椿の海の記 (河出文庫)

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著者 : 石牟礼道子
  • 河出書房新社 (2013年4月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412139

椿の海の記 (河出文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 著者が、まだ不思議の世界の中に
    いた時代…いわゆる幼児の時代の作品です。

    子どもだから…
    ということは決して通用しないということが
    この作品の端々に出てきます。

    その中には大人が言う
    決して子どもの耳に入れてはいけないこと
    も含まれています。
    本来は耳には決して入れてはいけないものなのです。
    ですが、穢れ多き大人たちはその禁を平気で犯します。

    ただ、みっちんはいい親を持ちましたね。
    決してそのことをまねしてはいけないという
    母親に恵まれましたので。

    最後はどこか神々しいものがありました。
    おもかさまはもともとはひたむきで
    優しい人だったに違いありません。
    ただし、最愛の息子の死が
    全てを変えてしまいましたね…

  • 時代も場所も異なっているのに、何故だかふたりの祖母と過ごした時間を想い出させてくれる。私も沢山語ってもらっていたんだな、と思う。

  • 「わしゃ土方で、破れ着物を着て、兵隊検査には、ごらんの通り、珠算玉のごたる肋骨しとるけん、通してはもらえんじゃったが、赤心だけは、忠義の心だけは誰にも劣らずあっぱれじゃと、軀が惜しいと、検査官の云わしたです。頭も惜しかと、惜しか頭じゃと、検査官と云わしたです。わしげのばばさまが、陛下さまに危害をするような人か、わしげの家がそういう家か」
    昭和六年、日本窒素水俣工場に「天皇陛下さまが行幸のあいだ、不敬この上ないので、本町内の浮浪者、挙動不審者、精神異常者は、ひとりもあまさず、恋路島に隔離の措置」につき、祖母おもかさまを引っ立てようと家に訪ねてきた巡査に対して、切腹せんと父亀太郎が切った啖呵が、なぜ一番心に残るのか、わからない。ほかにも、「十六女郎」や「往還道」など、せつなくうつくしい話はたくさんあるのに。
    弱者をそのなかに抱え込んだ家族が、どうしたら歪まずにすむか、という答えが、そこに見いだせるように思うからかもしれない。

    OPACへ⇒https://www.opac.lib.tmu.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB02205104&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 神話的世界が色濃く残る水俣。
    その地に生きるすべてのものを育んできた豊かな自然と、大人たちの会話やしぐさから映し出される世間が、4歳のみっちんのこころに深く刻まれていく。
    脳に支障をきたし盲目の祖母が“神経殿”とか“めくらさま”と呼ばれている。決して差別がなかったわけではないが、身近な人びとが敬称をつけて祖母をいたわっていたことが印象に残った。

  • 一語一語に宿る深く尊い魂を噛み締め読み溺れる。4才のみっちんが生きとし生けるもの、あの世の魑魅魍魎まで絡げて戯れ世界と対話する。土地の神様がちゃんとみっちんの声を深く眠る死霊にまで届けてくれる。地に耳あてればあの世の魂もちゃんと答えてくれる。自然と共生する人々の汗が水俣の風景にキラキラ光る。『苦海浄土』を読んで、ただ憤り悲しみ書き上げただけでない、行間から溢れて収まりきれない何かを感じた。ここに下地があったのだ。その世界が瓦解した時、みっちんは絶望の果て怨鬼となり今日までずっと歌い続ける。魂のうたうたう。

  • 静かな森の中とかでゆっくりじっくり読みたい一冊。素晴らしかった。

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椿の海の記 (河出文庫)の作品紹介

はだしで盲目で、心もおかしくなって、さまよってゆくおもかさま。四歳のみっちんは、その手をしっかりと握り、甘やかな記憶の海を漂う。失われてしまったふるさと水俣の豊饒な風景、「水銀漬」にされて「生き埋め」にされた壮大な魂の世界が、いま甦る。『苦海浄土』の著者の卓越した叙情性、類い希な表現力が溢れる傑作。

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