完本 酔郷譚 (河出文庫)

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著者 : 倉橋由美子
  • 河出書房新社 (2012年5月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411484

完本 酔郷譚 (河出文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 私にとって、初の倉橋由美子作品。

    すごいとは思ったが、一冊の本として読むとどうにも抵抗の方を強く感じてしまった。アンソロジーなどで、この本に収録されているうちの1、2編を取り上げられて読んでいたら、また違った印象を抱いたかもしれない。

    享楽を甘美に味わうというのは才能が必要だと思うし、実際この本の登場人物たちは次々と訪れ、また自分から赴いていく様々な「怪異」や「異郷」をとてもすんなりと味わっているように思う。その手腕は、できることなら私だっておこぼれが欲しいくらいだ。
    しかし、私はそこに、どうしても抵抗を感じてしまうのである。それでいいのか? と思ってしまうのである。

    苦しみのない世界なんて、そんなの生きているとは言えない、だとか。あるいは、こういう方々とは身分が違う、やっぱり自分は庶民なのね、だとか。そう言ってしまうのは簡単かもしれない。けれど、それだけでもないと思う。
    私がこの本を読んで思うのは、つまり、彼ら(この本の登場人物たちの、たぶんほとんどです)は、こういう生活をしていて、「自分が誰なのか」わからなくなりはしないのだろうか? ということだ。

    誰にでもなれる、どこへでも行ける、というのは素敵なことだけれど、一方で、とてつもなく恐ろしいことだとも思う。
    私はこの本に、そんなことを考えたのかもしれない。

  • 『大人のための残酷童話』以来だから、驚くほど久しぶりに倉橋作品を手に取りました。最後の倉橋作品で、しかも「完本」と銘打たれたタイトル。どんな作品なんだ?と開きました。

    メインタイトルだけでなく、目次に並んだ各章のタイトルが美しい。それらよりもさらに高雅な言い回しでつづられるのは、主人公が酔うて彷徨う世界の物語。小道具は連載誌のジャンルにつながって、「なるほどなるほど」な感じ。物語の枠も、倉橋作品じゃなくても割と多く見られるパターンだと思う。

    でも、今の大多数の作家さんが書いたら、全編を通じての、一枚かすみのかかった幻想的な浮遊感が出ずに、いたずらにナマなぐちゃどろが強調されてしまうかもしれない。そこを見事にかわしてしまうのは、主人公らが身につけ披露する王朝文学や西洋古典、それに漢籍の素養だと思う。そういった方面にたけた人物を評する、「文墨のたしなみがある」という言い回しが、登場人物のひとりに使われるけれど、それは結局、登場人物の皆が持っており、しかも物語自体を支配している。李白に于武陵、式子内親王…自分にそういう各界古典の素養がないことに恥ずかしくなっちゃう(苦笑)。だから、何が起こってもヘンに生々しくないし、身もふたもなくいえば、全編「昼酒で酔っぱらってやりたい放題して、はっと我に返った」、このご都合のいい物語を、すごく格調高くたおやかに引っぱっているようにも思う。逆に、物語に今風要素を加えようとしたのか、ときどき唐突にカタカナ語が登場するのが、ちょっと座りが悪いと感じた部分もあった。

    『桜花変化』の白っぽい桜色の世界の典雅さや、『髑髏小町』の設定のコミカルさをはじめ、どの章もいろんなバリエーションで楽しめて素敵だと思ったけど、個人的には『海市遊宴』のプラトニックさが一番好みかも。

    ひとつひとつの短編の分量が短くて、ある意味濃ゆい物語がさらりと切り上げられるので、悪酔いすることもなく、いい感じの酔い心地で読み終わりました。満足満足…と、この☆の数。

    ・読んでいる最中に気づいたのだが、典雅な語彙と運びが、以前読んだ長野まゆみ『左近の桜』とよく似ている。『左近―』がこの作品の雰囲気をなぞっていると考えても不思議はないと思うから、もう一度、開いて読み比べてみようかな。

  •  22編からなる連作短編集。
     1~15編までは別の短編集「よもつひらさか往還」で既読。
     つまり本書は「よもつひらさか往還」の完本ということになる。
     感想はその「よもつひらさか往還」を読んだ時と殆ど変らない。
     今回は「九鬼さん」以外に「九鬼さん」のバーテンダーの弟子にあたる「久実さん」が登場する。
     それにしても、本書の主人公である「慧君」は色々な女性と交わる。
     捉え方次第では、大人の男性のための御伽噺的な印象もある。
     和歌や漢詩などの知識があれば、もっと楽しめるのかもしれないが、そんな知識がなくても、この古風で幽玄な世界は充分に楽しめることが出来る。
     ただ、ここで描かれている割とオープンな性(不倫や近親相姦に近い内容もあり)に関しては、反感を覚える人もいるだろうなぁ。

  • よもつひらさか+α。
    よもつひらさかを読んだのがだいぶ前だったので、再読でも大いに酩酊させられました。
    不思議とねっちりしすぎない描写なので、心地よく読み終えました。

  • 基本的どの篇もパターンが同じなので少しずつゆっくりと読むのがいいでしょう。ハイクラスの青年が魔酒に導かれ幽玄な異界に赴き淫蕩にふける‥といった趣きは源氏物語を彷彿とさせます。初期作品ほどの感銘は受けませんが、熟した倉橋由美子もまた格別な味わいです。妖しく上質な酔い心地でございます。反動で安酒を呑んで悪酔いしたくなりました。

  • これは夜寝る前に一話ずつ読むのがいいと思う。何か飲みながら。

  • サントリーの雑誌に不定期連載されていたらしい。1編10ページ程度の短編集。風呂に入る習慣をつけるために入浴中に1編ずつ読んでいた。
    九鬼さんというバーテンにオリジナルカクテルを作ってもらって、それを飲んだ主人公がトリップした先で様々な美女と交わるという短編。和歌とか古典の引用がちょいちょい出てきていい感じ。
    「髑髏小町」「臨湖亭奇譚」「芒が原逍遥」が特に好きでした。
    髑髏さん、かわいい。

  • 6/20 読了。
    2013年上半期に読んだ小説ベスト3に入る。すき!

  • 。「髑髏小町」が一番好き。小野小町の逆再生。それと通じ合うとは、まさに倒錯の極み。あと、「黒い雨の夜」。

  • 久々の一冊。ほかの作品も読める形でといいたいが、難しいだろう。

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完本 酔郷譚 (河出文庫)の作品紹介

孤高の文学者・倉橋由美子が遺した最後の連作短編集『よもつひらさか往還』と『酔郷譚』が完本になって初登場。主人公の慧君があの世とこの世を往還し、夢幻の世界で歓を尽くす。

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