山に生きる人びと (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.89
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本棚登録 : 550
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411156

作品紹介・あらすじ

山には「塩の道」もあれば「カッタイ道」もあり、サンカ、木地屋、マタギ、杣人、焼畑農業者、鉱山師、炭焼き、修験者、落人の末裔…さまざまな漂泊民が生活していた。ていねいなフィールドワークと真摯な研究で、失われゆくもうひとつの(非)常民の姿を記録する。宮本民俗学の代表作の初めての文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 宮本常一の民俗学は、柳田国男のそれとちょっと似ているが、より庶民的な風景を描き出す点が異なる。
    柳田民俗学は学術的というよりしばしば随筆的で、文体は極めて文学性が高く、凝縮されたものだった。それに対し、宮本常一の本はずっと平易で、親しみやすい。その文体が、名もない庶民の民俗誌を描出しようとする彼の民俗学的志向とぴったりマッチしている。
    この本はサンカ、マタギ、木地屋、平家等の落人など、あえて山に住んだ人びとの生活をテーマとする。彼らは狩猟と採集で食料を得るが、結局それだけでは足りないということで、平地の村落まで降りていって交易する。平野部の水田地帯に定住した人びとに対し、山の人びとは「歩く」ことによってそのノマドぶりをあらわす。
    ただしこの本は、興味深いエピソードを持ちながらも、あまり深い探究はなされていないように感じた。

  • 読みやすさ ★★
    面白さ ★★★
    ためになった度 ★★★★

    山の中というと静かなイメージがあるが、実はさまざまな人びとがそこに住み、時には他の山の民や権力者たちと闘争しながら、生きていたことを知った。最後は弥生式時代人と縄文式時代人の対立の歴史にも言及するダイナミックな著作。
    何度かチャレンジして今回ようやく完読した。正直なところ、あまり読みやすくはない。その原因は長い段落の多いことがあるが、鉛筆片手に段落内で大きく意味が切れるところに印をつけながら読んでいくと、だいぶわかりやすくなった。久しぶりに読み応えのある本を読んだ。

  •     -2023.08.11.読了

    「古い縄文期の民族的な文化が焼畑あるいは定畑などを中心にした農耕社会にうけつがれ、一方水田稲作を中心にした農耕文化が天皇制国家を形成してくる。そしてこの二つのものはずっと後々まで併行して存在し、かつ対立の形をとったのでまなかろうか。」

  • とばしとばし読了

  • 私の中でサンカブームがやってきたときに購入。

    定住せずにあちこちに居を移し、竹細工をして、川魚を食べ暮らしていた彼らの生活に思いを馳せながら読みました。

    人間は結構自由な動物だなと思いなおした本。

  • 一律ではない日本、多様性ある日本、排除と融和の歴史

  • 濃い本であった。
    日本は単一民族の国という認識をあらためたところだけれど、農耕民族の国という認識も改めるべきかもしれない。

  • 2018/8/26購入
    2020/12/21読了

  • 実地調査に裏付けられた、相変わらずの生き生きとした文章。この筆者に取材された人は、きっととても幸せなんだろうなと思える。

  • (01)
    山の可能性を描いている。一見すれば、本書は過去へのノスタルジーに支えられているようにも見受けられるが、著者が未来の未来を見据えたときに現われた山の生活(*02)と読むこともできる。交通、生産、信仰、闘争など山にありうる生き様を、著者が山を歩きまわるうちに出会ったものを根拠に示そうとしている。

    (02)
    この生活は過去の日本列島の生において一般なのか特殊なのかと考えたとき、その動的な可能性に力点が置かれている。つまり、人は山を生産手段も求めることもあるし、里に暮らすこともあり、そのときそのとき、その場その場で、しのいでいる人びとの選択や意志も見えてくる。そして人びとの移動が単一でない複合的な生活手段を開発(*03)している。この山稼業コンプレックスともいうべき器用さと技術が山の仕事に集積したという事実は面白い。

    (03)
    開発がもたらしたのは当然に資源の枯渇であった。獣、木、鉄などの資源が加工され消費地に流通され、山から資源が目減りしていった過程も本書に詳しい。むしろ、高度な加工や頻繁な交通は資源不足の常態化の上に築かれたものと見るべきであろう。

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著者プロフィール

1907年(明治40)~1981年(昭和56)。山口県周防大島に生まれる。柳田國男の「旅と伝説」を手にしたことがきっかけとなり、柳田國男、澁澤敬三という生涯の師に出会い、民俗学者への道を歩み始める。1939年(昭和14)、澁澤の主宰するアチック・ミューゼアムの所員となり、五七歳で武蔵野美術大学に奉職するまで、在野の民俗学者として日本の津々浦々を歩き、離島や地方の農山漁村の生活を記録に残すと共に村々の生活向上に尽力した。1953年(昭和28)、全国離島振興協議会結成とともに無給事務局長に就任して以降、1981年1月に73歳で没するまで、全国の離島振興運動の指導者として運動の先頭に立ちつづけた。また、1966年(昭和41)に日本観光文化研究所を設立、後進の育成にも努めた。「忘れられた日本人」(岩波文庫)、「宮本常一著作集」(未來社)、「宮本常一離島論集」(みずのわ出版)他、多数の著作を遺した。宮本の遺品、著作・蔵書、写真類は遺族から山口県東和町(現周防大島町)に寄贈され、宮本常一記念館(周防大島文化交流センター)が所蔵している。

「2022年 『ふるさとを憶う 宮本常一ふるさと選書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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