北の愛人 (河出文庫 テ 1-9)

  • 河出書房新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309461618

感想・レビュー・書評

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  • 『愛人』が映画化され、製作が進むに連れてデュラスの中で生まれ、作品とは違う彼女なりの「映画」として書かれたのがこの小説。前者が散文詩的なイメージの中で「わたし」と彼女の愛人の情事、そして家族への想いが語られるのとは変わって、三人称の「娘」が北から来た華僑の青年との情事をやがて愛として認識するまでの心の動きを客観的かつ明確に語っている。過酷な生活の中、結ばれることはないとわかっていた二人が、愛を交わし互いを人生ただ一人の人として認めてやがて死んでいく。その物語に「愛人」という題名が決して背徳ではなく、その感情の尊さや愛おしさが込められたものであるのではないか、と感じた。

  • どうして『愛人』は私を苛立ちに似た悲しい気持ちにさせたのかわかった。
    『愛人』と『北の愛人』は愛人が生きているうちに書かれたものと亡くなって書かれたもの。前者と後者は愛人に対する書かれ方が違う。
    私は少女に深い愛があることを明瞭と言って欲しかったのだ。

    結婚とかずっと一緒にいるとかそういう結末にはどうしたってなれなくても、そこには本物の愛があったと言って欲しかったのだ。
    本当はあなたとずっと一緒にいたい、と。

    中国の男も少女もふたりは別れることがわかっている。二度と会わないこともわかっている。それでも愛は本物だと、死ぬまで忘れないと、私はふたりに言って欲しかったのだ。

    だから私は『愛人』では苦しくなって『北の愛人』では愛おしい悲しさを抱くのだ。だから私は『北の愛人』は好きで『愛人』はあまり好きじゃないのだ。
    だから私の『愛人』という本の評価は個人的な願望が含まれているから全然当てにならない。


    『北の愛人』はまだ途中。あともう少し。

    * * *

    『北の愛人』読了。

    こちらは私が想像していた「愛人」だった。中国の男と少女の愛の物語。愛と死の物語。
    個人的な思いから、私情とあいまって、最後にはうるっとした。
    そのあと、不意にいろんなことが襲って来て心がめちゃくちゃになってわんわん泣いた。

    軸になるのは中国の男と少女の話なのだが、他にたくさんの様々な話が盛り込まれている。
    様々なエピソードが示唆する要素と愛と死の内容がデュラスの文体と手法によって絡み合い、ただの愛の話を脱することができている。メロドラマから文学へ変貌している。

    『愛人』『北の愛人』と続けて読むといいと薦めてもらってそのように読んで良かった。私も2冊続けて読むことをお薦めしたい。

  • 『愛人』のモデルである華僑の死を知ったデュラスが綴る想い。『愛人』が好きな人には是非お薦めしたい1冊です。『愛人』と同じ題材を、より感情面を掘り下げて描いています。だからと言って、情緒的になりすぎない、乾いた文体は詩のように美しく、幻想的でさえあります

  • おしゃれな本。日本では読めない。

  • 愛人ラマンと同じあらすじ。切ない青春時代の思い出。

  • 本に読まれて/須賀敦子より

  • デュラスの作品は読んでて心が痛くなるくらい乾いてて切なくなる。

  • 自伝的小説『愛人(ラマン)』を、愛人であった中国人の男の死を知って書き直したものとのこと。<br>
    デュラスがこの愛人とのことを心に持ち続けていた長い年月。<br>そして自分が多感な頃『ラマン』に強い印象を受けてから過ぎた時間。<br>
    「18歳で、私は年老いた」という『ラマン』冒頭の一文が、改めて疲労感を伴う重みをもって蘇ってきました。

  • 私にとってはひどく難解に感じるデュラスの、比較的読みやすい作品。より映画の「愛人」に近い描写になっているが、また小説「愛人」とはかなり違った印象。

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著者プロフィール

仏領インドシナのサイゴン近郊で生まれる。『太平洋の防波堤』で作家としての地歩を築き、『愛人(ラマン)』はゴンクール賞を受賞、世界的ベストセラーになる。脚本・原作の映画『ヒロシマ・モナムール(24時間の情事)』、『モデラート・カンタービレ(雨のしのび逢い)』、『かくも長き不在』は世界的にヒット。小説・脚本を兼ねた自作を映画化し、『インディア・ソング』、『トラック』など20本近くを監督。つねに新しい小説、映画、演劇の最前線にたつ。
第2次大戦中、ナチス占領下のパリでミッテラン等とともにレジスタンスに身を投じ、戦後も五月革命、ヴェイユ法(妊娠中絶法改正)成立でも前線にたち、20世紀フランスを確実に目に見える形で変えた〈行動する作家〉。

「2022年 『マルグリット・デュラスの食卓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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