言葉の誕生を科学する (河出文庫)

  • 河出書房新社
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412559

感想・レビュー・書評

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  • 小説家・小川洋子さんと、動物行動学者の岡ノ谷一夫さんが言葉の誕生について語る対話本。

    岡ノ谷一夫さんは鳥の歌の構造などから、人間の言語の起源について考える研究などで知られる方で、この本にも動物の行動などからたてた言葉やコミュニケーションの誕生についての仮説が数多く載っており興味深かったです。
    特に、ひな鳥が餌をねだる声は餌をくれないと天敵を呼ぶと脅迫しているという「脅迫仮説」は今まで考えたこともなかったので驚きました。少し調べてみたら、鳥の鮮やかな色の卵も抱卵を促すための脅迫という説もあるそうで、よく出来ているものだなあと……。人間の子どももずいぶん大きな声で泣いたりしますが、起源としては鳥と同じなのかもしれないですね。証明は難しそうですが、想像が広がります。

    小川洋子さんは小説だけではなく対談本などもたくさん出されていますが、相手から言葉を引き出すのが上手でいつも感心してしまいます。
    エッセイなどとも違い、リアルタイムでの適切な反応を求められる分、考えのアウトプットがスムーズにできないと難しいかと思うのですが、自分の考えも、相手の言いたいこともスムーズに言語化できるのは本当に凄いですよね……。仕事柄人の話を聞く機会も多いですが、憧れてしまいます。

    小川洋子さんの別の対談本、臨床心理学者・河合隼雄さんとの『生きるとは、自分の物語をつくること』なんかもおすすめです。

  • 第1部 言葉はいかにして誕生したのか?
    第2部 言葉は何を伝えるか?
    第3部 心はどのように生まれるのか? 
    「はじめに」小川洋子さんが文鳥を飼うことになったキッカケの話から、岡ノ谷一夫先生が「言葉の起源をもとめて」に繋がって本編に進む流れの段階で既にワクワクが止まらない。それにしても、おふたりのやり取りする単語とそれから連想ゲーム的に発展するテーマの多彩なこと!見た目だけで敬遠していたハダカデバネズミにも断然興味が湧いてきた。

  • 「言葉」を通して、コミュニケーションや自己意識、時間などについて考察する。
    読みやすくてあっという間に読んでしまったけど、もう一度あれこれ考えながら時間をかけて読み直したいとも思う。

    後半、小川さんが小説の意義について述べる部分が印象的だった。対談が進むにつれて小川さんの中で想いが広がっていく様子を感じた。「ことり」読み直したいなぁ。

    「言葉を解きほぐす技術がないといけない」という言葉は胸に留めておきたい。何事も一言で片付けない。こうして読んだ本も、「これよかったな〜」とラベリングして終わらせない。

  • いや~面白かったです。全編マーカー引きたいくらい目からウロコがぼろぼろ落ちまくって、どうやって感想書いたらいいかわからないくらい。メインのテーマはもちろんタイトル通り「言葉の誕生」についてなのですが、そこから派生していくどの話題も興味深かったし、中でもいちばん衝撃だったのは「フェルミのパラドックス」の話で、言葉を持ってしまったがゆえに人類は滅亡にむかっているのではないかというのは、すごくわかる気がしました。そしてだからこそ、その中で言葉を使って物語を紡ぐ作家が「なぜ書くか」まで言及された小川さんのスタンスもとても美しい。

  • 面白かった。言葉の起源は「歌」ではないか?まさか小鳥と人間に共通点があるとは思わなかった。
    文系の私でも分かりやすく書かれていてお二人の対談に引き込まれる。
    赤ちゃんや雛の泣き声について、現代のコミュニケーションについてなど、興味深い話がいっぱいだった。


  • 語られる内容はスリリングで興味深く、かつ、人間の存在や世界のあり方の深淵までも覗き込んでしまおうかというようなものでありながら、対談するふたりの語り口がフランクなのでするする読める。発言のそのセンテンス自体が面白く親しみ易い。相槌の妙。

  • 記録

  • 鳥やクジラに見られるような、求愛の時に行われる歌のような声から言語が始まったという仮設は面白と思うし、納得感がある。
    しかし、それなりに長い対談の中で刺激的な話題が他にはあまりなかったのが残念。
    対談というのもは基本的にしゃべったままを記録するものなので、あまり内容が詰まったものにはなりにくいのかな。

    発声というのは本質的には呼吸を制御することであるというのは目から鱗が落ちる思いだった。鳥のように上空を飛んだり、クジラのように海に深く潜ったりするためには、意図的に呼吸を制御する必要があり、その副産物として多彩な歌を歌うことができる。他の動物は無意識的な呼吸のみを行っているのだろう。人間は呼吸を制御できる必要がなかったのに発声を学ぶことができたのが不思議だということ。(59ページあたり)

    あと、コミュニケーションには、コミュニケーションしたいという意図のコミュニケーションと、内容のコミュニケーションに分かれるということ。(99ページあたり)

    答えのない問いに対して考え続けるのは大切なことだと思う。

  • 言葉はどのようにして、うまれたのか。自分にとっても子供の頃からの疑問を、好きな作家さんが脳科学者の方と考察していく様子が、とても興味深かった。歌うのは、鳥とクジラと人間だけ!なんてロマンティックなんでしょう。科学なのに。科学だから?
    デバやジュウシマツに向けるお二人の優しい目線も、読み進めていて温かい気持ちにさせてくれる。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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