一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411774

感想・レビュー・書評

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  • アレクセイの持つ
    正体不明の存在を認めた上で
    その正体を追求せずに隣にいることのできる強さ。
    それは弱さと共存した強さで、
    純粋であるが故に狂気を孕んでいる。
    アレクセイが聖なる愚か者であるのは
    一度選ばれた存在になれたからであるような気もする。
    だからこそ多数から選ばれることも無意味さや無情さを感じて、一方で唯一の人から選ばれることの難しさがわかっているのかもしれない。

  • タイトルがめちゃくちゃ好き。聖書の二次創作とか読んだことないもはやすごいニッチな同人誌の世界…これが商業でも受け入れられるんだ〜とちょっと、勇気が出た…受け入れられるには筆力はもちろん必要だけど!

    『レギオンの花嫁』全く意味わからんくてでも一文一文は別に難しいこともないので読むのは読むんだけどなにを読んでるのかは全くわからなくてそれが面白かった。わたしの方の土台に何があったらあれを理解できたんだろう…何が必要なんだろうあれを理解するためには…

  • 標題作は、聖書をモチーフにした連作短編5作から成っています。いったいどういう背景があってこんなことになってるのかとWikiで作者のことを調べたら、ロシア文学に傾倒してそこから正教会に入信しちゃったという経歴のある方のようで、なるほど、聖書に詳しいわけだ、と納得。

    最初の「天・地・チョコレート」なんかは、失楽園のお話で、バレンタインのチョコレートを林檎の実(禁断の果実)になぞらえ、例えば「ニシキさん」なんて名前の嫌われ者の子は「蛇」を表しているのだろうし、比較的元ネタがわかりやすかったんじゃないかと思いましたが、基本的には聖書に免疫のない人には、理解不可能な世界だろうなとは思いました。これは「聖書の文体」で書かれた、「聖書のパロディ」なんですよね。独特の変な言い回しが、聖書の文体だと知っていれば笑えるけれども、そうじゃない人は困惑するだけかも。(私個人でいえば、信仰心はゼロながら物語としての聖書は好きで、一般に普及してる新訳と、旧約もめぼしいものは読んでるので、大体の感じは掴めました)。連作ラストの表題作のみは、ちょっと現実の生活感があるストーリーぽかったかな(まあ難解は難解ですけど)。

    同時収録の中編「レギオンの花嫁」は、さらに輪をかけて難解。これもある程度聖書の基礎知識がないと、暗喩の意味がわからないどころか、暗喩が暗喩であることにさえ気づけない。わかりやすいところでバベルの塔のエピソードが土台になっていると思われますが、他の細かいことは作者本人にしか(もしかしたら作者でさえ)わからないでしょうねえ。ただ、だから意味がわからなくて読めないかというとそういうこともなくて、いちいち「これは何の寓意だろう」とか深読みしなくても、表層的に文字だけを追っていても十分面白くは読めると個人的には思いました。作中に、マザーグースっぽい残酷な童謡みたいなのも出てきますが、マザーグースの歌詞なんかも意味がわからなくても面白く読めてしまうので、それに近い感じ。きっと何かを暗示したり象徴したりしているんだろうなあと薄っすら思うものの、それが何かがわからなくても別にいいやと思って、流し読みしても別にいいんじゃないかなあ。あるときひょこっと何かの拍子に、すとん、と腑に落ちることがあるのかもしれません。

  • 女性の作者は、主人公が女性の特に学生であれば、周囲の騒がしい人と一線を引いて、三者から見れば孤立しているような、そんな人物を描いている場合が多い。表題作である「一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する」に含まれる連作短編集もその例に沿った物語に過ぎない。ただ、他作と比べた場合、本作は旧約聖書や女学校を下地に構想したファンシーなものとなっている。最も、その内容が自分には受け入れなれなかったため、良い印象は残らなかった。バレンタインについて、メリーゴーラウンドについて、クラスメイトについて、この物語の中にはその世界のルールがあって、そのルールに倣ったオリジナルな物語は、基準というのがないため、ある意味で言えば評価のしようがない。
    かえって「レギオンの花嫁」が自分にとっては、こちらも旧約聖書が下地となっており、その影響の度合いも強く色濃い物語になっているが、まだ味わいがあった。
    正直どちらもワケの分からない物語だった。文章もヨーロッパ圏の小説を邦文に翻訳したように人物の名前が頻繁に出てきた。とにかく、自分にとっては面白くもなんともなかった。

  • 最初の方はあまり面白いと思わなかった。しかし、表題作の「一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する」で、「こういう意外性、好き!」と感じた。「レギオンの花嫁」は、ひきこまれた。面白かった。

  • 聖書の内容を聞きかじり程度にしか知らないがうすら知っているだけでもなんとなく、頭に内容が入ってくる。

  • 単行本『一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する』、『レギオンの花嫁』の合本。

    前半の短篇連作は、いかにも聖書のパロディで、鹿島田作品らしいのだけれど、初期作品だからか尚更筆者の根源的な部分がモロに出ていて、まあ悪く言えば読みにくい。最近の作品はかなり読みやすくなってるんだなあ。作者の魅力であるなんかこいつは何言ってんだこんなこと現実に言うヤツいないだろ的な会話とかは、面白いには面白かったけどね。しかしやはりある程度聖書の知識が無いと楽しめないんだろうなあー。そのうちに再読したいなあと思った。
    後半「レギオンの花嫁」。ダメだ。さっぱり分からない。こちらは読み返すのもつらそうだ…。

  • ヴィレッジヴァンガードで見つけた。いつか買って読みたい。

  • 先生が「はじめに教壇あれ」と言うと教壇が出来た。
    学級委員のあばら骨から副委員長が生まれた。
    バレンタインのチョコレートが喉につかえて喉仏になった。
    聖書と学校生活の不思議な融合。展開が読めず、とてもドキドキする小説。

  • 前半5作はともかく、レギオンの花嫁は何の話をしているのか分からない。
    数ページ読み飛ばしても、読み飛ばしたことに気づかないだろう。
    表層的にも分からない。


    前半5作は、少女達と一人の少年の話。主人公は、分かりやすく、一歩引いた少女。

    聖書のパロだが、いやらしさがない。好感が持てる

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著者プロフィール

1976年生まれ。1999年、「二匹」で第35回文藝賞を受賞しデビュー。2004年、『白バラ四姉妹殺人事件』で第17回三島由紀夫賞候補、2005年『六〇〇〇度の愛』で三島由紀夫賞受賞。2006年「ナンバーワン・コンストラクション」で第135回芥川賞候補。2007年『ピカルディーの三度』で野間文芸新人賞受賞。2009年「女の庭」で第140回芥川賞候補、『ゼロの王国』で第5回絲山賞を受賞。2010年『その暁のぬるさ』で第143回芥川賞候補。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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