太陽がいっぱい (河出文庫 ハ 2-8)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309461250

作品紹介・あらすじ

息子を呼びもどしてほしいという、富豪グリーンリーフの頼みを引き受け、トム・リプリーはイタリアへと旅立った。息子のディッキーに羨望と友情という二つの交錯する感情を抱きながら、トムはまばゆい地中海の陽の光の中で完全犯罪を計画するが…。精致で冷徹な心理描写により、映画『太陽がいっぱい』の感動が蘇るハイスミスの出世作。

感想・レビュー・書評

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  • 見たことのない私でさえテーマ曲とオチを知っているアラン・ドロン主演映画の原作小説。聞きかじった知識だけで勝手に野心を胸に完全犯罪を企む主人公だと思っていたトム・リプリーがかなり繊細で殺人自体も運と偶然に助けられた即興劇に近いものだったのには驚いた。映画とは全く違うオチはできる限り誠実であろうとしながらも運命に翻弄され殺人に手を染めることになるトムにとってもの凄い皮肉なものではないだろうか。

  • アメリカでその日暮らしの生活を送る青年トム・リプリーは、息子を帰国させてほしいという富豪からの依頼を受け、イタリアで彼の息子・ディッキーと出会う。
    何不自由ないディッキーの生活にあこがれとも憎しみともつかない思いを抱きつつ、次第に友情を深めるリプリー。しかし2人の関係が悪化したのをきっかけに、内心で密かにふくらんでいた犯行計画を実行に移すこととなる。

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    持たざる若者の逆襲。
    自分もディッキーと同じ境遇さえあれば満足のいく人生が送れたのだと盲目的に信じ、それまでの自分を捨て、楽観と絶望のはざまで揺れ動くリプリーのすがたが痛々しい。アリバイ作りもボロを出しまくり、これはもう自滅するだけだな……と思いきや、しかしリプリー案外しぶとい。ラストで彼の脳裏をちらりとかすめる暗闇の気配も未来への期待に満ちたかけ声によって、あっさりと隅へと追いやられてしまう。悪は滅びず、手にした人生の喜びが罪の意識を凌駕する。ハイスミスらしい、皮肉である意味痛快な結末。

  • 「パトリシア・ハイスミス」のサスペンス小説『太陽がいっぱい(原題:The Talented Mr Ripley)』を読みました。

    「パトリシア・ハイスミス」作品は、6年前に読んだ『11の物語』以来なので久しぶりですね。

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    息子を呼びもどしてほしいという、富豪「グリーンリーフ」の頼みを引き受け、「トム・リプリー」はイタリアへと旅立った。
    息子の「ディッキー」に羨望と友情という二つの交錯する感情を抱きながら、「トム」はまばゆい地中海の陽の光の中で完全犯罪を計画するが…。
    精致で冷徹な心理描写により、映画『太陽がいっぱい』の感動が蘇る「ハイスミス」の出世作。
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    「トム」が「ディッキー(映画ではフィリップ)」を殺して、「ディッキー(フィリップ)」に成りすまし世間を騙して生きて行こうとするという展開は、映画『太陽がいっぱい』同じ内容でしたが、、、

    「マージ(映画ではマルジュ)」と「ディッキー(フィリップ)」の人物(性格)設定や二人の関係が異なっており、全く違う印象を受けました… 映画は原作のエッセンスを織り込んだ別な作品と考えた方が良さそうですね。


    序盤の「トム」が「ディッキー」に取り入ろうとする場面は、少しもどかしい感じですが、、、

    中盤以降、「トム」が「ディッキー」を殺害し、「ディッキー」に成りすまし、その事実に気付きそうになった「ディッキー」の親友「フレディ」を殺してしまう… という展開は面白いですねぇ。


    利己的な考え方を持ち、衝動的に犯罪を犯してしまうけど、危機に陥ると類稀な犯罪者としての能力を発揮し、巧みに立ち回る「トム」は、感情移入し難い悪人キャラクターなのですが、憧れ、嫉妬、友情、憎しみ等の複雑な感情が入り交じる内面の表現が巧くて、ついつい入り込んじゃいました。


    そして、映画とは全く異なるエンディング… 映画の方がショッキングで印象的ですが、「パトリシア・ハイスミス」が意図したと思われる、犯罪者が必ずしもそれ相応の罰、社会的制裁を受けるとは限らない(=完全犯罪の成立)というエンディングも悪くないですね。


    映画『太陽がいっぱい』の印象が、あまりにも強くて、読んでいると「アラン・ドロン」の姿が常に頭に浮かんでいました、、、

    だけど、原作の「トム」は「アラン・ドロン」のイメージとはちょっと違います… 久しぶりに映画も観たくなりましたね。

  • アラン・ドロンの映画の印象がが強烈ですからね、結末に違いがある事しか覚えていないな。

  • 富豪の息子として遊び暮らすディッキーを羨みながらも、かれに付き従うトム・リプリー。彼はディッキーと体型や顔が似ていることを利用し、ディッキーに成り代わろうと計画する。二人で海上にボートで出て、そこでディッキーを殺し沈めてしまう。陸に戻ったあと変装をして、以後ディッキーとして生活を始める。しかし、ディッキーの友人が訪ねてきて真相がばれそうになると、彼をも殺してしまう。

    警察の捜査が始まり、トムとディッキーの共通の知人であるマージやディッキーの父親の追求が進むなか、トムはディッキーの金を手に入れ闘争することに成功する。

    底辺から這い上がり上流階級を目指すトム・リプリー。自分は上に上がれるという根拠の無い自身を持っている。彼の人生は常に行き当たりばったりで、その延長で二つの殺人まで犯してしまう。ずさんな犯行の割には警察の追及はゆるく、真相が明らかになる前になんとか逃げ切るという悪運の持ち主である。

  • 自分に戻るのだけは嫌だった、リプリー。
    ずさんな場当たり嘘を繰り返して、ギリギリを生きていた。
    太陽がいっぱい。私にはその動機がわかる。

  • 映画のラストシーンは強烈だった。原作は全く異なるのだが、これはこれで面白い。

  • 20代のアラン・ドロンがあまりにもカッコよく、映画ではサスペンス風味が強いけれど、確か4作あったリプリー・シリーズは、孤独の物語。
    強烈な孤独。この作品も、パトリシア・ハイスミスも。

  • 犯罪の発覚より、旅行が気になったり
    先々を考えず、とりあえずとった行動まで
    自らに味方する幸運、
    人を騙すことに生まれながらの力を発揮する
    間抜けで、現実を見る勇気もない、夢見がちで我侭
    嫉妬深い同性愛者の臭いもただよう悪党リプリー
    映画と全然違う原作、映画のほうが好みにあう。

  • 有名すぎる映画の原作。
    映画観てませんが、ラストは知っていました。
    が…違った!だから続編が可能なんかー。
    映画観よう。

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著者プロフィール

1921-1995年。テキサス州生まれ。『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』が映画化され、人気作家に。『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞、『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞。

「2022年 『水の墓碑銘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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