ドゥルーズ・コレクション 1: 哲学 (河出文庫 ト 6-17)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464091

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  • 國分功一郎が『批評空間』III-4, 2002.7「特集=アナーキズムと右翼」でドゥルーズ論を掲載しているということを知り、論述対象の「無人島の原因と理由」を読んだ。無人島は、再開の理想としての神話の対象であり、それは自己再創造、再生産として見出される。
    ・無人島の原因と理由
    地理学者によれば島は2種類ある。大陸島は、偶発的派生的に大陸から分離し、脱臼侵食断層から生まれたもの。大洋島は、始源的本質的で珊瑚や海底の爆発などで消えたり現れたりする。無論はじめは両者とも無人島であり、人間が住むのは、人間の飛躍にある。島の夢想は、分離、ひとりぼっちで寄る辺ないことの想像であり、再出発、再創造、再開を夢想すること。分離と再創造。それをなすのは人間である。人間の運動は、無人島として生み出していた飛躍をやり直し、延長する。飛躍は完成し、頂点に達する。人間は、自分を島に導く運動に立ちもどるのでなくてはならない。この運動が、島を生み出してきた飛躍を延長し、やり直す。絶対的に分離され、絶対的に創造的な人間だ。
    →ニーチェ砂漠
    つまり人間のイデー(観念)、原型、ほとんど神、記憶喪失者、芸術家、大地と大洋の意識、嵐、魔女、イースター島の立像。無論、この無人島と住民の一体性は想像上のもの。祭儀、神話の集合的な想像力。
    →ルソー社会契約論
    無人島の本質は、想像的であって現実的ではない。神話的であって地理学的ではない。神話が理解されなくなったとき、文学が始まる。文学は、理解されなくなった神話を巧妙に解釈する試み。神話がいかに破産し死んでいくかを『シュザンヌと太平洋』『ロビンソンクルーソー』は示す。シュザンヌは少女の島の孤立、神話の最も美しい優雅な死。ロビンソンは創造、再開、重苦しい死、所有、ブルジョワ的日常生活の再構成。ピューリタニズムの中での神話の死。シュザンヌは、無人島で文明の既製品完成品を一挙に手に入れる。しかし交換はない。無人島の神話的な生を再発見すること。ロビンソンは資本。シュザンヌは孤立。無人島は再創造、再開の意味で、第二の起源。世界の形成は、誕生と再生の二つの時・段階においてある。やり直し、破局の中で再否定。これは自分自身の中に見出せる。生命の判断は、再生産においてある。第二の起源は、セリー(系列)の法則を与え、反復の法則を与える。これは夢想よりも神話に現れる。ノアの方舟からの世界の再開。第二の起源としての宇宙の卵は、神々ではなく、人に託される。洪水による分離。大洋と水の隔離の原理。開始は神と男女からなるが、再開は一つの卵から発する。神話的母性の単為発生。再開の理想、無人島とは原料である。

  • 本書はドゥルーズの小テクストを編んだアンソロジーで、多方面にわたる様々な発言が収められており、なかなか楽しい。難解なところもあるが、それはそれとして、刺激的な「ドゥルーズ的な知の角度」を味わえて面白い。
    特にベルクソン、ルソー、ヒュームに関する文章が興味深く、これらを読んで彼らの古典的著作を再読したくなった。
    また、最後の方に収められているニーチェについての文章は、そのままドゥルーズを読み解く鍵にもなっているように感じた。このニーチェ理解が、ドゥルーズ思想の出発点になっているように思えたのだ。
    つまみ食い的に楽しめるアンソロジーだが、やはりドゥルーズ哲学を追うなら、もっと長い「主要著作」を読むべきなのだろう。まだ読んでないのが幾つかあるので。
    ドゥルーズを本格的に研究するような気は全くないが、この楽しい「ポップ哲学」を読むことは、やはり知的な喜びをもたらしてくれるだろう。

  • ドゥルーズ没後20年を期してその思考集成『無人島』『狂人の二つの体制』から重要テクストをテーマ別に編んだアンソロジー刊行開始。1には思考の軌跡と哲学をめぐる論考・エッセイを収録。

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著者プロフィール

(Gilles Deleuze)
1925年生まれ。哲学者。主な著書に、『経験論と主体性:ヒュームにおける人間的自然についての試論』『ベルクソニズム』『ニーチェと哲学』『カントの批判哲学』『スピノザと表現の問題』『意味の論理学』『差異と反復』『ザッヘル゠マゾッホ紹介:冷淡なものと残酷なもの』『フーコー』『襞:ライプニッツとバロック』『フランシス・ベーコン:感覚の論理学』『シネマ1・2』『批評と臨床』など。フェリックス・ガタリとの共著に、『アンチ・オイディプス』『カフカ:マイナー文学のために』『千のプラトー』『哲学とは何か』など。1995年死去。

「2021年 『プルーストとシーニュ〈新訳〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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