ユングのサウンドトラック: 菊地成孔の映画と映画音楽の本 【ディレクターズ・カット版】 (河出文庫 き 3-6)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 163
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309414034

感想・レビュー・書評

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  • 映画評論本を初めて読んだのですが、読んでいるうちに興味が湧いてくるような印象でした。シニカルさを交えた視点で作品を捉え、作品によって文章量や内容に差があるものの、個人的には未読作品含め読みやすいと思いました。ただ、長文が幾度となく続いたり、回りくどい表現などと、個人差はあると思います。

    松本人志監督作品の批評は読み応えがあり、中でも『 大日本人』は高評価で、無意識のうちに「屠殺」というタブーを描く反面、獣が天に召される描写などの全体にわたるアンビバレンスを評していました。

    また、ゴダール作品は未だに未視聴なものの、音楽家殺しだということが伝わりました。音楽家としての著者を知っていたので、本文中には音楽に結び付けられて捉えられる場面も多々あり、映画と関係ない所では、映像と非同調な音楽をファッションショーで音楽に関係ないモデルの動きに見られる一種のエレガンスと評した所は納得してしまいました。

    また、名曲でありながら、視聴後に印象に残らない音楽を高く評し、映画における音楽の必要性にも疑問を呈していました。

  • 菊池成孔による映画や映画音楽に関する論考・エッセイを集めた一冊がようやく文庫化したので購入。前半は彼が最も敬愛するジャン=リュック・ゴダールについて、後半は様々な監督の個別作品について書かれている。

    映画においては映像に対して従属的な存在として扱われがちな音楽に特化し、特異な音楽センスを持つゴダールに関してペダンティックに叙述される文章は、映画にそこまで詳しくなくゴダールの作品を見たことない自分が読んでもそれなりに面白いと思える(ここに出てくる作品で見たことがあるのは、クリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」だけだった。確かにあのエンディングでのイーストウッドの歌はヤバすぎた)。

    文庫版ではおまけとして、映画評論家である町山智浩(脚本を担当した「進撃の巨人」という、和田アキ子と鬼束ちひろが「今から殺し合いをしてもらいます」とかいう映画のことはもう忘れて、評論家としての活躍をこれからも期待したい)との論争で話題になった「セッション!」のレビューも収録。本書の二作目では、この論争に関する全文も大幅に加筆修正されて収録予定とのことなので、少しだけ楽しみではある。

著者プロフィール

ジャズ・ミュージシャン/文筆業。

「2016年 『ロバート・グラスパーをきっかけに考える、“今ジャズ”の構造分析と批評(への批評)とディスクガイド(仮』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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