ギフト 西のはての年代記Ⅰ (河出文庫)

  • 河出書房新社
3.89
  • (16)
  • (33)
  • (24)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 270
感想 : 30
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463506

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • はじめに覚えたのは戸惑いで、ずいぶんと説明調だなと。
    物語というのはいつでも、序盤では特に説明的にならざるを得ない。しかし、説明するのではなく物語れとは自身の言葉ではなかったか、と。

    やがて、説明調というよりは、読み聞かせ、あるいは朗読の本なのかもしれないと思うようになった。

    最後に覚えたのはまたしても戸惑いで、物語の結末を強引に変更したような印象がある。続く予定ではなかった物語を、続くように変更したような。
    続編で確かめてみるとしよう。

  • グウィンの編んだこの物語には、読み終えて符合に気がつき驚くところがいくつもあった。まさに細部に神は宿るといったところか。その人その人でなければ見えないことが語られている、その意味に至って「ああ!」と思うーーその、主人公たるひとりの少年の成長に絡んでいく繰り返しが、かれが決意を定めるシーンに繋がって大いに感嘆してしまった。ドラマ性というものは、派手なところにばかりあるのではないのだろう。それが(今のわたしには)物足りないというだけで……

  • ル=グウィンの『ゲド戦記』シリーズのあとしばらくたった書かれたファンタジー。少年オレックと少女グライの物語。

    オレックはカスプロマントの跡継ぎで、代々「もどし」のギフトを継承することが期待されている。グライは隣国のロッドマントの生まれで、母から「呼びかけ」のギフトを継承している。「呼びかけ」のギフトは動物たちを呼び寄せるもので、動物たちにとって狩られるという負の部分と人間に飼いならされるという正の部分をもっている

    オレックの母のメルは低地の生まれで、オレックの父カノックが「もどし」のギフトと交換に手に入れた低地から贈られた「ギフト」でもある。低地の人々から、カスプロマントなど「高地」の人々は魔法使いとみなされていたが、その低地からやってきたエモンという流れ者とオレックとグライの会話から物語が始まる。

    「もどし」のギフトを継承できているのかどうかオレックには自信がない。「もどし」のギフトは眼差しを対象に向けると対象を破壊してしまうという暴力的なギフトだ。ある時、オレックには自覚がないままに、飼い犬を殺し、蟻塚とその周辺を破壊してしまう。父がそばにいたのだが、父はその眼差しを封印しなければ危険だという。カッダートという偉大な祖先は荒ぶるギフトを封印するために目隠しをしたという故事にならってオレックは目隠しをして暮らすことになる。

    敵対する隣国ドラムマントとの応酬で、その支配者のオッゲの「すり減らし」のギフトによって母メルは衰弱死し、オッゲを「もどし」のギフトで殺すが、自らも矢を受けて命を失った父カノック。父の死をきっかけにオレックは新たな旅立ちを決意する。

    狩りのために動物を呼び寄せるために「呼び寄せ」のギフトを使いたくないグライと自分自身が父からギフトを継承していないことを自覚し、母から受け継いだ物語を記憶し、創り、語る力を自覚したオレックは、彼らの能力を「低地」で活かして暮らしてみないかというエモンの言葉に導かれるように、ふたりで新たな旅立とうとするところで、年代記Iが終わる。

    次の物語が楽しみだ。ただ、ギフトというと、贈物という訳語を思い浮かべてしまうが、賜物つまりは、才能という意味も含んでいることがこの物語の重要なポイントである事を忘れてはならない。

  • 相当長い間、積読していたのだが、東京モーターショウに行った東京のホテルで読んだら、面白すぎて一気に読み終えてしまう。続編を大至急買わないと!
    それにしても、ル=グウィンは、独特の世界観を作るのがうまい、うますぎる。

  • ファンタジー
    サンリオやハヤカワ文庫で知ったSF作家ル=グウィンと、『ゲド戦記』や『空飛び猫』の作者が一緒と気付いたのは、21世紀になってからだ

  • ギフトのギフトなどまるで古代の部族の関係の様に感じるなど、設定も十分よく出来ているが、登場人物の葛藤と物語の展開が程よいペースで歩調を合わせて進んでいると思う。

  • 2016/10/2購入

  • 力をもたないものに力のあるものの気持ちがわからんように、力あるものは力がないものの心の中なんてわからない。

  • だいぶ前に読んだ時は原文で読んでて、(日本語でも読んでたかもしれない)二部三部がみどくだったので一部から。もう英語で本を読む体力はない気がするけど、原文が読めたら楽しいのも確かだ。カスプロマントの「もどし」のギフトは "undoing" となっていて、日本語で読んだ時より怖い感じがした。好きな箇所はオレック母が蟻の物語を語る場面とか。ギフトのギフトのこととか。

  • 魔法の力“ギフト”が存在する世界。「西のはて」を舞台としたファンタジーです。貧しい領国の跡継ぎとして育てられた少年オレックが、周囲の大きすぎる期待や、自分の能力への疑問、親との関係など、八方ふさがりの状況に苦しみながら、それを乗り越え、自分自身の生き方を見つけ出す姿に感動します。現実には、存在しない世界を作り上げた作者の筆力に圧倒されます。
    【姫路市立城内図書館】

全30件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1929年アメリカ生まれ。62年作家デビュー。ネビュラ賞、ヒューゴー賞など主要なSF賞をたびたび受賞。著書に『ゲド戦記』シリーズ、<西のはての年代記>3部作、『闇の左手』など。2018年没。

「2022年 『私と言葉たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アーシュラ・K・ル=グウィンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
冲方 丁
村上 春樹
上橋 菜穂子
伊藤 計劃
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×