永遠をさがしに (河出文庫 は 19-1)

著者 :
  • 河出書房新社
3.78
  • (83)
  • (165)
  • (124)
  • (22)
  • (1)
本棚登録 : 1887
感想 : 140
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309414355

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 和音は子供の頃、鳴かない深緑色のカナリアを飼っていた。名前をトワという。母の時依(ときえ)のトと和音(わおん)のワをつなげて「トワ」「『トワ』という言葉には永遠という意味もあるの。永遠というのは誰にも絶対みつけられないものよ」ある日、どこかへ逃げてしまった鳴かないカナリア。「お父さんは和音のことが好きなのよ。でも意地っぱりだから、大好きだって言えないだけなのよ。お願いだからお父さんを好きでいて」
    母はひとり遠く離れていった。父のもとに私を残して。

    和音は高校一年生になり、父で日本交響楽団のレジデンド・コンダクターの梶ヶ谷奏一郎はボストン交響楽団に着任することになり、日本を離れます。
    和音は日本に残りますが、そこへ真弓という昔チェロを弾いていたフリーの音楽ライターだという39歳の女性が現れ、「奏さんはあたしのダンナ」と言い、東京の和音の家で同居を始めます。和音は「父の財産が目的で結婚したんですか?」と真弓を問いただします。和音の母の時依も昔は名だたるチェリストで、和音もチェロを弾いていました。
    そして、和音はお嬢様でした。

    でも、真弓は今まで和音の周りにいた大人の範疇に入らない女性で、和音のクラスメイトの文斗や朱里たちも巻き込んで、だんだんと真弓のペースに乗せられていってしまいます。そして和音は16歳の誕生日に真弓とお母さんからの(!)、すごい誕生日プレゼントをもらいます。
    ここでストーリーがすべてひっくり返されていきます。
    そして他にも重大な秘密がどんどん発覚していきます。

    和音、時依、真弓の三人のチェリストのストーリーです。
    和音は最後に永遠をみつけることができます。

  • 自分勝手な感想です。原田マハさんの作品には主に何種類かあると思っています。芸術の思い入れを丹念な調査に基づいて作品に仕上げたアート系小説。ご自身の日常をそのまま描いたエッセイ。読者の感情を鷲掴みにする劇場形小説等々。様々な表現を巧みに操っておられる。

    私は原田さんの作品を全て読み尽くした訳ではないので極めて拙い感想なのかも知れ得ませんが、感動の仕方が異なっている。

    「キネマの神様」「本日は、お日柄もよく」等の作品は私にとって劇場形小説の部類に入る。

    現実にはあり得ないストーリーだと分かっていながら、没入してしまう。心を鷲掴みにされてしまい、ふと気がつくと時間を気にせず最後まで読まざるを得なくなってしまう。感情がブルブルと震えてしまう。

    たとえ、現実にはあり得ない世界であったとしても、多少の矛盾を感じながらも感動してしまう。創作能力の高さに恐れ入ってしまいます。

    この「永遠をさがしに」も私にとっては劇場形小説でした。

    いくら何でも、そうそう家族を含めた自分の身の回りの人たちが身体的な問題を次々に抱えてしまうことなどあり得ないだろう?本当にこのような状況に置かれたら、普通の精神状態で生きていけないだろう。といった状況にある主人公を奮い立たせながら、すべての登場人物たちが良い人たちで、不思議と爽快感を持って最後まで読み切らせる。

    またまた、原田さんにやられてしまいました。

  • こういう漫画のような世界観での直球には弱いんです。
    鼻の奥がツーンと来てしまいます!

    音楽を通して親子の絆・愛情、友情、夢への挑戦と、青春直球ストーリです。

    高校生の和音は世界的な指揮者の父親と二人暮らし。チェロに挫折し、普通高校に通う彼女。
    父親が渡米するも、一人日本に残ることに。そんな状態に型破りな新しい母・真弓がやってきます。
    真弓との奇妙な二人暮らしに..
    そんな真弓に影響を受ける形で、彼女自身、彼女の周りが変わっていきます。
    そして16歳の誕生日にもらった、実の母からのメッセージ。
    実の母と和音の関係
    そして、和音と真弓の関係
    和音と友人の関係
    再びチェロを弾き始める和音
    音楽を通して気が付く自分の気持ち...

    この手の直球は弱いんです。
    ちょっと電車の中で読むのが辛かった..

    とってもお勧め

  • これはカフーを上回る傑作と思う。感動作。
    若い女性(特に10代後半)にとってはたまらない1冊だと思います。細かいことは書きません。とにかく手に取って読んでみて欲しい。

    • artist tomo さん
      私も読んで感動しました。10代ではないですが。笑 アート系の小説を得意とするマハさんですが、こういう女性が主人公の話も感動的でいいですね。
      私も読んで感動しました。10代ではないですが。笑 アート系の小説を得意とするマハさんですが、こういう女性が主人公の話も感動的でいいですね。
      2023/07/30
    • 山賊パスタさん
      artist tomoさん、コメントありがとうございます♪

      マハさんのアート系作品はもちろん素晴らしいですが、この本のような『頑張る』系の...
      artist tomoさん、コメントありがとうございます♪

      マハさんのアート系作品はもちろん素晴らしいですが、この本のような『頑張る』系の本は、それ以上に素晴らしいと思います。『風神雷神』などは、その良いとこ取りかと。
      2023/07/30
  • 楽器を演奏する者は、産みの努力というかその1音、そのフレーズをどう演奏するかで試行錯誤しもがいて先の見えない努力を黙々と続ける。だがその苦悩を乗り越えた先には、音楽と自分が一体となり、聴衆に感動を与える演奏が出来るようになっているのだと思う。これって、芸術全般に言えることかなあ。

    ストーリーは、度々胸がギュッとなる場面多し。和音ちゃんも、色々乗り越えてその苦悩の世界に入り、これから沢山の感動を伝えるために切磋琢磨していくんだろうな。まあお父さんが凡人ではないですけど。

    ピアノの次に、好きな楽器チェロ。
    久しぶりにチェロの演奏聴いてみたくなった。

  • まことさんやyyさんの本棚で見つけて、原田マハさんの音楽への想いが気になってお取り寄せ。音楽を通してつながる人たちの交流を描いた作品。
    大人の自己満足的願望に振り回されたり身内の病を試練とする設定に少し違和感を覚えるが、個性的な登場人物との会話には惹かれる。時々出てくるクラシック曲名をチェックして聞いてみたりする。
    和音が真弓を受け入れる場面「チェロをやっていた人に、悪い人はいない」
    真弓と和音たちとの交流の時「時代をクリアに映し出している音楽はなんでも好き。でも、時代を超えて人の心を打つ音楽は、もっともっと好き」
    生い立ちの語りの中での真弓の言葉「二十世紀っていうのは、いろんな意味で人類がいままでの長ぁい歴史の中で体験しなかったようなものすごいことが起こった時代で、大きな進歩も発展もあったし、悲惨きわまりない戦争も殺りくもあった。…でもカザルスのチェロを人類が得ることができたっていう、そのただ一点においては、すばらしい世紀だった。」
    ピアノの教授による文斗への激励「聴く人の心を豊かにしたいと思って演奏することは、何より君のためになる。チェロを弾き始めた彼女のためにもなるはずだ。がんばりなさい。」
    体調不良の真弓へどう接していいかわからない和音に父奏一郎の助言「耳で聴くことが重要なんじゃない。心に響くことが、いちばん大切なんだ。」

    真弓さん特製ブランデー入りの紅茶を飲んでみたいな。
    倉庫に眠っていたウクレレを弾いてみた。前より指がおぼつかいや、練習しよう。

    • yyさん
      ベルガモットさん、こんにちは。
      読むきっかけになったなんて、と~っても嬉しい☆彡
      私は ”思いっきり下手な" ピアノ。
      本当にヘタクソ...
      ベルガモットさん、こんにちは。
      読むきっかけになったなんて、と~っても嬉しい☆彡
      私は ”思いっきり下手な" ピアノ。
      本当にヘタクソで、弾くと嫌になるのでしばらく弾いてません (;'∀')
      チェロは長男に習わせていました。
      私が好きだというだけの理由で。
      本人には、すっごく迷惑な話だったと思います。
      でも、チェロの音色ってホントに素敵。

      ベルガモットさん、ウクレレ楽しんでくださいね ♡♪♡
      2023/07/17
    • ☆ベルガモット☆さん
      yyさん、海の日はいかがお過ごしですか
      休みなのに、暑くて部屋で引きこもり動画閲覧&読書中です
      yyさんもピアノ経験者なんですね♪
      私...
      yyさん、海の日はいかがお過ごしですか
      休みなのに、暑くて部屋で引きこもり動画閲覧&読書中です
      yyさんもピアノ経験者なんですね♪
      私もピアノは母の熱望で習ってましたが黄色バイエルで挫折しました
      ウクレレはまた飾ってるだけになってます…
      yyさんのレビューで「チェロには個人的な想いが色々あって」
      というのが気になり、ご自身か恋人さんがチェリスト?!と勝手にドキドキしてました
      なるほどご子息が習ってらっしゃった!育ちの良さを感じますっ
      2023/07/17
    • yyさん
      ベルガモットさん

      きゃ~!そっか。
      恋人がチェリストって。
      そういうの、いいなぁ♡
      因みに長男は、さっさとチェロを捨てて野球部に...
      ベルガモットさん

      きゃ~!そっか。
      恋人がチェリストって。
      そういうの、いいなぁ♡
      因みに長男は、さっさとチェロを捨てて野球部に専念。
      そして、育ちがいいわけでもなく…。
      夢を全部壊しちゃいましたね、ごめんなさい。

      私も今日は外に出る気がしなくて。
      ベルガモットさんと同じ。
      引きこもって読書&動画閲覧です。
      ものすごく親近感を感じて、そしてなんか嬉しくて
      またコメントしちゃいました☆彡
      2023/07/17
  • 音楽を軸にした青春小説。
    音楽一家の特殊性。
    両親の愛情をもとめながら傷つく和音。
    人との距離感があった和音が、真弓とは感情をぶつけ合うところが、たのしい。
    みずからドMというだけあって、真弓の言動は強烈だけれど、器の大きさも感じる。
    文斗と和音のつむぎだす音楽は、きらきらとみずみずしく、美しかった。
    後半はじーんときた。

  • 原田マハさん、「音楽」を題材にした小説もあったんだ!と嬉しくなり読んだ本。
    チェロ、オーケストラ、音楽、、、自分の好きなものが好きな作家さんで読めて嬉しい。

    高校生同士の純粋な友情や努力、家族間の葛藤と愛情、音楽で繋がる者同士の共鳴、演奏者にしか分からない恐れや至福…など共感するばかりで一気に読んだ。

    若いっていいな。
    和音の将来に幸あれ、と願ってしまう。

  • 幼いころ両親が離婚した環境に育った、音楽一家の女子高校生和音の成長物語。強烈な印象はないが、とても綺麗にまとまった(お話が出来すぎてる感じがした)、音楽が聞こえてきそうなお話。母が難病、真由美さんも体の不調、病気になって話がすすんでいくところが気になった(個人的には好みではない)。

  • このような評価とレビューになるのは
    私だけの特殊な事情によるのかもしれない。

    私はトランペット奏者として
    一時はプロになることを夢想した。

    和音のように 私もまた演奏家が感じる
    「永遠」の瞬間を知っている。

    トランペット奏者になる夢は
    叶わなかったが
    別の楽器で 演奏家として
    活動していたこともある。

    楽器とひとつになる感覚もその幸せも
    私はよく知っている。

    でも私は 自分の夢を子供たちの夢で
    置き換えるような…真弓の母みたいな
    我執には とらわれることはなかった。
    早くにトランペットをあきらめた私の
    吹くトランペットの音を 子供たちは
    聴いたこともないし 吹いている姿すら
    見たこともない。

    私は平凡に生き もうとっくに
    音楽そのものからも
    遠ざかってしまっている。

    でも本当に人生は不思議である。

    国内ながら コンクールでグランプリを
    獲ったこともある娘は現在
    とあるオーケストラの席が空くのを
    待ちながら 演奏に磨きをかけるために
    一日中練習に明け暮れている。

    私もまた楽しみになってきた。

    娘のあの輝かしいトランペットの
    音がオーケストラに溶け込み
    ひとつの音楽になる…その日の訪れを。

    作者の紡ぐストーリーは
    いつも素晴らしい。
    でも かつてこれほどに
    共鳴したことはなかった。

    心震えるほどに素敵な人たちと
    まるで奇蹟のように出逢えたことに感謝。

    2019.8.4 追記

    娘は2年前に 自分に欠けている音楽表現力を
    身につけたいと ドイツに渡りました。

    語学の習得とレッスンに明け暮れた2年間を経て
    とある音楽大学のマスターコース(修士課程)に
    入学することに。まだあと2年の音楽修行です。

    本当の私は 「日本に帰らなくていい」と思ってます。
    音楽にひたる人生は ヨーロッパでしか送れません。

    でもそれは 娘が決めること。
    素敵な人生は 本人の胸の中にきっとあるはずです。

全140件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
原田 マハ
湊 かなえ
原田 マハ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×