どんがらがん (河出文庫)

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 179
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463940

作品紹介・あらすじ

才気と博覧強記の異色作家デイヴィッドスンを、才気と博覧強記のミステリ作家殊能将之が編んだ奇跡の一冊。ヒューゴー賞、エドガー賞、世界幻想文学大賞、EQMM短編コンテスト最優秀賞受賞! 全十六篇。

感想・レビュー・書評

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  • 奇想コレクション
    「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」が良い。

  • 1950〜60年代を中心に、SFからミステリ、ファンタジーまで幅広く切れの良い短編を排出した、典型的な「奇想の作家」。
    フレドリック・ブラウンやロバート・シェクリイに通ずる、洒脱で軽妙な、肩の凝らない作品群です。その中でもデイヴィッドスン作品の特徴と言えるのは、社会の片隅にはじき出されて細々と生きる弱者に対する暖かい視線。救いのない話も結構多いのですが、それでも心の中にほんのりと暖かさが残るような、包み込む筆致を感じます。

    ・・・とハートフルに決めたかったのに、最後に収録されている表題作の破壊力でイメージ全部持ってかれましたよ、えぇヽ( ´ー`)ノ
    何このバカ作品(※鴨注:褒め言葉ヽ( ´ー`)ノ)。
    手練の真打ちが滑稽噺を前座に掛けたような、贅沢な才能の無駄遣い(笑)他にも笑える作品がいくつかあり、あの変な邦題で有名な作品も正にそうですね。「洗練されたバカ話」といえば良いのか(再び鴨注:あくまでも褒め言葉)。しんみりする話からバカ話まで、軽いタッチで気楽に読むのにおススメですね。

  • 『奇想コレクション』の1冊として刊行されていたものの文庫化。
    解説で述べられている通り、とてもユニークな作風で、似ている作家がちょっと思いつかない。
    この本の中では『物は証言できない』『グーバーども』『パシャルーニー大尉』が面白かった。

    編者の殊能将之が詳細な解説を書いていて、そちらを読むだけでも面白い。特に巻末の『殊能将之自作インタビュー』はデイヴィッドスンの魅力を詳細に伝えている。

  • 短編の中でも掌編がおもしろいなと思った。
    「ゴーレム」:ゴーレムがいきなり突然あらわれる。ゴーレムは自らを力のある存在だとアピールしたいが、老夫婦はそんなことはお構い無く、分達のおしゃべりに夢中で、テキトーにゴーレムを扱ってしまうのがシュールでおもしろい。
    「物は証言できない」:黒人奴隷をモノ扱いして金儲けするジジイが、モノ扱いしてきた奴隷たち裁判の証人として扱えないが故に破滅していくメシウマ系の話。短いけどパンチが効いていて好きな話。
    「さもなくば牡蠣でいっぱいの海」:SFか、幻想小説か、ただの妄想劇か。どれだとしても以外なストーリー展開で楽しめる。

  • 地味に好き

  • 2014-3-23

  • 「さあ、みんなで眠ろう」「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」が好きです。

  • 「ゴーレム」★★★★
    「物は証言できない」★★★★
    「さあ、みんなで眠ろう」★★★★
    「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」★★★★
    「ラホール駐屯地での出来事」★★★
    「クィーン・エステル、おうちはどこさ?」★★★
    「尾をつながれた王族」★★★
    「サシェヴラル」★★★
    「眺めのいい静かな部屋」★★★★
    「グーバーども」★★★
    「パシャルーニー大尉」★★★
    「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」★★★
    「ナポリ」★★★
    「すべての根っこに宿る力」★★★
    「ナイルの水源」★★
    「どんがらがん」★

  •  読書会で課題図書になっていたので読んだのだが、めちゃくちゃ面白かった。小説のお手本のような、古典的な感じもするのだろうけれども、私はあんまりSFには慣れていないので、たいへん新鮮に感じた。
     読書会のメンバーの中の意見としては、天理教に改宗して亡くなった彼の人生そのものに、SF作品以上に興味を持つ、というものがあった。

     書かれている物語の手法としては、そのほとんどが、ある一方の登場人物は日常・現実・世間・労働者に生きていて、もう一人のキャラクターが、嘘・詐欺・貴族・魔術側にいて、その二人が同じ場所にいて、かつ、資本主義や偽善や差別を見事な形で表現するまたは批判するように仕上げている。現実を戯画化して現代に一撃を加える……といえばあまりに簡単すぎるが。私達はみな、奴隷商人は嫌うが、奴隷制は賛成する。いや、今は奴隷制も嫌うが、その恩恵で生きていて、本気で変えようとは思わない、という感じを描き出す感じか。
     「ゴーレム」の、老人同士の噛み合わない会話と芝刈り仕事をさせられる魔法と機械を融合させたような神秘のゴーレムの哀愁。
     「物は証言できない」の、奴隷は物なので、真相を目撃していても、目撃者としては認められないという皮肉な事件。
     「さあ、みんなで眠ろう」の、動物保護と、そのヒューマニズムのなれの果て。インディアンの虐殺のようだ。
     「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」の、現実を受け入れられない人間の死と、何が起ころうが金儲けと女に生きる商売人の生き方。
     「尾をつながれた王族」における貴族の愚かさと懐かしさと美しさ。貴族って存在自体がSFみたいなものだから、あこがれる。
     「サシェヴラル」における、猿と猿を保護するものと、猿にお前は猿だと教える者の皮肉な顛末。
     「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」の、ブラックな終わり方。資本主義の外にある世界の神秘的なものを手に入れるのに、暴力上司の頭蓋骨が代金になっている。
     「すべての根っこに宿る力」の、無敵の魔術暗殺劇。すべて掌で踊らされているオチはホラーだ。
     「ナイルの水源」は、既視感があったが、これが元ネタなのだろうか。どこかの日本の小説で似たようなのを読んだ気がする。星新一か筒井康隆か……。流行の源流を生み出す家族が存在しているという話。
     「どんがらがん」は、最後、ドンキホーテだと思った。混沌を残して、ここでも貴族は去って行く。
     登場してくる女性全員は、セックスするビッチとしか表現されていないのも時代か作者の信仰のせいなのかしら。
     1950年~60年あたりのSFであり、古いとされるのだろうが、どれも実に面白かった。冒頭はとにかくややこしいのだけれども、安心して先に進めば、そのうち解るようにできている。
     「パシャルーニー大尉」なんか、ものすごく渋い短編で、1時間くらいの名作白黒映画を見終わった読後感だった。

     読んでみて、「貴族」というものが実に美しく書かれてある……彼は天皇について、どんな考えを持っていてどんな風に書くのかが気になった。

  • 祝文庫化!

    河出書房新社
    「才気と博覧強記の異色作家デイヴィッドスンを、才気と博覧強記のミステリ作家殊能将之が編んだ奇跡の一冊。ヒューゴー賞、エドガー賞、世界幻想文学大賞、EQMM短編コンテスト最優秀賞受賞!全16篇。」

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著者プロフィール

1923年、アメリカ、ニューヨーク州ヨンカーズ生まれ。アメリカ海軍やイスラエル陸軍での軍人経験を経て、1950年代より本格的な執筆活動を始める。58年にヒューゴー賞短編小説部門、61年にアメリカ探偵作家クラブエドガー賞短編部門、76年と79年には世界幻想文学大賞を受賞。60年代には、エラリー・クイーン名義で「第八の日」(1964)と「三角形の第四辺」(65)を代筆した。80年代にシアトルへ移住し、退役軍人用保護施設へ入居。1993年、死去。

「2022年 『不死鳥と鏡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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