水曜の朝、午前三時 (河出文庫 は 23-1)

著者 :
  • 河出書房新社
3.24
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感想 : 162
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309415741

感想・レビュー・書評

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  • 文章が読みやすくスラスラ読めた。
    なんで最期に娘に伝えたんだろう?と思ったけれど、感情のまま吹き込んだだけで、伝えた意味とかはあまり深く考えなくていいのかな?と思った。
    タイトルの意味も納得出来てスッキリした。あとオメガの腕時計も。
    叶わなかった恋だから美化されるんだとか言うけど、叶わなかったから美化されて残っているんじゃなくて、本当に美しく素敵な感情の記憶だったから残っているのかなと思えた。
    また読みたいと思う。

  • 小説の舞台が大阪万博で、この小説を通して、当時の万博の様子を知ることができたのが面白かった。

    タイトルが臼井さんとは関係なく、成美さんの死を表しているのが印象的だった。筆者がこのタイトルを選んだ理由は、また折りを見て考えてみたい。
    直美さんの性格的に、「もしかしたらありえたかも知れないもう一つの人生、そのことを考えなかった日は一日もありませんでした」という台詞はなんだかアンバランスで私の中ではマッチしなかった。違和感を感じた。

    直美さんが、自分の心情に突き動かされて臼井さんの家を訪ねたシーンでは、直美さんの勇気に圧倒されたし、私もそれくらいの勇気を持ち合わせたいと思った。

    文章のかしこで、臼井さんは大事なことは何一つ私に打ち明けてくれなかったという台詞が登場した。けれど、私は大事なことって一体なんなんだろうと思った。ここでは、臼井が北朝鮮人だったことを指すのだけれど、その人にとっては臼井さんが北朝鮮人であることが重要事項なんだけど、それって本当に大事なことなんだろうかと思った。
    それは、その人にとって重要な考慮事項、臼井さん自体を判断する重要な考慮事項であって、北朝鮮人であることを人に打ち明けることはそんなにも大事なことなんだろうかと不思議に思った。例えば、私が日本人であることを隠して、それ以外はAさんにオープンに自分のことを伝えていたとして、Aさんが私のことを好意的に思ってくれていても、Aさんは私が日本人であるということを聞いただけで、私に対する愛情は覆ってしまうほどのものなんだろうか。

    国籍って一体なんなんだ。人種、宗教って一体なんなんだと考えさせられた。
    臼井さんは臼井さんで、目の前にいる臼井さんも臼井さんであることに変わりはないし、臼井さんが語る臼井さんも臼井さんであることには変わりはない。

    私も、自分にとって大切な人が、私に全てを打ち明けてくれないことに、自分とその人の間にある距離を感じて、寂しさを感じることがある。でも、こう考えると、大事なことを打ち明けてくれないっていうのは、全てを赤裸々に語ってくれるわけではないことに対する寂しさを表す台詞なのかもしれない。

  • 友達からおすすめしてもらって、本屋で見つけてすぐに読み始めた。
    人生は選択の連続で、間違った選択をしないようにと生きていくのではなく、選択した道でどのように生きるのかが重要で、失敗したり苦しいことがあっても生きていかなきゃならない、人生は続いていくのだと。
    自分がこの歳まで生きてきて、後悔ばっかりだなとか、過去のことを思い出してうわーって思うこととかもあったりして、でもそういうことってきっと誰にでもあるだろうし、それも自分の人生の過程だと思って日々過ごして行けたら良いなと思う。なんだか自分の人生の教科書のような、見落としてはいけないことを再発見できたような、そんな1冊に出会えた気がする。

  • これはラブストーリーではない。昭和産まれの人間には、ああ、とストンと落ちる切ない話。選択せざるを得なかった道で最良を模索するという生き方を選択した女性の話。

  • 直美の衝動的で、感情的で、掴みどころがないところがとても魅力的で、私も彼らと同じく、彼女の虜になってしまった

  • 翻訳家の直美が恋愛を通して彼女の人生を振り返る小説。幸せってなんだろう。どうして好きだからという理由だけでは結婚できないのだろう。そういった煙のような後悔を抱えた人生が明瞭な文章でつづられる。美しく切ない。サイモン&ガーファンクルというアメリカ人のアーティストがWednesday morning, 3 amという曲を出してる。是非レコードでほしい。

    「人生は宝探しなのです。」きっと人生そう難しいものではないんだ。出会ったひととしか愛し合うことはできないし、歳を取ってから心通わせられるひとに出会えるかもしれない。子育て(それだけが全てではないけれど)というヒトとしての大義を果たした後に、性別を超えた友情があっても良いのかもしれない。それはタイミングが違えば、恋愛、浮気と呼ばれるものなのかもしれないけれど、直美と臼井の間の関係は決して単なるそういう汚いだけのものではなく、高尚な、高潔な、美しさが感じられた。将棋の感想戦みたいな、商売敵同士が退職後に酒の席で交わす会話みたいな。100歳まで生きる時代。豊かに生きたい。誠実に、品格を落とすことなく、柔軟に生きて行ければ。

  • 自分より少しだけ年上の世代なので当時の社会の様子が懐かしく読み進めていった。恋愛小説かと思っていたら「北朝鮮」という文字が現れ、実はもっと深い社会問題が語られている事に気づいた。拉致問題が解決したら、私達の知らない大きな人生ドラマが明るみに出て来るのではないだろうか。

  • 友人から借りて読んだ本。
    選択しなかった方の人生をよく想像してしまうんだけど、選択した方で出会った人々のことをおもって泣いた。
    臼井さんと直美が結婚していたら、きっと素敵な家庭を築いていただろうし、でも葉子は生まれていなかったわけで僕とも出会っていない。
    選択しなかった方と、選択した今のことを思うとすごく不思議。
    久しぶりに小説で泣いた作品

  • 書店で見かけた際、帯に書かれていた「誰だって忘れられない人がいる」「胸の内に他の誰かを思い描かない既婚者などいるはずがない」という言葉が記憶に残っており、借りて読みました。

    直美があったかも知れないもう一つの人生を振り返る、落ち着いた物語。墓場まで持って行くべき言葉や気持ちもあると思う反面、自分の感情を言葉で表現出来る直美が羨ましくもありました。

    「人生は宝探し」見つけても気が付かなかったり、手に入れても失ったり。人生にもしもなんてないけど、もしも…を想像する事でまた前に進めるのかも知れません。

    時代背景が大阪万博の頃ですが、この夏も万博跡地の公園に行きました。今は誰も居ない広大な敷地に立つと、当時の賑わいなど想像すら出来ません。

  • テープに録音された回想から成り立つお話は初めて読んだのですごく新鮮でとても面白かったです。また、語っているのが娘ではなく娘の旦那というところも読み進めていくうちに納得のいくものでした。
    読み終えて、臼井さんと一緒になった直美の人生も読んでみたい!と思いました。しかし違う人生を選んだからこその幸せを直美は見つけられたのかなと思うと感慨深いです。
    「僕」や臼井さんが直美に惹かれるのと同じように私も臼井さんに惹かれていきました。ミステリアスであまり自分語りをしない人はいいですね…実際に出会ったら絶対に好きになっちゃう!臼井さんの容姿がすごく気になります。
    また、お話の舞台が昭和ということでその時代の雰囲気がすごく気になりました。直美の語り口調のおかげかもしれませんが「エモい」感じがして昭和の時代も生きてみたかったと感じました!!

    フジファブリックさんの「サボテンレコード」がめちゃくちゃ合います…❤️この曲聴くたびにこの本を思い出します!!!

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著者プロフィール

1959年、秋田市生まれ。立教大学卒業後、新聞社、出版社に勤務。2001年に刊行したデビュー作『水曜の朝、午前三時』が各紙誌で絶賛されベストセラーになる。他の著書に『八月十五日の夜会』などがある。

「2023年 『美しき人生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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