そこのみにて光輝く (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.68
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本棚登録 : 963
感想 : 112
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309410739

作品紹介・あらすじ

北の夏、海辺の街で男はバラックにすむ女に出会った。二人がひきうけなければならない試練とは-にがさと痛みの彼方に生の輝きをみつめつづけながら生き急いだ作家・佐藤泰志がのこした唯一の長篇小説にして代表作。青春の夢と残酷を結晶させた伝説的名作が二〇年をへて甦る。

感想・レビュー・書評

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  • 仕事を辞め、曖昧に生きていた達夫がパチンコ屋で出会った拓児。
    百円ライターをあげた事がきっかけで拓児の住む家に行くことになる。そこはサムライ部落と言われるバラックだった。
    深く関わらない方がいいと思っていた達夫だったが拓児の姉千夏に惹かれていく。
    高齢の母、寝たきりの父と刑務所上がりの弟との暮らしの為に身体を売っていた千夏。
    終始どんよりとした雰囲気だったが、言葉にしなくても惹かれあっていく達夫と千夏や、家族思いの拓児の無邪気さには引き込まれて行った。
    閉鎖的な環境から抜け出したいのに抜け出せずに、だからと言ってやりたい事も解らずに、ただ歳をとって行く。
    そういう大人を見て私も地元を離れた一人だ。
    初作家さんだが、41歳の若さで自死されてしまっていることを知った。
    他の作品と映画も観てみたい。


    • naonaonao16gさん
      奏悟さん

      おお!レビュー再度見てくださるなんてありがとうございます!!
      綾野剛…エロいですよね…!
      池脇千鶴もエロいのでもう凄いですよ爆
      ...
      奏悟さん

      おお!レビュー再度見てくださるなんてありがとうございます!!
      綾野剛…エロいですよね…!
      池脇千鶴もエロいのでもう凄いですよ爆

      そうなんですよね、古さを全く感じないです。
      映画も、原作が数年前、と言われても頷けるくらいの印象です。

      どんよりとした作品に惹かれる感じ、すっごいわかります。なんででしょうね。
      わたしはわりと実生活でも起こりうるので困ったもんです…

      映画のレビューお待ちしてます^^
      2022/01/29
    • 奏悟さん
      naoさん 

      松本役が火野正平って、もうエロいのオンパレードですね爆

      佐藤泰志さんって映像化されている作品が多いみたいで、興味津々です。...
      naoさん 

      松本役が火野正平って、もうエロいのオンパレードですね爆

      佐藤泰志さんって映像化されている作品が多いみたいで、興味津々です。

      今、本棚に佐藤泰志さん没後に発表されたという短編集が積読されているのでまたレビューします。
      昨日まで読んでいたピースオブケイクの漫画の映画も綾野剛だと知り、エロ剛を観なければ!と意気込んでおります笑
      2022/01/29
    • naonaonao16gさん
      奏悟さん

      綾野剛、強くて優しい役が多いけど、エロを忘れちゃいけないですよね笑

      短編集、確かにありますよね、本屋さんで見かけたよう...
      奏悟さん

      綾野剛、強くて優しい役が多いけど、エロを忘れちゃいけないですよね笑

      短編集、確かにありますよね、本屋さんで見かけたような。
      今かなりの積読と戦っているので、なかなか原作にはたどり着けそうにありません…
      レビュー楽しみにしています^^
      2022/01/30
  • 久し振りに、こんな本を読んだかな。純文学作品なのだろうか。
    大衆小説が読みなれているが、この作品はスラスラ読める。
    しかし何が言いたいのか考えみると、どん底でも踏ん張って生きている家族に、色んな愛を忘れた男が介入していく物語。
    その中で起こる事は、かなり現実的なのではないのだろうか。そう考えると、今の私の生活はかなり幸せなのだろうと思った。

  • 第一部「そこのみにて光輝く」は息を張りつめたような若さがある。くっきりした登場人物像たちの描写がうまい。特に中心の「達夫」と「千夏」がいいなあ~暗さの中にキラキラしたものがある感じ。

    「千夏」の弟「拓児」に誘われて「達夫」が訪ねた家は、開発に取り残されたようなちいさなバラック小屋だった。両親と姉弟が住んでいるその家は、生活・生きざままでもが壊れてすさんでいるようだった。しかし、そこには家族の強い矜持があったのだ、と思いいたる導入部に惹きつけられる。

    若くてなにものかに飢えている「達夫」が「千夏」とそれからたどる恋の道筋はすごくいい感じだ!!

    けれども、第二部「滴る陽のしずくにも」の二人のその後になると、おや?と思わされる。それは「千夏」があまりにも後ろに下がり過ぎて影薄い。伝法な「千夏」が普通に閉じ込められてしまったようだ、至極残念。

  • 作者である佐藤泰志の唯一の長編作品。
    30歳を間近に控える主人公が、観光しか取り柄の無い地方都市で、衰退していく会社に見切りを付け、ブラブラと無意味な日々を過ごす。物語の始まりは数奇なもので、その邂逅から、ダラダラと、怠惰に、それでもしっかりと、段々と、生きているという認識をさせられる。
    人物の行動原理や、心境の変化といったものは、見えるようで靄が掛かっていて、でも情景や音やにおいというものはしっかり伝わってくる。この感覚が作者の持ち味なのだろうか。主人公が自棄を起こした行動から展開する物語に、無理がかかっているとも取れたが、どうせ自棄でなければもっと悲惨な結果になっていたのだろう、そういう内容は他の作者が描く方が相応しい。佐藤泰志の描く日々というは、どうしてこうも、ぎこちなく泥臭く青春の終わりというものを感じさせるのだろう。

  • 少し前にこの映画を観てとても良くて、原作者が気になって調べてみたら、様々な文学賞に何度もノミネートされながらも結局不遇なまま、41歳の若さで自死を選んだ作家だということがわかった。

    北国、函館市の短い夏。希望を失い怠惰に生きていた達夫は、バラックに住む千夏という女に出逢う。
    運命的に惹かれ合った二人だが、そこには引き受けなければならない試練があった。

    閉塞感とわずかな希望、という部分は映画化された作品にも漂っていたけれど、原作は物語の流れが映画とはけっこう違った。
    一章と二章に分かれた小説は、その二つの章のあいだで三年ほどの開きがある。それを組み合わせてエピソードを足して、そこから労組やストライキなど今の若者にはあまりピンと来ない要素を引いたのが映画版だということがわかった。
    原作を読んでみて、映画にさらに深みが増した気がする。

    一章の千夏は、物凄い境遇なのになぜか汚れていないような、とても魅力的な女性なのだけど、二章の千夏は一章と比べたら平凡で、そこに「ひとつの決断によって失うものと得るもの」を見た心地がした。
    (映画の千夏は池脇千鶴が演じていたのだけど凄まじかった。醒めてるんだけど底にどろどろした熱がある感じ)

    今再びこの佐藤泰志という作家が見直されていて、他にも映画化が決まったらしいけど、物語に流れる閉塞感や格差が、今の若い人は共感できるのかもしれない、と思う。数年前に小林多喜二の蟹工船がブームになったのと、多少共通する現象というか。
    淡々としているからこそ、胸の底が疼くのを感じた。

  • 懐かしいのに新しい
    昔の話なのに今の時代に通じている
    生きづらい人たちが淡々と人間臭く生きている

  • 映画版を観たのが3年前。直後に購入したままだった原作を手に取ると、映画の情景が鮮明に呼び起こされます。

    北海道の海辺の町のパチンコ屋で出会った達夫と拓児。百円ライターを渡しただけなのに、拓児は達夫になついてバラック小屋の家に招く。拓児の姉・千夏に惹かれる達夫。

    達夫に綾野剛をあてたのはともかく、原作を読む限りでは年齢的に拓児に合わない菅田将暉と、千夏のイメージとは思えない池脇千鶴をあてたのがハマった素晴らしい映画でした。著者の早逝がつくづく悲しい。北の冬の話は辛いけど、夏の話でもやっぱり辛く切ない。きらきら光る。

    映画の感想はこちら→http://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/b036332225645725a5ba54e4d588a369

  • 海炭市叙景で感じた文体の瑞々しさとは、
    また少し違った眩さ溢れる作品。

    一文の短さや、
    出来事の始まりを回想で蘇らせることで、
    特別な瞬間として装飾する方法や、
    限りなく内的な移り変わりなはずなのに、
    景色で語られるその心情やらが、
    すべて抑制的なのに、
    夏の光、冬の光、
    生々しい底に?
    もしくは底から?
    薄くても差し込むその光が、
    闇を浮かび上がらせながらも、
    やはりその先の希望を影絵のように映し出す。

    日常性と、非日常性。
    安定性と、不安定性。
    固定と、流動。
    光と、闇。
    そのなかに漂い続ける、
    あなたと、わたし。

    出会いに堕ちていくような一瞬が放つ、
    潮の香りと波音に、
    人間の本質を見る。
    ずっと、薄い日差しのもと、
    浜辺にいるようなのだ。

  • なんていうんでしょう。確かに三島賞の候補となっただけの不幸感。
    最初から、本全体に漂う不幸な終末に向けての疾走が予想される本。売春を生業として家族を助ける千夏と激化するストライキに巻き込まれて仕事をさった達夫の恋愛を主軸とした話。重要な存在なのが、二人を結びつけた千夏の弟、拓児。よくある社会の底辺のカップルを描いた話かと思ったけど、主人公の世間一般の「まとも」な生活を送る妹との葛藤やら色々な感情が混じり合う。

    北海道の函館の、バラック村?の解体とその差別に対する事を忘れないように書いているのだろうか?函館出身の作家なので、そういった重みも加わってくるが、そうでなければよくある社会の底辺の話な気もしてしまう。

    作者自体、これを書いた一年後に自殺しているので、最初複雑な家庭環境のために、多様な感情を心に内包した弟拓児に自身を投影しているのかと思ったが、本の宛書に「妹へ」とあるので達夫への投影で、無邪気な拓児に憧れているのだと思った。

    難点は、人の出会いがチープすぎる。

  • 映画版で綾野剛が主人公をやっているそうですが
    とても、とっても似合うと思いました
    綾野剛以外では考えられない!

    全体的に暗い、重い、つらい話
    この小説の魅力はなんだと言われてもうまく答えられない話

    ただ一点だけ、本も読まないような奴が必死に姪のために本を書店員に選んでもらってるシーンと、その本を何度も読み返す姪ちゃんのシーンがあるんだけど、そこがたまらなく好き
    そういう、とんでもなくありきたりだけど、大切な場面に関わっていられるというのは書店員にしかできない仕事のように思います

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著者プロフィール

1949-1990。北海道・函館生まれ。高校時代より小説を書き始める。81年、「きみの鳥はうたえる」で芥川賞候補になり、以降三回、同賞候補に。89年、『そこのみにて光輝く』で三島賞候補になる。90年、自死。

「2011年 『大きなハードルと小さなハードル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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