- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309415123
感想・レビュー・書評
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単行本発行が二千四年なのね。
「せいめいさん」ゆかりの地で生まれ育ち、「せいめいさん」の庇護で命を助けられ、その辺をすっかり忘れた著者が、被差別民、藝能民の調査をするようになって、陰陽師とやらが有名なので(荒俣宏『帝都物語』が1980年代の亥年からで、夢枕獏『陰陽師』がほぼ同時期で、岡野玲子『陰陽師』はその後)調査をしてみました、というもの。その割にエンターテインメントにするには「大津連大浦」を推す。
安倍晴明以来、零落し藝能民として社会の底辺を彷徨いエンターテインメントをひり出してきた一族とそのイデオロギーが、近代に入り一旦弾圧され、そしてエンターテインメントの中で活躍するように成るまでのざっくり史が展開。
そのエンターテイナーの系列に「猿楽」が入ると主張するのは面白い。
あとは柳田國男、折口信夫の特殊民研究も紹介する。
左道について「もともとなにがしかの呪術を指した」とする白川静説を取り上げはする。が白川説の「左を尊ぶ」日本のやや異例な信仰は無視する。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原書名:陰陽師の原像(岩波書店)
第1章 安倍晴明ブームをめぐって
第2章 陰陽師と渡来系文化
第3章 聖神社と「しのだづま」伝説
第4章 柳田國男の「特殊民」研究
第5章 「道々の者」と陰陽道
第6章 中世猿楽と陰陽道
第7章 近世「役者村」の起源
著者:沖浦和光(1927-、大阪、社会思想史) -
二千四年頃、いつの間にか陰陽師とやらがその辺でもてはやされてゐるので、安倍晴明とかゆかりの地出身で被差別民研究家である著者がとりゃっと書いた本。
著者の近所に晴明関係の神社があったのであった。しかも室戸台風について「せいめいさん」の関係でなんとかなったといふ経験もしてゐる。
そんで以て、でも近代のいろいろで弾圧された陰陽道は、著者にはトンと意味の分からないものださうであった。
柳田國男、折口信夫関係の資料がライフワークの関係として、「生家の近所の」さういふアレな方々を調査してゐたとか、言ふ
Stigmaを「負のしるし」と解説する。キリスト教徒が手足に空いた穴を指して「カイクのイエスが付けられた穴」とか思ふことはないと思ふのだが、でも折口先生の痣は知らんけど、ホモは折口先生としては肯定的だった気が。
白川静関係では「工」はてん器と呼ばれる、エ字型の呪具だと『字通』に書いてある。
猿楽などの藝能と陰陽道、声聞関係との関連を探る。