完全版 佐川君からの手紙 (河出文庫 か 1-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 108
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409573

感想・レビュー・書評

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  • 1982年下半期芥川賞受賞作。芥川賞を新人作家の登竜門とするならば、これほどに新人離れのした新人も珍しい。確かに小説の分野に関してこそは新人であったかもしれないが、唐十郎といえば状況劇場(現在は唐組)を率いて、日本の演劇界を席巻した当人なのだから。その存在感はもう圧倒的である。さて当該の小説だが、どこまでが本当でどこからがフィクションであるのかが極めて曖昧である。迷妄模糊としているのだ。最初の佐川君からの手紙はあるいは事実であるのかもしれない。しかし、物語が進むほどに小説世界は「妖しく」変容して行くのだ。
    唐十郎が書いたという先入観があるかも知れないが、小説世界は限りなく演劇的である。とりわけ、根幹に佐川君と唐氏の祖母とが直結するあたりは、もう彼の演劇世界そのものだ。

  •  
    ── 唐 十郎《佐川君からの手紙 1982‥‥ 20090530 河出文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4309409571
     
    (20231128)

  • 佐川一政の事件というのは、彼をなんとか担ぎ出して面白いソフト作ろう、っていうB級産業の思惑が現在に至るまで横行しており、40年くらい?コンテンツとして生きながらえているのは言葉はアレですが魅惑のチキルームに感じる人たちがあまたいるためで、ほぼリアルタイムでこうして小説として出て、しかも有名賞を受賞するに至るのもなんつーか時代を感じますね。お前のばばあ関係ないやろ何いうとんねーん、と言いたくなりません?素直に読んでるとさあ。それは幻想というのかい。

  • いや~、苦痛な読書時間だった。それなら止めちゃえよって、それこそ何回も自問自答しながら、「芥川賞」受賞作ってこともあり、それでも何とか読み続けたけど、残り三分の一はもう限界でした。”~手紙”はちょっと小説ぽくもあり、読んでるうち、良さが分かってくるんだろうと思っているままに終わり。後半に期待と思って読み進めても、前半の追記みたいな感じで、何ならもっと悪い。堪らなくなり、残り2編は飛ばし読みにしてしまいました。飛ばし読みしたところは、もちろん中身は残っていないけど、それ以外も大差ないという。頭が悪いせいってのを置いといても、物語として純粋にイケてないと思います。結局本作(とその周辺)で一番印象に残ったの、作者が大鶴義丹の父ってことでした(笑)

  • 夕方という淡い時間に、手紙に導かれ不明瞭なものを求めてパリに行ったら、本当に現実じゃなくなっちゃったのか。
    手紙のやりとりがどこまで本物でどこから虚構なのかぜんぜん分からないよ。境界がぜんぜん分からないよ。

    「御注意あそばせ」では、トランプゲームの説明が始まった辺りで訳がわからなくなり一度挫折してしまってたんだが、何も考えずきちんと読んだら普通に面白く読めた。やはり毎回女性が魅力的。

  •  まずひとつ言っておきたいのは、この小説は俗に言う「パリ人肉事件」をひとつのモチーフにはしているが、事件そのものとは言うまでも無く何ら関係はない。作品自体の倫理性がどうこう言われるのは有り得ることだが、事件そのものの倫理性と結びつけて語ることはナンセンスであろう。

     唐十郎は状況劇場の座長をつとめる劇作家である。彼の劇を観たことがあるのだが(秘密の花園)、夢と現実が交錯しながら展開されていく作風であった(おそらく他の多くの作品も同じ作風だと思われる)。この小説も、その基本的なスタンスは変わらない。先述したパリ人肉事件を現実世界のモチーフとしながら、作者自身のノスタルジックな記憶と混ぜ合わせて、現実とも非現実ともつかない、不思議な世界を創り出している。
     表題作は第88回芥川賞受賞作。併せてそのサイドストーリー3編が収録されている。

  • 久々に来た!と思った一冊、勘の良い人ならタイトルだけで何について書かれたものか分かってしまいそうw
    一文一文が研ぎ澄まされている圧倒的な文章力。
    作品全体から滲み出た不穏な空気、特に前半でルネのアパートに踏み入る箇所の緊迫感が凄い。
    後半は現実と妄想が入り混じった奇妙なタッチで描かれている。
    芥川賞の名に恥じない作品!

  • 扱っている題材の割に淡々としているように感じた。

    2002年5月26日読了

  • 今の時間ちょうどNHK・BS102で、唐組公演『紙芝居の絵の町で』が放映されています。あとでゆっくり見ようとDVDに録画しています。ブルーレイには別にエイゼンシュテインの『十月』をダビングしていて使えません。そういえば寺山修司の弟分を自認する唐十郎については、それほど関心を持ったことがありませんでしたが、演劇そのものは割と好きなのと、彼の実演物は時々テレビ放送される機会が多いので今まで何本か見ています。もちろん両者とも、リアルタイムで実物を見ることなど出来なかったので(というか関西公演とか当時したのかな?)ただ悔しいだけですが、いま現在見るとしたらTV放送録画かVHSテープ・DVDを入手しかない訳ですから、見つけたらともかく必死です。ところで、今ふと思い浮かんだのですが、野田秀樹とか「こまつ座」も含めて、あらゆる演劇公演と、ジャパネットたかたの商品PRパフォーマンスとは、面白いように似ていると思いませんか?まあ、それだけジャパネットたかたは、完売するためにポイントをつかんで強烈にアピールするように演劇的に表現している訳ですが、それだけではなく、もう一つ重要なことが潜んでいるのです。それは、何を隠そう、実は演技は誰でも出来るということです。演技者=俳優には誰でもなれる、ということです。換言すると、他でもなく私たち自身こそが、日常的に演技者であり俳優であるのです。何か俳優というと、難しい職業みたいな印象をお持ちの方がいらっしゃるかも知れませんが、とんでもありません。たとえば、長いセリフなんてとても覚えられない、訳じゃなく、職業として自覚的にやれば、500頁に及ぶ台詞だって覚えられます。これって暗記力のない私が出来ました、実証済みです。うれしい時に、誰かに指示されて、笑顔の度合をもっと強調するように言われて、相手に対して声を上げたり下げたりして迷って、手を握ったりしますか?いつも一発勝負で、最善の表現をしますよね私たちって。決まったシナリオがあって、リハーサルがあって、NGならやり直せて、しかも演出者にこうやれ・ああやれと修正されて、やっと悲しい表現・演技をしたりする俳優という職業の人たちは、残念ながら普通の私たちに較べて、相当以上に気楽な安易な能天気な人たちなのです。名優とか演技賞を受賞した一部の俳優で、ようやく普通の私たちレベルの表現が出来ているくらいです。私たちの日常的な言動行為こそが、相手を説得し感動させる演技であり、私たちこそが名優であるとは思いませんか?・・・・・話がまた とんでもない方向へ 飛躍して 本の内容に行けません この稿 もっと再構成して 続ける予定です・・・・・ 

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著者プロフィール

劇作家・演出家・俳優・小説家。1940年東京生まれ。明治大学文学部演劇学科卒。62年劇団状況劇場を結成。67年に新宿花園神社境内に紅テントを立てて上演し、以後、唐の存在は60年代に開始されたアングラ・小劇場演劇を牽引する旗手となった。88年に状況劇場を解散、唐組を結成。横浜国大(1997~2005年)、近畿大学(2005~10年)でも教授を勤め、後続の若い世代にも強烈な影響を及ぼした。 

「2017年 『唐十郎 特別講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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