服は何故音楽を必要とするのか? ---「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽たちについての考察 (河出文庫 き 3-5)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411927

作品紹介・あらすじ

パリ、ミラノ、トウキョウのファッション・ショーを、各メゾンのショーで流れる音楽=「ウォーキング・ミュージック」の観点から構造分析する、まったく新しいファッション批評。文庫化に際し、「パリコレ」取材以後の一年半分を増補。パリモードとブラックカルチャーの接近、そしてその後の(エレガントな)闘争に至るまでを描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙買いの1冊。このフェティッシュな感じはヘルムート・ニュートンかと思ったらちょっと違って、ホルスト・P・ホルストだったけど。

    モード系雑誌で連載された連載をまとめたコラム集。パリコレその他のメジャーなファッションショーの映像とショーに使われた音楽について、菊地さんが自由闊達にべらべらと語りだす。サブタイトルで指摘されているとおり、ノリノリのクラブミュージックをBGMにしながらも、コレクションのモデルというのはきわめて機械的な歩調で歩いていくことに、菊地さんはある種のパラドックスを見出して、持てる限りの偏愛を繰り出して語っておられる。お洋服への愛も語りながら、限られた人が見られるエンタテインメントとしてファッションショーをとらえておられる感触。個人的には、ファッションショーの音楽はないよりあるほうが場がもつし、ショー全体のクリエイションもさることながら、やっぱり服を見せて買ってもらいたいのがデザイナー魂じゃないのかなあ?と思っていたので、そこまで深く考えたことはなかった。

    私自身結構お洋服好きなので、取り上げられているブランドの路線というのはそこそこわかるんだけど、細かいところはネットでショーの映像をピックアップしながら読んでいた。ショーの出来についてはなかなか辛辣なコメントもあって、妙に納得することも多かったけど、ところどころで菊地さんが指摘される「ゲイ美学」のようなものについては、ちょっと考えたことはなかった。業界には明らかにゲイだと思われる立ち居振る舞いのかたも多いから、ないわけではないだろうとは思っていたけど、マニッシュであってもゴツくない作風には、そういわれると納得する面もそこそこあるようには感じた。今度はそこをメインにファッション雑誌をめくってみよう(そこか)。

    文章で読むというよりも、コレクションの映像をスクリーンに映して、そのかたわらで菊地さんが饒舌にプレゼンするというイメージのほうが近いように思う。菊地さんの文章は他のエッセイにも共通して、饒舌で語りすぎにも思える情報量の多さだから、すべてについていくのはちょっと大変に感じる面も多い。だから、正直な話、途中で話題についていこうとは考えずに、「はいはいはいすごいなー」と、怒濤のような口調を楽しむことに切り替えてもいいのかなと思う。100%真剣に読むと、情報量その他もろもろで敗北感まみれになるので、上手くコントロールして読んだほうがいいですよ。半年くらいの間に、何度も放り出しかけた私が言うのもなんですが。

  • 洋服には頓着しないのにファッションショーの映像をみることは好きなことについて考える。

    そらまあテレビ東京系でやってた(違うわ、今もやってるみたいね)、「ファッション通信」みるの好きやったからね、ずーっと意味もなく目的もなくみてたよね。だから全くファッションのことは詳しくならなかった。で、こんなタイトルの本あるって知ってたら買うよね、普通(まあ文庫化されるまで待ったわけですが)。書いたのは菊池成孔はんやからね、まあなんだっちゃ面白いんやろうけれど。で。読んでみたら期待を裏切らず、脳内ナレーションはずっと大内順子。文体もきっと、いや間違いなく意識してらっしゃいますよね。いいです。グッドです。それだけで十分です。ああ、いや、内容も、なんでわたしが昔ずーっとテレビ番組の「ファッション通信」みてたのかの理由について(いやお前の、は知らんがな、でしょうけど)興味深い考察が目白押しであり、勉強になります。ってこんな感じでいいのかしら。もういいわよね。

  • ファッションのこと自分はまだまだ全然、知らないんだなと気付かされ続けた一冊。次々登場するブランド名がぱっとイメージ出来なかったので、もっと詳しくなりたいと思った。
    著者の方がファッション関係者ではなく音楽の方なので、音楽についての記述が多くて、音色と服の色との関係性や、ウォーキングミュージックという概念。沢山 勉強になりました

  • ハイモードブランドのコレクションについて、音楽家の視点から服と音楽の共振について批評を行う実験的な本。

  • 私の十年来大好きなスパンクハッピーが表現していた世界観の一端を感じられました。
    あー、こーゆーことだったのか、って。

    エレガンスに共存するエロティシズムの抑制。
    その甘美な世界は、私をずっと悩ませます。

  • ファッションショーで流れる音楽を、服やモデルとの関係から、新たなジャンル「ウォーキングミュージック」として考察した一冊。
    メゾンブランドを扱っているので、それに伴う言葉もなんだかブルジョワジーで、ナルシストな匂いすら感じる。そこに共感なんぞ出来なかったのだけれど、それとは別にそもそもショーの映像を見ながらでないと、理解しきれない前提があるような。
    ウォーキングミュージックという概念については前半で関係性や面白さがしっかりと考察されていて、あとはショーを見ないとなんとも…な内容であった。

  • 難解…読むの放棄。菊池さんてサックスだけじゃないんだーという驚きとファッションショーに対する敬愛が印象的。ショーの映像を流しながら講義してもらえたらちょっとは理解できるかな

  • ファッション・ショーで流される音楽は、踊りを誘発するハウスミュージックが多いのにも関わらず、モデルはその誘発に乗らず、独自のステップで歩かざるを得ない。その関係性から生まれる禁欲がファッション・ショーに独自のエレガンスをもたらしているのではないか?、との仮説に基づき、パリ・ミラノ・東京の三都市におけるショーをひたする分析する。

    音楽+モードということで、扱う題材が広いため、相変わらずの過剰なまでの情報量は見事。モードってけっこう面白いんだな、という気にさせられた一冊。

  •  一冊を通して続く躁状態の文体と、聞き慣れないファッション界用語で読み辛さは否めない。ただ、同時期に行われていた講義のまとめである『アフロディズニー』の補完しあう関係にあるので、そちらが既読であればすらすらと読めるだろう。ビュロー菊地のメルマガ等でも書かれているように、菊地自身がパリコレに赴き、インタビューを慣行している後半が素晴らしく、この後半と前書きとあとがきだけでも読む価値はある。
     この本は『アフロディズニー』『M/D』と並べて読まれるべき本である。それによって「ジャズとファッションにおけるモードとは?」という問題が「ウォーキング・ミュージックの禁則性」を媒介に視界が広くなるはずだ。

  • 菊地さんの本はいつも現代思想書といて読んでいて、それは他の誰よりもジジェクよりも東浩紀よりも断然そうで、いくら学術的概念やジャーゴンは持ち出さないと言っても、デザイナーやミュージシャンの散りばめられたら名称が、それじたいシンボル化されてすでに凄まじい現代思想なのである。
    ファッションショーという摩天楼の最上層にのみ存在する(らしい)幻想の世界の空流を埋めつくすサウンドと天使たちの歩行の関係とは何か。
    これはやっぱり時間論でありエロス論である、ということは哲学史上の最重要課題への取り組みなのだ。
    菊地さんを聴くたびに、読むたびに浮かんで来るのは夜の都会の曳光だ。これはやっぱり思想である。

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著者プロフィール

ジャズ・ミュージシャン/文筆業。

「2016年 『ロバート・グラスパーをきっかけに考える、“今ジャズ”の構造分析と批評(への批評)とディスクガイド(仮』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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