- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309407593
作品紹介・あらすじ
大切なのは意志と勇気。それだけでね、大抵のことは上手くいくのよ-"姉さん"に拾われて"半沢良"になった僕。ある日届いた一通の招待状をきっかけに、いつもと少しだけ違う世界が、ひっそりと動き始める。深夜のガソリンスタンドが世界を照らし出す、都会の青春ファンタジー。第三九回文藝賞受賞作。
感想・レビュー・書評
-
主人公はどうやら少し前に「姉さん」に拾われてきたらしい。弟がほしかったのだと、「姉さん」はいい、弟の名前は「良」がいいともいった。その姉さんの苗字が「半沢」だったから、「ぼく」は「半沢良」でいこうと思った。半沢良としての履歴書を書き、「姉さん」のアパートから近いガソリンスタンドに、アルバイトの面接を受けに行く。
アパートには姉さんの友達という、かっこいいけれどどこか不器用な女性が、ときどき遊びにやってくる。アルバイト先には面倒見のいいちょっと変わり者の先輩がいて、ときどき深夜に原付で給油にやってくる不思議な女の子がいる……
いちおうストーリーはあるんだけども、あんまり筋とかは関係ないのかな、という気がしました。作品を包むやさしくて清々しいような空気を、ただ楽しめばいいんじゃないかと。
ちょっと可笑しくて、ちょっと切なくて、とても優しい。「感動させよう」って力んで書かれたドラマチックな作品とはまたぜんぜん違う、じんわりとしみわたるような心地よさです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
結局最後まで読んで、主人公の半沢弟がなぜ自分を作り変えて暮らしているのかなどの核心には触れず、ちょっと不思議なひとたちと、交流していく話。一種独特な展開をいつもするので、今回も実際ないと思いつつ、でも楽しく読みました。だんだん半沢くんのようにウルシバラワールド、ヤマザキワールド、姉ワールドにハマっちゃうようです。
-
ストーリーというよりは、雰囲気を読む、みたいな本だと思いました。そういう種類の本があると最近知ったのだけど、それ以前だったらあまり楽しめなかったかもしれません。
姉さんに拾われて半沢良となった主人公が履歴書とリレキショを書いて、ガソリンスタンドでの深夜バイトを始めます。そこで出会うウルシバラという少女。
なんだか現実感がなく、ふわっと優しく、澄んだ雰囲気。
痛みとか辛いことも確実に存在しているけれど、ほのかに匂わせる程度だから、優しいだけで成り立っているのかな。このまま優しいまま続いていってほしい話です。
少し前に「あなたがここにいて欲しい」を読んだばかりだったので、世界三大美徳のひとつ「仲良し」が出てきて嬉しかったな。 -
半沢良。近所のガソリンスタンドでアルバイトをするために履歴書を書く。それと同時に、妄想を取り混ぜたリレキショを作成するのだが。半沢良が姉の弟として、姉の友達の山崎と馬鹿話をしながら深夜のアルバイトをしながら暮らしているある日、原付きのスクーターで給油に来たある少女から白い封筒を渡される。少女の名はウルシバラ。
そうか、中村航のもともとの(?)スタイルってこういうのだったなと。『トリガール』などのような青春ストーリーと言うより、なんだかふんわりした純文学の手触りを感じる作品である。
姉と山崎の間に入って、酒を飲みながらダラダラと過ごすものの、過去がない人生が続いていく。護身術を独学で学びつつ、山崎にもらった自転車「どこ2」を整備していく。それをカールツァイスで眺めるウルシバラ。
知らない少女から手紙を渡されるのが、本作で最も大きい事件かもしれない。いや、山崎と姉が出会うところか。それぞれの白紙の人生が交わったと来、白紙が色を持ち始める、そういった部分を楽しむための一冊である。 -
中村航のデビュー作を読んだ。中村航は最初から中村航で、中村航が中村航たるゆえんがぎっしり詰まってた。土。いや、好き。
-
+++
大切なのは意志と勇気。それだけでね、大抵のことは上手くいくのよ―“姉さん”に拾われて“半沢良”になった僕。ある日届いた一通の招待状をきっかけに、いつもと少しだけ違う世界が、ひっそりと動き始める。深夜のガソリンスタンドが世界を照らし出す、都会の青春ファンタジー。第三九回文藝賞受賞作。
+++
半沢良は誰なのか。読み進んでいけば謎が解けるのかと思ったが、そういうわけでもなく、物語は、半沢良を日々創り上げる過程が淡々と描かれている。そしてその結果が「リレキショ」に書き加えられ、さらに半沢良になっていく。名前や生年月日、生い立ちやさまざまなことは、生きていく上での必須条件ではなく、いまをどう生き、周りとどう関係性を築いていくかが大切なのだと思わされる。半沢良が本当は誰なのか、とてもとても知りたくなるが、それはたぶん知らぬが花でもあるのだろう。遠くて近く、とても寂しくてあたたかい。胸の奥がきゅんとする一冊だった。 -
2019/8/11
中村航さんのデビュー作らしい。読んでいてとても不思議な感じ。主人公の半沢良がなんで半沢良なのかが読み進めていっても作中では一切語られないまま淡々と話が進んでいく。どうして姉と同居しているのか、途中に姉が拾ったって表現があったけど、それに関しても謎。本当に淡々と進む。
半沢がリレキショを作っていくところからスタートするけど、年齢以外は分からないことが本当に多い。
バイトを始めて、突然出てくるウルシバラ。これも謎。
正直普通の人だったら、突然あんな長文のしかも自分の妄想をがっつり書かれたものを貰ったら気味悪がってしまうんじゃないかなと思うところですが、この物語の淡々とした書かれ方のせいか、特に違和感は感じないようになってると思います。
最後の方で主人公も自分は実は星川だと言い出すところもなんでという部分には触れられておらず。
ウルシバラといざご対面して夜のデートに行くのも、これから何があるんだろうというところで終わるので、想像するのは面白いと思います。 -
中村さんのデビュー作。
大切なのは意志と勇気。
世界三大美德のひとつは仲良し。
中村さんは、難しい言葉は使わない。
このひとといるのが当たり前というか、昔から決まっていたかのような丁度良さ。
それを表現してくれる。
なんだかとってもいいじゃないか。
っていう直感みたいなものが大事。 -
止まらず読んだ。
くしゃくしゃっとしてたところを、すっとのばして整えられるみたいなかんじ。
素朴なあたたかさ。
アイロンみたいに。
梅酒、浸けようかな。
それにしても、人から本を借りるというのは、その人の構成要素を覗くみたいでわくわくしますね。