ふる (河出文庫 に 9-1)

著者 :
  • 河出書房新社
3.13
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本棚登録 : 2321
感想 : 212
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309414126

感想・レビュー・書評

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  • これまでわたしが読んできた西さんの作品と比べると、この作品は、個々の描き方としては西さんの作品なのだけれど、全体としてはいつもの西さんの作品とは違った、気がする。

    ラストに向けてのエネルギーの強さや展開はいつもの西さんだ。でも、白くてふわふわしたものの正体であるとか、語りかけてくるものの正体であるとか、こういう曖昧な終わり方をする西さんの作品は初めてだ。

    あとがきでいのちについての記載があって。
    わたしは誰かに嫌われたくない。その場限りで終わる人付き合いでも、嫌われたくないと思ってしまう。わたしが何かを言って、相手がそれに傷ついて、それにわたしが傷ついて。結局自分がオチとしてその場が落ち着くことでよしとするのは、結局は自分が犠牲になって終わるのだということ。わたしはまさに花しすだなー、なんて思ってた。最後に新田人生が言う。
    結局生きるとは、愛だ。
    愛と、白いふわふわしたものと、女性器と。作品を通して、わたしはそれらをうまく結びつけられなかった。
    女性器と、排泄と、器具の挿入と、生理。生々しい、女性であるということ。それが全部、生きるということ、いのちの物語だ。
    西さんのイメージ、イメージ、イメージ、全ては汲み取れなかったかもしれないけれど、この物語が、いのちと愛に包まれた作品であることは、しっかりと受け止めました。

  • H30.3.16 読了。
    ・人は皆それぞれの人生を歩み、いろいろな人達に関わりながら生かされている。この本自体は終始焦点がぼんやりとした何とも掴み所がないようなそんな作品だった。
    女性器といのち。

  • 西加奈子
    「サラバ」も不思議な本だった。
    もっと西加奈子をわかることができたらと、
    「ふる」を読んでまた???。
    厳然と西加奈子ワールドが存在する。

    理解力不足。
    また次の機会にちょうせんしょう。

    • naonaonao16gさん
      トミーさん、こんばんは!

      「i」はどうでしょう?
      もっとわかる、のお手伝いができるかもしれないと思い、コメントさせていただきました!
      もし...
      トミーさん、こんばんは!

      「i」はどうでしょう?
      もっとわかる、のお手伝いができるかもしれないと思い、コメントさせていただきました!
      もし合わなかったらごめんなさいm(_ _)m
      2020/04/23
    • トミーさん
      ありがとうございます。
      ぜひ読ませていただきます
      コメント、うれしいです。
      ありがとうございます。
      ぜひ読ませていただきます
      コメント、うれしいです。
      2020/04/24
  • 西加奈子の本はこれで3冊目であったが、改めてこの人の作品って良いなと思った。
    主人公のかしすの方言が話し方が優しくてかわいくてとても癒されました。かしすに実際に会って話をしてみたくなりました。

    作品自体はふわふわとしていて、なんだか不思議な感じもしたが、嫌いじゃないなと思いました。

    最後のあとがきも読んでいて色々考えさせられ、また同時に西加奈子のことが好きになりました。

  • 白くてふわふわしたもの、は何だったんだろう。
    私も、ふわふわした気持ちで読んでいました。
    不思議な時間をありがとうございます。



  • 『今まであなたは、いろんな人と関わって、
    いろんな人に影響を受けて、与えて、
    生きてきて、そしてそのことを忘れてしまって、
    でも尚、生きている』

    『誰かを愛してるって、強い気持ちがあったら、
    その人を傷つけることは、怖くなくなるはず
    なんだ』


    花しすの考え方や生き方共感できる部分もあった。

    忘れてほしくない、けど深く関わって傷つくのも怖い。一方で知らぬ間に自分は誰かを忘れてしまっているし、きっと傷つけてもきたのに。

    だからこそ時に相手の望む自分であることや、場の空気を察知して適した言葉や行動をとったり。

    現代青年の対人関係の特徴である「ヤマアラシのジレンマ」に通ずるなと感じたし、きっと花しすのような子は沢山いると思う。

  • 面白かったです。
    花しすに自分を投影してしまって辛い読書でしたが、最後は光があって、わたしも生きていこうって思います。
    わたしも「優しい」とよく言われるのですが自分では全くそう思ってなくて、優しいんじゃなくてそれは花しすと同じで「誰かを傷つけるのが怖い」だけで、「人が傷ついたとき、顔が歪むのを見るのや、流れている時間が止まること」が嫌なのだ、ということなのだと改めて気付かされます。能動的に関わっていないのです。
    こういうところが基本的にキャンディである所以か…と思うのですが、これから花しすは周りの人と能動的に関わっていくのかな。眩しい、と思います。

  • 不思議な世界観。主人公は他の人には見えない白いものが見える。ホラー的なものかなと思いながら読み進めていくと全く違った。人には色々な側面があり、色々な人とかかわり合いながら生きているということを感じさせられた。

  • わかったような、わからないような。ただ確実に言えることは、生きている「今」が奇跡ということ。
    花しすは、過去や過去の自分を忘れたくなくて、それを振り返ることでしか安心して毎日を生きていかれなかったのかもしれない。自分は過去も今も同じキャラクターの人間であって、未来の自分も変わらずそうしていくべきなのだと確証するためにレコーダーは必要だった。だけど、「今」のいのちは「今」そのときにしかない奇跡であって、どんなかたちであれ祝福されているのだと花しすは気づく。忘れて、忘れられて、それでも生きている「今」の自分が一番に祝福されている。そう思えて初めて人は愛に素直になれるしもっと自由に生きられるのだと思った。

  • 主人公の花しす(かしす)はアダルトサイトにアップする画像の女性器にモザイクをかける仕事をしている。人間の顔と同じで、誰にでもついているパーツ、同じもののはずなのに、そこには実はそれぞれ個性がある。

    なぜ20代女性主人公の職種をそんな特殊なものに設定を?と最初は不思議に思っていたけれど、これが結構最後に重要な役目を果たします。だってどんなにグロテスクでも、モザイクかけなきゃいけない猥褻物扱いされても、それがあるから愛の行為があり、そしてみんなそこから生まれてきたんだもんね。

    2011年現在の花しすと、過去のエピソードがランダムに織り交ぜられる構成と、そこかしこのターニングポイントに現れる「新田人生」という名の男性(※同一人物ではない)、花しすが子供の頃から見える、人間に纏わりつく白いふわふわしたものなど、若干マジックリアリズム的出来事が盛り込まれているので免疫のない人は戸惑うかもしれないけれど、花しすはけして「不思議ちゃん」ではないし、非常に共感しやすい等身大のキャラクター。特殊な職業のわりに職場の同僚はみんな良い人で、朝比奈さんと黒川くんとのトークはとても心地いい。

    個人的には初期の『さくら』に通じるテーマを感じました。それは圧倒的な「生の肯定」と「性の肯定」。自分なんて生まれてこなければよかった、セックスなんてしょせん快楽目的で子供は副産物、何もかも汚らわしい、そんなふうに思ったことのある人は少なくないと思う。でも西加奈子はそんなネガティブな否定論を全部吹き飛ばして、「私たちは、祝福されている」と断言してくれる。

    日常のそこかしこ、記憶の断片のそこかしこに、祝福の言葉は「ふって」きている。非常にポジティブでストレートなメッセージが、なんというか頼もしかったです。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

西加奈子の作品

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