十蘭レトリカ (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.86
  • (5)
  • (15)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 133
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411262

作品紹介・あらすじ

十蘭の前に十蘭なく、十蘭の後に十蘭なし。破天荒へ向けての完璧な計算、予想を裏切り期待を裏切らないウルトラC。最高の達成度を示す異色の傑作群。「胃下垂症と鯨」「モンテカルロの下着」「ブゥレ=シャノアヌ事件」「フランス感れたり」「心理の谷」「三界万霊塔」「花賊魚」「亜墨利加討」の圧巻八篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 初めての久生十蘭。短〜中編集。
    パリに留学中の貧乏学生お嬢さんが振袖でカジノに乗り込み一攫千金を狙ってすってんてんになる「モンテカルロの下着」目当てで買ったけど、他も全部滅法面白い。
    小説がうまい。
    良くも悪くも肝の座った/意地を通す人間がたくさん登場するのが収録作の共通点かな。読後、なんとなく爽快。

  • 「胃下垂症と鯨」「モンテカルロの下着」「ブゥレ=シャノアヌ事件」「フランス感れたり」「心理の谷」「三界万霊塔」「花賊魚」「亜墨利加討」の全8作品。お試し感覚で読んだ久生十蘭の一冊目が、本当にこれで良かったのだろうか。決して読みやすくはないが、どれも癖になる味わい。とくに難航路の河川を遡る「花賊魚」は、船乗りの限界に挑戦するような航河の様子と、それに乗船している老女将やすの凄さに引き込まれた。

  •  再び久生十蘭の短編集、今度は河出文庫で数冊に渡って出版されたセレクション。
     終戦前の作品が8編収められている。本巻の最初の2編は1927(昭和2)年、1938(昭和13)年に発表されたものだが、あまり良くなかった。あれ? こんなものかな?と思ったが、楽しいユーモア小説「フランス感れたり」(1941《昭和16》年)から後のは、やはりどれも良い。ドタバタコメディのような「心理の谷」(1940《昭和15》年)、どんどん話が広がって迫力ある冒険小説となる「花賊魚」(1942《昭和17》年)、骨太な物語性が菊池寛を思わせるが、闊達極まりない人物の台詞(江戸っ子ことば?)の遊戯が独自の魅力を放つ「亜墨利加討」(1943《昭和18》年)など。
     バラエティに富んだ諸編はそれぞれが確固とした小宇宙をしっかりと構築していて隙が無い。全く以て巧みな小説家であり、抜群の品質を誇る完成度の高い工芸品のような作品たちだ。
     作風をどんどん変えるという点は「カメレオン」というよく使われる形容を想起させる。カメレオンと言えばピカソやストラヴィンスキー。しかしこの両者は、様々な様式を手がけつつも、それぞれにおいて作者独自の代えがたい体臭のようなものが作品にはにじみ出て、紛れもない個性がその都度刻印されているのが印象的なのだが、久生十蘭の場合はそのような強烈な体臭を感じさせない。十蘭自身が控えめで穏やか、常識的な人物であったからだろうか? 巧緻を極めた工芸的作品を通して、浮かび上がるものはあまり強烈なものでない。そこが何となく不満に感じている。
     

  • それぞれ趣の異なる8つの短編、中編からなる一冊です。ちょっとばかり古風な文体で、難しい漢字表記が多いので、少々読みづらい気もしましたが、それでもグイグイ惹きこまれてしまうのは、やはり作家の力量なのでしょうネ。中でも〝亜墨利加討〟には心打たれるものがありました。

  • 舞台は様々、話も歴史ミステリー有り恋愛有りと様々ですが底に流れるものはやはり十蘭独特の文章と世界でした。

    『心理の谷』は最後の最後でいきなり方向が変わって置いていかれた感がありますが『ブゥレ=シャノアヌ事件』の葬られた歴史が暴かれる展開、『三界万霊塔』の息を吸うように行われる残酷さと狂気の描写はやはり上手いなぁ、と感じ入ります。
    『フランス感れたり』のシニカルとコミカルの間のような哀愁感も読んでいて切なくなりました。

    この本で一番好きなのは『ブゥレ=シャノアヌ事件』ですがどの話も鋭い文章と博識でぎらりとしています。

  • 帯に澁澤龍彦絶賛とあり、またタイトルにも魅かれて、かなり大きな期待を持って読み始めたのだが…。どうも作者のレトリックが私には波長が合わず、十蘭の世界にうまく入り込めなかった。

  • やっぱり面白い。そして、だけど、やっぱり落ちがよくわかんない。そこがいい。
    「心理の谷」は最後の一文の有無で全体の印象が180度変わってしまう。最後で「えっ……」と思わせたまま終わってしまうので、消化不良というかひきずるというか、なかなかスッキリとさせてくれないの。
    恋する男女もパリのお嬢さんもわるいやつらも砂漠の英雄も肝っ玉おっ母も太鼓の名人も…… 実際の当時の雰囲気を知るわけではない現代の読者にも、なんだか往年の空気が忍ばれるような、それでいて、小粋でおおらかな正真正銘エンタメ小説で。
    河出のこのシリーズ、まだまだ続くのかしら、国書の全集の収録作との比較(底本の異同とか)があったら便利だが…。文庫解説ではあまりそのへんは触れてませんね。

  • 資料ID:92120067
    請求記号:080||K
    配置場所:文庫本コーナー

  • 文章が苦手でした。残念。

  • ラストの「亜墨利加討」が幕末ものだったので個人的に面白かったです。

    ※収録作品
    胃下垂症と鯨/モンテカルロの下着/プゥレ=シャノアヌ事件/フランス感れたり/心理の谷/三界万霊塔/花賊魚/亜墨利加討

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1902年北海道函館市生まれ。本名、阿部正雄。1952年『鈴木主水』で第26回直木賞を受賞。推理小説、ユーモア小説、歴史小説などその作品の幅は広く、「小説の魔術師」「多面体作家」の異名を持つ。代表作に、「湖畔」「黒い手帳」「ハムレット」「無月物語」「母子像」など多数。『キャラコさん』『肌色の月』など映画・ドラマ化作品も多い。1957年没。

「2023年 『あなたも私も』 で使われていた紹介文から引用しています。」

久生十蘭の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×