王国 (河出文庫 な)

著者 :
  • 河出書房新社
3.44
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本棚登録 : 2128
感想 : 168
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309413600

感想・レビュー・書評

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  • 「掏摸」兄妹編、ということで。作品そのものが兄妹ということなのですね。
    施設で育ち、今は、要人・著名人の弱みを作為的に作り上げる仕事で報酬を得る女性、ユリカ。
    「掏摸」からの登場、木崎。木崎の情報を得るため、彼と対峙しなければならない状況になる。タイトルの王国は、この木崎の王国と捉えていいのかな。ユリカは、自分の運命が木崎の描いたそのものを辿っていることを知る。木崎は、この世界の神のような存在。
    ユリカの生き方が、生に欲望があるように思われないのだけれど、死を前にした時、生に執着を見せる行動が面白い。ギリギリのラインで裏切り、逃亡する。
    なんの話かわからないねえ。把握された運命にあがないきれない不条理?もう少しで、わかりそうなんだけど。
    中村さんは、海外でも人気が高いらしい。本人解説で、「掏摸」の構図は旧約聖書にあり、「王国」は新約聖書からギリシャローマ神話へ接続するといわれても、なかなか、すとんとはわからないねえ。木崎という男が圧倒的な神のような力を持つ悪の存在であること、を受け入れて、把握された運命といった世界観は、一神教の国々の方々に理解されやすいのかなと思いました。
    作者曰く、この作品では、木崎の上位に、月を置いたと。とすると、木崎は預言者なのかもしれない。

    • 土瓶さん
      だめかぁ。「掏摸」と「王国」を本棚で並べて向かい合わせにしたいけど、それも無理っぽいしなー。
      だめかぁ。「掏摸」と「王国」を本棚で並べて向かい合わせにしたいけど、それも無理っぽいしなー。
      2023/06/23
    • おびのりさん
      悪と仮面まで読みまして、面白いと思うんですよ。
      「王国」は、このユリカの女性目線で半ばぐらいまでいくんですよね。私は、そこが掏摸と表現のシャ...
      悪と仮面まで読みまして、面白いと思うんですよ。
      「王国」は、このユリカの女性目線で半ばぐらいまでいくんですよね。私は、そこが掏摸と表現のシャープ感の違いが出てるかもと思うんですよ。
      ですので、男性が読むとその辺りは、受け入れやすくなって、土瓶さんいけるかなと思う。
      悪と仮面も、血筋としての邪とか良いですよ。でももっと邪に徹底してくるかなと思ったりしてたので、あっつ、それは、私の冷徹感が大きすぎるから?普通の冷徹度なら満足するかも。
      中村さんR帝国まで読もうかなと。
      2023/06/28
    • 土瓶さん
      丁寧にありがとうございますm(__)m
      この人、いっぱい賞を獲ってるね。
      自分は「銃」からかな。そのうちに。
      丁寧にありがとうございますm(__)m
      この人、いっぱい賞を獲ってるね。
      自分は「銃」からかな。そのうちに。
      2023/06/28
  • 『掏摸』の主人公が生きてた事が先ず救い。
    あの木崎が人間っぽくなってる事に少しがっかりして少しホッとした。それでもって可笑しかった。
    女性独特のリズムや抗い方に揺らいだのか?まさかとは思うけど。きっとこれもどれも全て掌の上なんだろう。

    描写のせいもあるけど、同作品より『掏摸』の方が好み。

  • #王国 #読了 #中村文則

    まずは中村さんの作品を出版順で読んできて、初めてイマイチだと思った。

    女性目線で書くところは面白いと思って期待してたけど、そこも失敗ポイントだった。女性だと感じるような描写はほぼない。メインキャラクターの作り方、ストーリーのリアル感、テーマ、いずれも掏摸とはレベルが違い過ぎた。

    掏摸が成功し、同じようなのも売れるから早く出せって言われてやっつけで書いた、そんな印象を受けた。もちろん想像だけど。
    具体的にいうのは省略する。

  • こうやって人は二重スパイになるのかぁ。どこまでフィクションか知らないけれど、容姿が優れていても高級クラブで働くべからず、歌舞伎町に近づくべからず。
    とにかく月、月、月推し。

    『掏摸』が好きだったので兄妹編ということでこちらも読んでみたが、掏摸での主人公が出てくるのも一瞬で寂しい。兄妹編というより続編を期待してしまっていた。
    掏摸の方が主人公も文体も好きだった。前作は男性目線で語られるからか、鹿島ユリカよりも淡々と、格調高い。今回は女々しく、漠然と抽象的な思案が目立つ。月よりも塔の方がしっくり受け入れられた。

    R18

  • 彼女がなぜこうなったのか?
    読み終わったが、なんか理解できるようでできない自分がいる。こんな人生はゴメンだ。

  • 掏摸の姉妹編。掏摸よりスピード感あり、読みやすい。作者後書で、有名な文献や歴史をモチーフにしたとのこと。そう言う書き方もあるのかと面白く思う一方で、だからちょっと読みにくいのかとも思う。

  • 主人公のユリカは、組織からの依頼をこなし報酬を得ていた。その依頼は社会的地位が高い人物の弱みを握ること、男を誘惑しホテルで睡眠薬を飲ませて女と寝ている写真を撮影する。

    そんなある日、掏摸でも登場した裏社会の支配者、木崎の登場。木崎はユリカが属している組織とは敵対関係にあるが、運命を握られているような圧倒的な力を前に、ユリカは生き延びるために両方を裏切る形を取る。しかしそれも全てお見通し、はたして生き残ることが出来るのか。



    木崎が支配者過ぎて成す術がない主人公だったが、生き延びるために言葉を選んだり策を弄したり、いつ殺されてもおかしくない状況でのやり取りは緊迫感があった。
    作者の解説には、新約聖書からグノーシス主義の構図に変化したということらしいが、何が何だか全く分かりませんでした。
    読書を続けていれば、いつかこういう意味を理解出来る日が来るんだろうか。

  • 「掏摸」の兄妹編、主人公は女性。社会的要人を性的なアプローチで陥れる。ある日、見知らぬ男から忠告を受け、自らの人生が別の人間に操られていることを知る。絶望の縁で主人公は決断をする。「掏摸」同様に罠に嵌める過程や絶対的な悪の世界が巧妙に描かれている。‬

  • 掏摸の主人公のその後が気になったので、購入。今回の主人公は女性。木崎と敵対する勢力に使われて、誰かを陥れるためにハニートラップをしかけることを生業にしている。原因は友達の遺児の難病手術の費用を稼ぐためだったが、すでにその子供が亡くなったのに止められずにいる。ある日木崎から書類を盗んでこいという使命を与えられ、彼女がとった方法は...
    読みやすく、どうなるのかと、一気に読んでしまった。でもクライムノベルは苦手だなぁ。

  • 運命とは何なのか、そんな生きる人間の葛藤を裏の社会を中心に描いていた。
    本作は、女性が主人公で、女性としての生き方と、男性への魅せ方、世の中のリアルを描いていた。正直最後は何を意味しているのか分からなかった。
    人生を失う代わりに、命を得る。? ダッタ気がするが、当人にとってどういうことを指すのか、個人的にはいきれればなんだってできるからよくね?って感じだった。
    まさに木崎の言葉通りで、自分からすべてを味わい尽くすことだけが、人間ができる最善の喜びだと思う。

著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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