ゾウがすすり泣くとき---動物たちの豊かな感情世界 (河出文庫 マ 6-2)
- 河出書房新社 (2010年4月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309463315
感想・レビュー・書評
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事例も豊富で興味深い…んだけど、テーマの特質上、結論が出せないので、冗長な印象。
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従来、哲学者や動物の研究者の間では、動物には感情がないとされており、その生態や行動を感情によって説明するのは〝擬人主義〟として批判されてきたようです。科学する以上、それはある意味当然のことかもしれませんが、具体的に証明できないからといって、動物には感情がないと決めつけてしまうのは如何なものでしょう?
この本は、動物観察によって得られた数多くのエピソードによって、そうした研究者のかたくなな態度に疑問を投げかけるものになっています。
そもそも、動物の感情の在る無しを、科学的に証明する必要があるのでしょうか?実際、動物と一緒に暮らしたことや、身近に触れ合ったことがある人なら、それは疑いの余地のないことではありませんか?
動物と人の違いは何か?感情とは?本能とは?自然界の摂理とは?美とは?文化とはいったいなんなのか?あらためていろんなことを考えさせられる書物でした。人間は、もっと謙虚になるべきですね。 -
動物を研究する科学者たちの間では、動物に感情はないというのが定説らしい。しかし普通の感覚からすれば、動物は喜んだり怒ったりという感情をもっているように見えます。この本は動物に感情はあるという前提で、その証拠となるようなケースをたくさん紹介し、科学者たちの定説に異を唱えた本です。
動物が感情をもつ明確な証拠がないことは、動物が感情をもたないことの理由にはならない、というのはもっともな話。この本に紹介されたようなケースを目の当たりにしても動物に感情がないと考えるのは、著者の主張通り想像力の欠如としかいいようがないですね。夕日に見とれるクマ、絵を描くのが大好きなゾウ、(教えられた手話で)独り言をいうチンパンジー。動物たちにも美意識があり、なにかを考えて感じて生きているように見えます。微笑ましかったエピソードはこれ。人間と野生のイルカが触れ合えるという有名なビーチで、観光客から魚をもらったあるイルカが、取材にきた記者に魚を差し出した。イルカがじっと見ているので、魚を受け取った記者はどうしたものか戸惑っていたが、そのうちイルカはまた魚をくわえて去っていってしまった。残された記者はなんだか失礼なことをしてしまった気持ちになったそうな。
動物たちの世界は想像していたよりずっと豊かで、驚き、そして嬉しくなりました。だってきっとうちの猫ちゃんも、私が帰ってきて嬉しいと思ったり、ご飯を食べてうまいと喜んだり、こちらが話しかければ何か感じてくれてるのだと、より思えるようになったから!