鬼の詩/生きいそぎの記 ---藤本義一傑作選 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412160

作品紹介・あらすじ

二〇一二年に惜しまれて亡くなった稀才の代表的傑作集。鬼気迫る落語家の魂を描いて直木賞受賞の「鬼の詩」、師に"追随"する漫才師を描く「贋芸人抄」、三味線の天才娘の悲劇「下座地獄」、運命の師、映画監督川島雄三との決定的な体験を描いた「生きいそぎの記」と講演。その後の作家の姿がここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 藤本義一が亡くなった後、直木賞作品を含めた4編が文庫化されていたようです。

    「鬼の詩」
    大阪の落語家、桂馬喬(モデル桂米喬)の執念とも思えるグロテスクな芸を突き詰める生涯を。
    「贋芸人抄」
    師匠の後を追う漫才師
    「下座地獄」三味線の天才。漫才の相方にとその才能を認められるも、コンビを切られた後、下座に落ち、芸と共に身も崩す。

    「生きいそぎの記」
    映画監督川島雄三に 脚本助手としてその後脚本家として映画制作に関わっていた頃の経験。かなり破天荒型の監督を支えていたようだ。川島さんは、筋萎縮性側索硬化症に侵されながら、「重喜劇」と呼ばれる作品を発表し続けた。心酔しながらも、その生き方に恐れを感じていたように感じる。

    いずれも、文芸に比類のない才能を持ちながら、その世界に生き続ける為なのか、息苦しい芸人の生き方。藤本さんの目指した小説も「重喜劇」なのかと思う。

  • 1974年の直木賞受賞作品「鬼の詩」ほか全5篇の作品集。壊れているのになぜか愛らしい噺ばかり。面白かった。

  • 市原悦子さん主演でドラマ化された「女橋」(再放送)が壮絶すぎて、あの藤本義一さんがどんなお話を書かれるのか気になり…

    「鬼の詩」は直木賞受賞作品なのだが、まぁ凄絶。桂馬喬という落語家の生涯を描いたもので、「なんの面白みもない陰気な常識人」であったが、異常なまでの愛と執着をもって芸風を改める。が、最愛の妻に早逝され、孤独の中その狂気は膨れ上がり、それがまた芸に…この狂気の笑い、ぞっとする。(二代目米喬という実在したモデルがいるようです)

    映画監督 川島雄三を描いた「生きいそぎの記」、師匠の代わりとして演じるうちに精神的に追い込まれていく芸人とその妻を描く「贋芸人抄」、下座の三味線弾きが惚れた男の誘いで万歳をする「下座地獄」。どれも激しく悲壮な人生で、読んでいるだけで体力使った…

  • 藤本義一の直木賞受賞作。
    絶版なので本屋では手に入らない。
    というか、義一の作品はほとんどが絶版だ。
    昭和の流行作家の末路なのだろうか?

    だが、この作品はずっと気になっていた。
    ふと入ってみた遠くの図書館の片隅にあったので手に取って読んだ。
    ふむ、すごい。
    「破滅型芸人」の生き様をえぐるように書き切っている。

  • ★3.5。
    あんまり作家としてのこのお方を知りませんでしたが、結構濃厚な文章を書くお人ですなぁ。関西弁も良い意味でも悪い意味でもそのしつこさが書き言葉として表現されているかと。
    ただ、題材が全部キワモノとも言えなくもなく、これでは長く持たないなとは思いましたわ。解説でテレビ云々で不当な評価を受けているとの指摘がありますが、そうではなくこの濃度を世は受け入れらなくなっていった、作家自身も維持できなくなった、両方に因があったのかと思われ。

  • テレビでの司会者で、様々な知識、エロな話題も生真面目にさらっとやれる粋なおっさんだったが、小説を読んだのはこの本がはじめてだった。実に、面白い。よく人間を見ている。ちょっと、優し過ぎるのが、作家としては凄みがもう一つ出なかったのかもしれない。でも、素晴らしい短編集。

  • 久しぶりに心がヒリヒリする本を読んだ。また読み返す予定。

  • 「生きいそぎの記」ではううう、とふたりの男の生き様に唸り、「鬼の詩」ではウグッと吐きそうになった…壮絶。芸人たるもの。

  • 映画、落語、漫才、下座三味線‥‥。大阪を舞台に大阪弁で小説を書くと、何でこんなに濃厚な文章になるのかなぁ。好き嫌いは別れると思いますが、わたしはとても面白く読みました。文章に力があって、ほとばしる才能を感じます。他の小説も読んでみたい。

  • 藤本義一 さんの作品集。
    やはり、川島雄三との出会い、共同仕事、そして最後が
    壮絶でもありユーモラスだ。

    他の収録作の桂馬喬についての一作。
    憐みを誘う芸がエキサイトして、客から馬糞をもらってそれを
    喰ってしまうところ。
    さらには電球をなめる、最後は自分の痘痕にきせるを36本
    突っ込んでそのまま走り去って死んでいく、なんて話。
    これは完全にホラーの世界だ。と、思っていたらこの「鬼の詩」が
    直木賞受賞作だとは!
    全く今とは異なる基準、つくづく今の直木賞はお祭りだなと感じました。

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