破壊しに、と彼女は言う (河出文庫)

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制作 : Marguerite Duras  田中 倫郎 
  • 河出書房新社 (1992年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309461120

破壊しに、と彼女は言う (河出文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 理解しようと何らかの分析を試みたとしたらまずデュラスは読めない。「『破壊しに』には十通りの読みかたがある。それがわたしの意図したところである」という著者自身の思惑の曲解だとしても、私は何も考えずにエクリチュールに身を委ね、(流されるにしろ溺れるにしろ)狂気の只中に埋没していく読み方しかできない。抗う気持ちは微塵もない。自ら望んで落ちていく。デュラスは孤立しない、他者との関わりの中で崩れる秩序の変奏に、破壊音を伴う壮烈なシンフォニーを誘き出す。やがて私は日常に戻るのだが、眠りの中で小さな罅は静かに伸張する。

  • 極限の表現を追求したデュラスの一作。
    気だるく、平坦な中で静かに進行する精神。時間はあってないようなもの。この物語空間では、ひとびとの決められた習慣だけが時の移り変わりを知らせる。正常と狂気の境界はあいまいで、ゆっくりと物語の中を流れる。そもそも、この物語は人物による創作世界の中なのかもしれない、そんなことさえも予感させる。虚構と地の境界さえもあいまいなのである。
    表現は極端なまでに簡素になされていて、ことばの動きがいかに人物を形作っているのかがわかる。10通りの読み方ができると自負するだけあって、メガフォンを握る監督の如何によってどうにでもこの物語は演じられる。むしろ、何かひとつの物語としなければおおよそ映画というものにならないのではないか。誰かにフォーカスをあててしまえば、この物語は切り取られてしまう。演技ひとつとっても、簡単にこの空間を切り取ってしまう。監督としてどのように立ち向かったのか、それも併せてみてみたいものである。
    こういう物語世界であるから、漠然としているのにも関わらず、確固たる独自性をもち、どことなく不安定で揺らぎの中を漂っているような、そんな感じを受けるのか。そして、どこか居心地の悪いような、そんな異質な印象が支配している。
    同じことばを話しているのに、まったくもって未知の存在に接している。未知との遭遇とは、こういうものなのかもしれない。そんな人間の中では、愛と呼ばれるものも、見たことのないようなそういう形で結ばれるものなのかもしれない。それでも、まだ愛と呼べるものがあるということに驚かされる。
    こういうあいまいさを抱えてもなお、物語は進行し、その中で人びとはことばを交わしている。寄り添っているようで実はずっと平行線のまま。その距離が近づくこともなければ遠ざかることもない。そんな漠とした安らぎと絶望。
    タイトルは破壊でも、破壊するではなく、「破壊しに、と彼女は言う」である。この簡素な表現がもつものは、平行線のままでしかない状態をきれいに含んでいる。そんな平行線たちがたくさん出てきたら、その時果たしてそれらは個と呼べるのだろうか。近未来においてこのコミュニストたちはいったいどれほどの意味を持ちうるのか。この作品の含むものは10ではきかないくらい広がりを持っていると思う。

  • 再読。狂人たちの遊戯。遅疑と逡巡。甘美なる空虚。眠れない夜、影たちのことばに触れたくて本書を紐解いた。あの一文が現れるころ、睡魔が私を迎えにくることを期待していた。

    『無限に続く前置きにひっかかってる』

    始まりも終わりも知らない白紙の原稿用紙。進みも戻りもしない宙吊りにされた時間。それらにくるまれて私は意識を手放したかったのだけれど、あの一文へ近づくほど、気は急いて、目は冴えてゆくので、眠りの腕は離れていってしまう。
    そうして私は私の眠りを失い、おしだまった部屋の中で彼女の睡りをなぞろうとする。

  • 舞台向けに作られた作品なのだろうか。会話が大部分を占め、登場人物の心理描写や観念的な言いまわしはほとんどない。また、登場人物のほとんどが狂人というだけあって話が噛み合っていないように感じる。これは本で読むのではなく舞台を観たほうがいいのではないかと思える。

  • まるでフランスの映画を見ているような、そんな感覚になる作品。内容という内容はそんなにないんだけれど、不思議と心地の良い作品。登場人物がごく少ないけれど、みんなどこかが狂っている。一人の女を中心に回るそんなお話、2013/272

  • 素敵な題名。
    何を彼女は破壊したのだろうか。
    他人?関係?自分?しかし、破壊を好むのは彼女だけではない。
    鈍い色の雲が広がり、時折光る稲妻に打たれ機能しなくなる私の脳味噌。
    難しいことは分からないし、途中彼とか彼女とか誰を指してるのかすらも分からなくなったりもして、何度も行ったり来たりをしたのだが、この物語は狂人達の休息なのではないか、と思う。
    仕掛けるのもまた楽しい休息時間だ。

  • 破壊された、、

    破壊する方は楽しいだろうなー

  • この間、デュラスの最後の愛人との日々を綴った小説と映画を両方観賞したのですが、最後の愛人も相当のダメ男だけど、デュラスも相当大変な人だったなあと思ったのでした。

    わりと前に話題になった映画『愛人』の原作者として知られているデュラスの文章は、どれもそれ以外あり得ないほど選び抜かれていて、もうこれ以上テンションがかけられない程に極度の緊張で張り詰められています。中でも、この作品の完成度の高さは本当にすさまじい。
    ある種の純化に向けての日常の破壊。日常に対する慣性の静かな破壊。
    それは愛によって行われ、愛によって限界を迎える。愛には常に表裏となるべき憎悪が顔を覗かせている。
    愛とは自由、そして不自由。
    デュラスの小説、あるいは散文は、それらを極限まで純化した形で私たち読者の前に突きつける。そして言う。この物語の続きを書くのも書かないのも、あなた次第。

    奔放で大変な人だったデュラスのようですが、彼女の作品を読んでいると、この人もまた生きることが闘いだった人だったんだろうなあと思うのです。文章フェチの私にとって、特にこの作品は、やっぱり原書で読めたらと歯ぎしりしました。

  • 正常な状態がむしろ異常に転換して行き、正常状態を探せど、誰もが気を違えているので、それ自体真っ当であるかのようなあべこべさが、静かな、あまりに平穏な混乱をもたらす。つまり、ある種の平行世界的な常識の中で、物語は破壊されていくのではないか。つまりは、これは“気違いお茶会”なのでしょう。

  • 卒業論文の題材にしました。仏文ゼミに在籍しつつ、潜りで精神分析も勉強していた自分にはまさにピッタリの題材でした。<BR>
    (04.10.4記)。

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