二十世紀鉄仮面 (河出文庫 お 18-2)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309415475

感想・レビュー・書評

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  • 『三大奇書』のひとつ『黒死館殺人事件』とは余りにも違う『もうひとつの小栗虫太郎』。
    衒学的な描写は随所に見られるが、探偵小説(ミステリ)とは言い難く、冒険活劇、冒険小説と呼ばれるジャンルにカテゴライズされることは、巻末解説の冒頭でも指摘されている(そして法水麟太郎のキャラクターも、〝黒死館殺人事件〟とは随分違っている)。
    『黒死館殺人事件』より随分と読みやすいので、これが文庫になった意義は大きい。

  • ひどい悪筆
    なんか、もう、たまらないなぁ~
    クセになりそう
    読んだあと、何も考えないし、何も残らないのに、読んでる間は楽しすぎる、サイケデリック音楽のような作品

    青空文庫ではなくこっち読んだ

  • 2020/8/29購入

  • これ、ミステリというより冒険活劇モノですね(冒険伝奇探偵小説と本書では謳ってますが)。三銃士とか巌窟王とかその系統。私が今まで知ってる虫太郎作品と作風が思いっきり違うので驚きました。かろうじてペダンチック溢れる描写に黒死館風の痕跡があるぐらいで。
    一応人が死んだりモノが無くなったりと『謎』はありますが、それはあくまで法月の冒険譚のスパイスでしかない印象。そして常にピンチに陥る法月(これは雑誌連載の作品だから、毎号、山場や見所を作ろうとするとこうなるんだろうなぁと……)。
    とにもかくにも『黒死館』などで慣れ親しんだあの名探偵・法月と、この作品の主人公の法月は別人なんじゃないか?!というほどキャラが違うので、開き直って楽しむが勝ちですね。40目前のオジサマで妻帯者設定の法月が、出会う女性(十代の乙女から人妻まで!)に片っ端から恋し、恋される超展開も凄い。そんなにイケメンなのか! 描写はないけど!! とツッコみたくなる。
    海洋冒険! 敵であるフィクサーとの欺し欺されの対決! 友情! 麗しい乙女との恋愛! 一族の抱える因縁と莫大な遺産の相続者! そして謎の鉄仮面の男! とロマン溢れる作品でした。

  • 『黒死館殺人事件』でおなじみ法水麟太郎探偵のシリーズ。とにかくペダンティックで難解だった黒死館に較べたら本作は冒険活劇的で読み易かったけれど、なぜか内容そのものではなく普通に文章として、何が起こってるのか把握し辛い、場面転換したことが分かり難い等の読み難さがあったような気がする。単に私の集中力が足りていないだけかもしれない・・・。

    1930年代、九州を拠点に日本の財界や政治家まで牛耳る巨大軍需カルテル茂木根合名。しかし老夫人を最後に跡取りはなく、茂木根の暗躍を支えてきた茂木根秘密機関の四人の幹部の一人・瀬高十八郎は茂木根を乗っ取るために他の委員の抹殺をたくらんでいる。さらに200年前の古文書に記された茂木根の始祖、茂木根球磨太郎の弟・織之助が異国から流れ着いた美しい尼僧ヨハンナを騙して子供を産ませたその子孫の行方、茂木根に拉致されていると思しき「鉄仮面」が自分の夫ではないかと疑うウィーン帰りのピアニスト蓮蔵種子らの関係が複雑に絡み、瀬高十八郎と法水麟太郎は船上であいまみえる。しかしその船上で、瀬高の後妻・葛子が殺害され・・・。

    基本設定は伝奇ロマン的な要素があってなかなか良かったのだけど、回収されない伏線も多く、展開にご都合主義感があるのは否めない。あとなぜか出てくる女性がすべて法水麟太郎に恋してしまうという謎展開。本書では法水について、年齢は四十歳近い、病床(結核?)の妻がいる、ということ以外とくに容姿等について言及されておらず、黒死館~でもどのように描写されていたか覚えていないのだけど、出逢う女性に悉く一目惚れさせ恋に狂わせる特殊なフェロモンを出す超絶イケメンとしか思えないモテっぷり。

    お相手がそこそこ熟女の場合はまあいいんですけど、瀬高十八郎の二人の娘(一人は後妻の連れ子)15才の波江と13才の登江までがアラフォーの法水に夢中になり、さらにそれがまんざらでもないロリコン法水のほうでも病床の妻がありながら15才の波江に恋してしまう。なんというか、偏見だけど、少女が知的なおじさまに恋心を抱いてしまうまではまあ許容範囲だけど、法水のほうが少女にむける視線というか描写がさすがにちょっと露骨に性的でいただけない。さらに女性としては中学生くらいの少女が、中年のおっさん相手にそこまで露骨な性的欲望を抱くものかもちょっと、ないかな、と。

    しかもですよ、ここからちょっとネタバレですけど、船上で惨殺された葛子夫人、さらに後になってオペラ劇場で惨殺される長男の道助、この二つの殺人が起こった原因は、なんと他ならぬモテモテ法水に恋したある人物の嫉妬。つまり法水がこの件に首を突っ込まなければ、この二つの殺人事件は起こらなかったし、誰も死なずに済んだのに、という・・・。しかも夫人の殺害現場でさんざん死体が十字架の形になってるからどうのこうのとか(※表紙イラスト参照)いろいろ意味深な推理をしたのに、全部なんの意味もなかったっていう・・・。え、つまりこれがアンチミステリってことなの?

    タイトルになっている鉄仮面の中の人の扱いも酷い、というか、タイトルになってるわりにあまり主要なエピソードにされていない。わりと早めに正体はわかるし、もはや幽閉されている理由もあまり意味がない。茂木根の古文書と引き換えに鉄仮面の救出を、というのが今回の法水の行動原理だけど、当の鉄仮面はすでに狂っており、あれほど夫の奪還のために危険を顧みなかった種子が、法水に恋しちゃったからもう夫の事はどうでもいいですモードになっちゃうっていうのも酷い。

    古文書にでてくる侍女に女装した男の存在があるので、瀬高の長男・道助が、いつまでも声変わりせず軟弱で、連れ子同志で結婚させられようとしている波江が彼を嫌っている・・・という設定が、何か意味があるのかと思っていたのだけど(道助、実は女だったか半陰陽だったか)そこには結局触れずにあっさり道助殺され、しかも舞台メイクで焼死したため偽者かも疑惑とかあったのにそこも回収されないまま。

    最終的に思いがけない人物が茂木根の血を引いていたことが判明するのだけど、あの、苗字ね、結婚してから変わったんじゃないのかな?じゃなきゃ婿養子なのかな?あと尼僧のほうの本国の子孫というのも出てくるのだけど、たとえ尼僧の血をひいてても茂木根の跡取りにはなれないからあんまり意味ないですよね?なんかそういうモヤモヤ、実はあれは私でした、と殺人者が遺書を残すだけで、法水はちっとも事件解決に役に立っていないどころか殺人の原因になった件など、もろもろ消化不良で、読後に爽快感はあまりなかったです。

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著者プロフィール

小説家。1901年東京生まれ。本名、小栗栄次郎。1927 年、「或る検事の遺書」を、「探偵趣味」10月号に発表(織田清七名義)。1933年、「完全犯罪」を「新青年」7月号に発表。「新青年」10月号に掲載された「後光殺人事件」に法水麟太郎が初めて登場する。1934年、『黒死館殺人事件』を「新青年」4~12月号に連載。他の著書に、『オフェリヤ殺し』、『白蟻』、『二十世紀鉄仮面』、『地中海』、『爆撃鑑査写真七号』、『紅殻駱駝の秘密』、『有尾人』、『成層圏の遺書』、『女人果』、『海螺斎沿海州先占記』などがある。1946年没。

「2017年 『【「新青年」版】黒死館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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