私の部屋のポプリ (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 165
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411286

感想・レビュー・書評

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  • 熊井さんを知ったのは10代の頃。当時から知っていた本が文庫で出ているのを見付け、即購入した。詩的な文章が とても素敵だし、文中に登場人物する文学作品も合わせて読みたくなった。

  • 熊井さんの本を初めて手に取ったのは、小学生の頃。友人が持っていた、ポプリのつくりかたの本をまねして買ったものだった。とてもわかりやすく、それでいて子ども用にレベルを下げているわけではなくて、それぞれの香りの原料の由来から、香料会社や種苗会社への「資料請求の手紙の書き方」など、「小さな大人へ書いた本」という、とてもきちんとした本だった。

    熊井さんの紹介する、合成香料を使わない本場のポプリや香りアイテムのレシピを見て、いくつか作ったりもした。『赤毛のアン』に出てくる、ポマンダーも作った。でも、私は『赤毛のアン』を全く読んだことがないし、ポマンダーも、マリラが作った(らしい)ようにうまくいかなかった。

    ポプリ作りからは遠のいてしまったけれど、旧約聖書の『ソロモンの雅歌』、コレットにノヴァーリス、深尾須磨子、堀口大學…と、熊井明子さんのエッセイで知った作品・作家は多い。でも、見たこともないウビガンの香水に憧れ、「コレットはスミレの香りの香水が好きだった」などと知ったかぶりする小学生は、大人からみても、子どもからみても、可愛くない、絶対。

    この本も、旧版を読んだ記憶がある。どれもそう長くなく、押しつけがましくない品よい筆致で、香りと詩歌、映画、本の話題がちりばめられている。ぱらぱらとページをめくったら、覚えている章がかなりあって驚いた。香りを作るには、「イリスの根」という香料を、香りを長持ちさせるための保留剤として使うんだけど(これも熊井さん仕込みの知識)、それと同じで、持続性のある穏やかで芳しい文章なのだと思う。

    「小さなトランク一個もって、古びたマントを着て、ヒースの花のさく原野を歩いていく…ヒースの花の色の、少し色あせたお気にいりのフェルトの帽子をかぶって。(15ページ)」…このイメージ、いいなあ。

    • Pipo@ひねもす縁側さん
      花鳥風月さん:

      わたせ装丁の角川版『こころ』は、今見るとすっごく微妙ですよ~。さっき本棚から出してみたところ、ちょっと恥ずかしさが…男性の...
      花鳥風月さん:

      わたせ装丁の角川版『こころ』は、今見るとすっごく微妙ですよ~。さっき本棚から出してみたところ、ちょっと恥ずかしさが…男性の夏もの三つ揃いのシルエット、バブルやろ!とか(笑)。『文鳥・夢十夜・永日小品』は、人物が出てこない、窓辺の文机だけのイラストなので、風情もあっていいんですけどね。

      角川文庫のかまわぬコラボは素敵ですよね。新潮文庫の1色ソリッドのカバーも素敵ですが、なんだか傷がついちゃうのがもったいなくて。美本マニアじゃないけど、ちょっとためらうところもあります。
      2012/07/14
    • 花鳥風月さん
      やはり微妙でしたか。バブル(笑)

      > 傷がついちゃうのがもったいない
      まさにおっしゃる通りで…

      去年新潮スペシャルカバーの『夜のミッキー...
      やはり微妙でしたか。バブル(笑)

      > 傷がついちゃうのがもったいない
      まさにおっしゃる通りで…

      去年新潮スペシャルカバーの『夜のミッキー・マウス』を買ったのですが、何かの拍子にカバーの上のほうがはがれたような感じ(? 上手く言えないのですが…)になって、「あれ? どうしちゃったの君?」という残念な雰囲気にそういえばなってます(笑)
      2012/07/15
    • Pipo@ひねもす縁側さん
      >残念な感じ

      文庫本って、読み捨て前提で作られているとは思うんですけど、やっぱりそこは残念ですよね。

      私が「当たり!」と思って持っている...
      >残念な感じ

      文庫本って、読み捨て前提で作られているとは思うんですけど、やっぱりそこは残念ですよね。

      私が「当たり!」と思って持っている文庫本は、数年前の集英社文庫『星の王子さま』『絵のない絵本』『不思議の国のアリス』のタータンチェック柄カバーです。コンテンツ関係なしに、柄だけでばばっと大人買いしてしまいましたから!
      2012/07/15
  • 日本にポプリを広め伝えた、熊井明子さんのエッセイ。
    読んでいると、夢ばかり見ていた少女を懐かしく思い出します。
    大人になっても、こんな気持ちを保ち続けることができるのは素敵。
    梨木果歩さんが解説を書いてらっしゃいます。

  • いい雰囲気の昭和の香りがするエッセイ。ポプリっていう言葉だけで昭和を感じるのは私だけ?
    優しそうな人柄の熊井さん。でも、時々毒がを吐いちゃうのがいい。

  • やわらかく端整な文章で綴られる四季折々の生活のあれこれ。そこには著者自身や著者の周りの人々の悲しみもよろこびも絶妙なバランスで配合されており、この本自体が良い香りのするポプリのプレゼントのよう。こんな素晴らしい本を今まで知らなかったことを後悔した。ベニシアさんの番組や随筆が好きな方はぜひ必読です。初版が昭和51年と40年以上前の本なのに少しも古さを感じない。お気に入りのアロマやお香などを焚いて読みたい一冊。芳香豊かな文章が最高。

  • 「私の部屋」、「生活の絵本」ともに、時代の数歩先を行く雑誌だった。
    かといって、かっとんでいるわけではなく。
    当時の私は、内容はわからなくても、熊井明子さんのポプリと高柳佐知子さんのイラストの上質さは理解できた。
    捨てられない雑誌だった。
    この本にも書かれていたが、雑誌「セブンティーン」に、”何をしましょうか?”という特集があった頃。
    その提案が、韻を踏んでいて、リズムがある言葉で。
    ティーン向けにも、毎日を楽しく暮らす工夫が大切にされた時代。

    熊井さんが、新婚まもないころに挑戦した英検1級の受験のエピソード、こんなところが、今でも読み返したい、大切にしたい文章だと思える所以。
    そして、間接的でも、日々の生活が役に立ったと言う、その暮らし方も熊井さんだからこそ。

    熊井さんがつけていた、”映画ノオト”はポプリのような楽しい本になりそう。

  • 一生の宝物になるような、そんな素敵なエッセイでした。 ふうわりと軽やかでのびのびしており、少女らしい可愛らしさと、大人の女性らしい気品がある文章でした。

  • 中山庸子さんの本で紹介されていたので読んでみた。春のポプリ、夏のポプリ、秋のポプリ、冬のポプリ、季節の話と傷心旅行の話と書かれている。季節の中で夏が一番明るくて好き。でもそれぞれ面白かった。

  • 親友にプレゼントしたくなる本でした。
    日々楽しく、幸せに生活するためのエッセンス。
    私たちの好きな、『ハッピーサプライズ』の話もあって、ちょっと嬉しい一冊。

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著者プロフィール

作家。長野県松本生まれ。信州大学教育学部(松本分校)修了。映画監督である熊井啓と結婚。長年ポプリの研究につとめ、ハーブにも造詣が深い。愛猫家としても知られている。1999年『シェイクスピアの香り』などの著作活動について、「シェイクスピアの魅力を新たな角度から探求した業績を評価して」第7回山本安英賞を受賞。著書に『シェイクスピアの妻』『香りの力』『めぐりあい ――映画に生きた熊井啓との46年』(いずれも春秋社)、『シェイクスピアの香り』(東京書籍)、『愛のポプリ』(講談社)、『今にいきるシェイクスピア』(千早書房)、『「赤毛のアン」の人生ノート』(岩波現代文庫)、『ポプリテラピー』(河出書房新社)ほか多数。

「2021年 『いくつになっても、ラ・ヴィアン・ローズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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