その時『大丈夫ですか?』と小学生が声をかけます。運んだ粗大ゴミの前でフリーマーケットをやっていると嘘をつく朝子に『このコンピューターを買っていいですか?』、と小学生はコンピュータを持ち帰りました。その三日後、母親が自宅玄関でマンションの人と話しているところに出くわした朝子。『ソナチネっていう下着メーカー、知ってますか?』という会話をきっかけに大量のエロ下着を譲り受けた朝子。『何考えてるのあの人は!』と怒った母ですが、一方でお返しの図書券を買ってきて、朝子にお礼として届けるように伝えます。8階の部屋を訪れる朝子。『ドアが開いた。「あ、ひさしぶり」と目の前に現れたのは、あの三日前ゴミ捨て場所で会った子供』でした。そして、朝子はそんな小学生・かずよしから、あのコンピューターを使ったある仕事の誘いを受けることになります。

    この作品は綿矢りささんのデビュー作。なんと、17歳の高校生の時に書かれたという驚愕の事実。句点、読点が最小限でぐだぐだと、それでいて一気に捲し立てるような会話の表現がとても独特で、初めのうちは読書のリズムがなかなか掴めなくてかなり戸惑いました。しかし、次第に慣れてくると癖になりそうな不思議な魅力が伝わってきます。また、『ちょっと一服、と朝日を拝みながら台所でキャロットジュースを飲んでいたら、母と目が合った』と、『台所で母と目が合った』というたったそれだけのことに少し文章を付加するだけでこれだけ意味と雰囲気が増すんだと感心させられる表現など、細かい部分の表現の工夫があちこちにされていて、その総合力で作品の雰囲気を盛り上げていきます。表現ということで言うともう一つ。ふと教室を見回した朝子の耳に聞こえてきたクラスメイトの会話です。カタカナを表現に用いて、かつ読点一つで一気に繋げます。『受験勉強シテル?マッサカー私昨日九時に寝チャッタ、本当ダヨウダカラコンナニ元気ナノ』。高校時代に恐らく一度は耳にしたことがあるであろうこのあまりに冷めた会話。これを朝子は『平和?違う、みんな騙しあいっこをしている』と感じます。そして『じゃあその目の下の隈は何だと聞きたい』と思う朝子。高校生視点の綿矢さんならではのリアルさに満ち溢れた表現だと思いました。

    この作品は後半、朝子とかずよしの協働による『コンピューターを使ったアルバイト』の話が全面に展開します。しかし、コンピューターを登場させるとどうしても時代感が出てしまいがちです。残念ながら、この作品でも2001年という時代を感じざるを得ませんし、付随するその時代に流行ったであろう言葉の数々も同様です。しかし一方で、前半に描かれる朝子の高校生ならではの気持ちが語られる部分は違います。『まだお酒も飲めない車も乗れない、ついでにセックスも体験していない処女の一七歳の心に巣食う、この何者にもなれないという枯れた悟りは何だというのだろう』と自身に問いかける朝子。そんな朝子はこんな風に不安な気持ちを抱えています。『中学生の頃には確実に両手に握り締めることができていた私のあらゆる可能性の芽が、気づいたらごそっと減っていて、このまま小さくまとまった人生を送るのかもしれないと思うとどうにも苦しい』。中学時代は中学時代でいろんな思いに囚われ、悩み、苦しみ生きてきたはずです。でも、高校生になって、十代も後半になると今度は焦りの気持ちが生まれます。無限の可能性があると信じていた自分の未来、どこまでも羽ばたいて行けると思っていたそんな未来のはずが、いろんなことが見えてくる高校生になって、自分の可能性にも限りがあることに気づく瞬間の怖さ。『もう一七歳だと焦る気持ちと、まだ一七歳だと安心する気持ちが交差する。この苦しさを乗り越えるには。分かっている、必要なのは…前進』。この朝子の自身への問いかけがひたすらに続くこのシーン。切実かつ痛切に訴えかけてくる、読者まで息苦しくさせるそのシーン。ここで引用したのはごく一部分ですが、この作品のクライマックスはこの朝子の一連の自問のシーンだと感じました。一気に作品世界に引き摺り込まれる圧倒的なインパクト。このシーンを読むだけでもこの作品を読んだ意味がある、そしてこのシーンだけをもって、綿矢さんの他の作品も読んでいきたい、そうまで感じる強い印象が残ったシーンでした。

    コンピューターが時代遅れになっても、言葉が時代を感じるものになっても、十代の青春が感じるものは変わらない。子どもから大人になっていく階段でふと立ち止まってみたくなる時代、自分が何者であり、どこから来てどこへ行くのか、どこまで行けるのか、いろんなことに悩み、苦しみ、迷う時代。何かに気づき、何かを感じ、そして何かを納得して、また階段を一段一段と上がりはじめる十代が後半に変わったその時代。17歳が現在進行形だった綿矢さんだからこそ書けたリアルな物語。一見、あっけなく幕切れるその結末だからこそ、未来がそこに見え、朝子の未来が確かに続いていくんだということを感じさせてくれました。強い個性を感じる表現の数々含め、その世界観にすっかり魅了された、瑞々しさに溢れる作品でした。

  • 綿矢りさ 著

    この前初めて読んだ、綿矢さんの本が面白かったので、今頃また、読んでしまった(笑)
    やはり、類稀な作家という表現は当たっていたなぁと実感させられた。
    「インストール」前は馴染みある言葉だったのに
    コンピューター関係の仕事に携わっていたにもかかわらず、何だか懐かしい響きのような感じがした。
    最近は、iphoneやらスマホの世界に変わってしまって…パソコンすら使わなくなってしまったから…
    使わなくなると使えなくなる 習慣って怖い。
    それはさておき、この人の文体の巧さに、本当に驚かされる 言葉のチョイスもよく 上から目線だったり、見下されたような気分になってプライド傷つけられて、ションボリしたり、何だかその情景が浮かんできて、ニヤリ笑えてしまうような…。
    しかも、自分も高校生のくせに、小学生を子供扱いしてるかと思えば、コンピューター得意の天才小学生にタジタジになったり、素直な感情に振り回されて、エロチャットにまで辿り着いてしまう
     客がきたのだ。私は悠然として背筋を伸ばし、
     気分は博打女郎で、かかってきなさい、
     楽しませてあげるわ。とまで言わしめる(笑)
    古い重いコンピューターにサジを投げ、起動に喜び、辛辣というより無邪気
    要は、教え導く人は誰か分からない 誰だっていいのだ 自分に響けば…。響けばいつからだってやり直し、始められる事を…こんな短い小説の中で
    ウキウキ、さっさと読み進められ教えられるとは。

    『インストール』は綿矢りさの中編小説。2001年、第38回文藝賞を受賞した当時17歳の作者のデビュー作。同年11月、河出書房新社より単行本が刊行され、発行部数50万部のベストセラーになった

    なんと、この若さで、こんな小説描けるとは天才の片鱗が最初からあったのね 物事をよく観察して覚えていて、発想の豊かさ、そこに素直な閃きがある作家さんに、ホント、タジタジしました。
    私もインストールしてくれ〜って言いたくなった。

  • 学校と受験からドロップアウトすることを決めた高校生・朝子。部屋の物を捨てていた時に出会った小学生・かずよしに誘われて、おんぼろコンピューターで金儲けを狙うことに?!第三八回文藝賞受賞作。

    朝子がおじいちゃんからもらったものの、まったく使いこなせなかったコンピューター。それがなんと小学生の押入れに設置され、秘密のコンピュータールームになった。ここまでは少年心をくすぐるワクワクする話!はたしてどんな方法で金儲けするのか?!と思ったら、かずよしから持ちかけられたのは、風俗嬢のアダルトチャットのお仕事!かずよしのメール友だちが人妻子持ち風俗嬢・雅で、彼女の代わりにチャットの仕事を一緒にしませんか?という。何を言ってるのかわからねーと思うが(略)状態。ませた小学生と人生に迷った高校生の凸凹コンビが大人の世界を垣間見る!

    このカオスなスタートにしては、物語自体はシンプルに着地する。エンタメとして読もうとすると尻すぼみで唐突に終わった印象を受けた。しかし、17歳が書いた純文学として読むと、感性の原石で殴ってくるようなとんでもない作品に化ける。女子高生の感性と思考を文章という川に次々と流していくすさまじさ。時には整理され、時には支離滅裂に描かれる朝子の心象風景。17歳が同年代をこんなにも解像度高く表現できることに圧倒される。綿矢りさ先生の頭脳には何がインストールされているんだろうとさえ思う。

    朝子もかずよしも家族との関わり合いに問題を抱えていた。現実では距離が近いはずなのに上手くいかない。ネットの世界は匿名なのに、思っている以上に自分が伝わる不思議さ。現実と押入れの世界を行き来しながら、ほんの少しだけ前向きな気持ちになるというのが面白い。夢の余韻が薄く残った朝のような、そんな気持ちで読み終えた。

    p.12
    昼ご飯の時間が済んですぐの教室は、誰かのお弁当の具だった酢豚の匂いと春の暖かい陽気がこもっていてまるで人間の胃の中のようである。

    p.24
    まだお酒も飲めない車も乗れない、ついでにセックスも体験していない処女の一七歳の心に巣食う、この何者にもなれないという枯れた悟りは何だというのだろう。歌手になりたい訳じゃない作家になりたい訳じゃない、でも中学生の頃には確実に両手に握り締めることができていた私のあらゆる可能性の芽が、気づいたらごっそりと減っていて、このまま小さくまとまった人生を送るのかもしれないと思うとどうにも苦しい。もう一七歳だと焦る気持ちと、まだ一七歳だと安心する気持ちが交差する。

    p.35,36
    その大学生も最期掴んだであろう肩までの高さのコンクリートから大きく身をのりだしてみたら、恐怖で一気に力が萎えた。開けっぱなしになっている口からよだれが垂れて、それが糸を引きながら果てしなく下へ落ちていく。身体が震え、頭の重みが気になった。死んだ学生はこの本能の怯えを我慢できるくらいに現実に怯えていたのだと思うと、私なんか全然だ。

    p.43,44
    青木さんほどではないにしても、かなりの不器用である私は後ろ暗い気分で母のその言葉を聞いていた。高倉健のようなプラスの不器用さではなく、この青木さんのような、相手の人間を思わずのけぞらせてしまう程の異様な一途さをぶっつけてくるマイナスの不器用さを持った人は、実際迷惑だ。怖い。(中略)本当の不器用は、愛嬌がなく、みじめに泥臭く、見ている方の人間をぎゅっと真面目にさせるから。

  • ◆読んだきっかけ
    この作品は、読みやすく面白い純文学としてオススメされていた(ベルさん)ので読んでみました。

    ◆全体の印象
    時間を忘れ、没頭して読んでしまいました。
    若者の内面が繊細に描かれていて、自分も内側に潜んでいる感情を揺さぶられて楽しかったです。
    そして純文学という芸術作品の魅力も感じることができました。


    朝子の寝言(自称変わり者の寝言)に共感した人は多かったのではないでしょうか?「自分も高校生のときはそうだったな〜」と振り返っていました。風俗チャットはしていませんが。笑
    そして、かずよしは12歳とは思えないスペックの高さですよね。

    ◆印象に残った場面
    ①じゃあ、何故皆、競い合うように頑張っていない自分、をアピールするのか。やはり自分を天才だと思わせたいし思い込みたいからだ。
    →勉強しないアピールの懐かしさと、天才だと思わせたいという部分にとても共感しました。笑

    ②「努力しなさいよ。私も学校行くから。何も変われてないけど。」
    →朝子のこのセリフ、とても印象的です。
    朝子とかずよしが大人の世界を覗き込むことで、心の変化が起きたことが分かる1文だな〜と感動しました。インストール、完了。ですね。

  • 文学YouTuber・ベルさんの書評動画で気になり購入、読了。

    うーーん、まあちょっと期待し過ぎてしまったかなぁ…m(_ _)m
    面白くないわけではないんだけど、傑作というわけでもないかなと…

    良くも悪くも軽過ぎて、若干の物足りなさは残りました。

    ただ、色んな意味で「瞬間」を表現した作品なのかなとも思いました。

    高校生活の退屈さにウンザリして投げ出したくなるその「瞬間」。
    周りの人の繋がりと、温かさに気付くその「瞬間」。
    そして、誰かとの出会いによって前向きになれるその「瞬間」。

    そういうものって、青春時代に本当に一瞬で訪れるような気もします。
    この小説くらいのスピード感と軽さで。

    そういう意味で行くと、そこも含めて上手く表現しているのかなぁと…そんな気もしました。

    文藝賞取ってるバイアスかも知れないけど…(笑)

    読んだ後に知ったのですが、実はこれが17歳のときの作品らしいですね。
    そこはさすがに純粋にビビりましたね…

    次は「蹴りたい背中」かな(´∀`)

    <印象に残った言葉>
    ・眉をひそめ八重歯を唾液に光らせた光一は喋る喋る、痛烈な批判を私に向かってまだまだまくしたてた。かのカツを最近有難く感じる、五臓六腑に沁みる、目をぎゅっとつぶって「もっと言って」とお願いしたら、光一はひるんで口をつぐんだ。(P10)

    ・ただ、今私は人間に会いたいと感じている。昔からの私を知っていて、そしてすぐに行き過ぎてしまわない、生身の人間達に沢山会って、その人達を大切にしたいと思った。忘れていた真面目な本能が体の奥でくすぶっていた。(P129)

    <内容(「BOOK」データベースより)>
    学校生活&受験勉強からドロップアウトすることを決めた高校生、朝子。ゴミ捨て場で出会った小学生、かずよしに誘われておんぼろコンピューターでボロもうけを企てるが!?押入れの秘密のコンピューター部屋から覗いた大人の世界を通して、二人の成長を描く第三八回文藝賞受賞作。書き下ろし短篇を併録。

  • 物語は若さに満ち溢れていて、みずみずしかったです。私が10代のころに抱いていた感情が久しぶりに呼び起こされて、懐かしく感じました。ちょっと10代にタイムスリップした気分でした。

  • テンポが良くて、ストーリーも刺激的だった
    高校生が書いたとは思えないよ。

  • 2020年にインストール。

    綿矢りさを何冊も読んでるのにインストール。

    私は「一大ブーム」を起こした小説を敢えて避けるようにしているのです……(村上春樹でさえ『ノルウェイの森』はかなり後回しにしたし、『永遠の0』に至っては未読)

    が。

    先日、高橋源一郎さんの『大人にはわからない日本文学史』(なぜかブクログに登録されてない)を読んだ際、綿矢りさについて一章を割いて語っていて、ようやく手に取ることに。

    そして。解説やったんかーい。とツッコんだ。

    高橋源一郎さんの引用に引用を重ねるのだけど、

    「その時綾香の耳の上にがんと高速のボールがぶつかってきて、さらさらの髪が一瞬くらげのように上へ浮かび上がり、開いた口から歯のかみ合わせがずれたのが見えた」

    の一文がお気に入り。
    文章のテンポが否応なくスローにさせられる感じ。
    なんだこれ。いい。

    「思っていたよりも気が強いみたいだからな、あいつ。そこまで考えてから、頰づえをついた城島の顔が、身体が、ぶわりと火照った」

    これもね。語りと視点の時間差みたいなのがあって、いいな。うん、いい。

    どちらも「You can keep it.」から出したんですけどね、「インストール」も、楽しい。
    テトリスのキーホルダーなんか、デスクトップの持ち運べない重さのパソコンなんか、もう忘れられてしまいそうな遺物なのに。

    私たちの往還は何も変わってなくて。

    朝子の唐突なフェードアウトに、かずよしくんの冷笑に、雅さんと「雅」の屈託なさに、お母さん達の不安と戦慄に、やっぱり共感するんだなぁ。

    なんだろう。今の方が癒着しちゃって、ヴァーチャルさえ地続きになっているのかもしれない。
    いやあ。
    いいですよ、インストール経年比較読み(笑)
    ぜひ。

  • 読みやすいし面白い。ぜひ

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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