島田雅彦芥川賞落選作全集 上 (河出文庫)

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著者 : 島田雅彦
  • 河出書房新社 (2013年6月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412221

島田雅彦芥川賞落選作全集 上 (河出文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「優しいサヨクのための嬉遊曲」
    愛する女の向こうに敵がいて
    愛する女のためにそいつと和解する
    ラブアンドピース、しかしそれによって押し殺された感情もあり
    いつかゾンビのようによみがえってくるのかもしれない
    その不安が、プロレタリアへの嫌悪ともなる

    「亡命旅行者は叫び呟く」
    努力すればかならず報われるという信仰があって
    それゆえに貧乏人への嘲笑が正当性をもっていた時代
    むなしい頑張りでむなしくすり減った人間性を回復させるため
    休暇を利用して女を買おうとソ連に旅立つ日本人の話
    当時の貧乏なモスクワ市民は
    まさしくかつての日本人…エコノミックアニマルの群れだった
    むしろそこに「私」を捨ててきた彼は
    その罪深さを、追いかけてきた「私」に断罪されたあげく
    結局、お茶漬けナショナリズムで癒されるという

    「夢遊王国のための音楽」
    無教養ではないが上昇志向が強く、無駄に気位の高い中流家庭に育ち
    頭がおかしくなりかけている男の子の話
    まだパソコン通信も一般的には認知されてない時代だが
    「秘密結社」という形で、引きこもりの連帯を夢想している

  • 2014/9/24読了。

  • エッジは効いているし、小難しい知性もちりばめてあって、それでいてそんなに読みにくくはない。のだけどいまいち心に響かないのだ。記憶には残るのだろう、その設定の独自さとストーリーの破天荒さによって。でも心には残らない。

    優しいサヨクのための嬉遊曲
    亡命旅行者は叫び呟く
    夢遊王国のための音楽
    の三作の中で見れば、最後の夢遊王国が一番完成度は高く、メッセージ性が明確で、ストーリーも欠片の集いでなくひとつにまとまっていると思う。

    解説が海猫沢めろんさんなんだけど、その解説が最高にすばらしく、この作品群を余すところなく、過評価もせずうまく解説していると思う。
    「今30年前の小説をわざわざ読む価値はあるか、ない!」との断言は同じことを思って読んでいる読者には清清しく、「自意識の問題と日常への倦怠」とするどく作品の意味や根本を一刀両断に言語化する姿はあっぱれというしかない。

    文章のプロってすごい。

  • 数年前に初めて島田作品を読んだ時、
    良くわからなかったというか
    ひたすらの自慰シーンに引いてしまったのは
    私がまだ若かったのかなとも思っていたけど、
    解説を読んで
    そうか、私も
    「悩みすぎておかしなことになっている」側の人になっただけのことか、
    と妙に納得した。

  • なんというか、思い切ったタイトルですよね(笑)。「まえがき」でご本人いわく芥川賞に関しては「最多落選記録(当時)」をお持ちということで。なんともシニカルな。この「まえがき」だけでもかなり面白いです。

    収録作は、上巻「優しいサヨクのための嬉遊曲」「亡命旅行者は叫び呟く」「夢遊王国のための音楽」、下巻「僕は模造人間」「ドンナ・アンナ」「未確認尾行物体」というラインナップ。実は全作品、それぞれ文庫が出たときに読んでいるのですが、いかんせん20年以上前のことで、数度の引越しですでに手許にないもので、これを機に改めて読み直してみるのも良いかなあと。今回の萩尾望都表紙もファンなので嬉しいですが、昔の文庫は、新潮文庫だと確かほとんど金子國義が表紙絵だったので(ヘンリー・ダーガーのもあったっけ)、今になって残しておけばよかったなあとちょっと後悔。福武文庫にいたっては、出版社自体がなくなってしまったし。

    いずれも80年代の作品ですが、不思議と古さを感じなかったです。もちろんその時代の空気を反映してはいるのだろうけれど、主人公たちはいずれもかなり特殊な部類のキャラクターなので、逆にその時代ならでは感が薄いのかも。なんていうか、どんな時代に置いても普遍的に変な人たちなので(笑)。

    サヨクだのロシアだの、政治的思想(飾りにしても)の背景がないせいか、一番共感・理解しやすいのは「夢遊王国のための音楽」かな。病んでる度では、たぶんこれの主人公の雅(みやび)くんがダントツだけど(苦笑)。解説にもあったけれど、最近の作家ならやはり森見登美彦あたりが、この頃の島田雅彦の精神を受け継いでいるのかもしれません。

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島田雅彦芥川賞落選作全集 上 (河出文庫)の作品紹介

デビューからわずか四年で、芥川賞に六回ノミネートされ、六回落選した現・芥川賞選考委員島田雅彦の華麗なる落選の軌跡にして初期傑作集。大学在学中に発表された鮮烈なデビュー作「優しいサヨクのための嬉遊曲」のほか、「亡命旅行者は叫び呟く」「夢遊王国のための音楽」を収録。作家生活三十周年記念企画。

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