ブロントメク! (河出文庫 コ 4-3)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464206

感想・レビュー・書評

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  • 「ハローサマー、グッドバイ」と並ぶ著者の代表作。1976年の作品。タイトルの「ブロントメク」は、どうやらAI搭載の自律土木農耕ロボットのことのようだ(作品中では、"雷竜機" と表記されている箇所があった)。

    最初の数十頁は、訳が分からなくて、なかなか物語の世界に入り込めなかった。登場人物も多くて、読むのが結構苦痛だった(70頁が過ぎた辺りからグンと入り込めた)。

    新興の植民惑星、アルカディア。主人公は、地球からアルカディアのサブコロニー "リバーサイド" に移住した造船技師、ケヴィン・モンクリーフ(ケヴ)。小型高速のレジャーボート "スキッターバグ" やヨットを造ったり修理したり、で細々と生計を立てている。商売は左前だが、素敵な女性スザンナと出会って目下熱烈恋愛中。

    アルカディアには6個の月があって、52年に一度この6個の月が一ヵ所に集まり、高潮をはじめとする様々な自然現象を引き起こす。プランクトンも大発生して河口付近に密集、「ある人間からべつの人間に感情を中継する能力」を発揮し(中継効果)、「範囲内にある憎悪すべてを増幅」し、「人間に対する支配を強めた結果、ついには多数の人々をブラックフィッシュの待ち受ける海に入らせて自殺させる」悲劇を引き起こすのだという(また、海には怪物が棲むという噂も)。

    この大惨事により多数の死者が出て、またその恐怖からアルカディアを脱出する人があとを絶たず、アルカディアの人口は大きく減少、経済が崩壊しつつあった。

    そこに乗り出してきた巨大企業、ヘザリントン機構。資本を投入し、人々の仕事や財産を一時的に機構の管理下に置き、機械を導入して農業と漁業を発展させ、巧みなPRによって移民を呼び込む、惑星再生プランを提示。国民投票の結果、アルカディアの運営をすべてヘザリントン機構にに委ねることと決まったのだった。

    リバーサイドに乗り込んできた機構のスタッフに対し、住民達は、穏健派、反対派、日和見の三派に別れてすったもんだ(ケヴは穏健派)。あからさまな妨害工作に走る過激派も出現し、コロニーは大荒れ状態に。

    機構は、アルカディアの海に対する人々の恐怖を払拭し、移民を呼び込むため、ヨットによる単独世界一周航海という奇策を立て、そのヨットをケヴに造らせることとした。航海はの様子はエリア一体に中継され…。

    住民達がそれぞれに利己的な行動をとってしまい、コミュニティ全体が破滅に向かって堕ちていくさまや、利益最優先の大企業の非情さ、何れも遠い星のお話なのだが、とてもリアルだった。

    マークの「中継効果を覚えているか? あれから二年以上も経つのに――人間はなにも学んでいない。群衆にある情報与えることと、同じ情報を多数の個人に与えることとは、まるで違う。ひとつには、群衆は矛盾を平気で受け入れるし、結果を予見する能力がない。妙な話だが、人間が集まると、その数に比例して理性的に行動する能力が低下する。この規模の群衆だと、その知能程度は、平均クラスのゴリラと同程度じゃないかな」なんてセリフもあった。

    そして読みどころは、コーニイ作品お約束の、ケヴとスザンナの恋愛の行方。ラストにどんでん返しもあって…。

    本作も読み応え十分だった。まあ、コーニイの作品に自分なりに順位を付けるとしたら、①「パラークシの記憶」、②「ハローサマー、グッドバイ」、③「ブロントメク!」かな。

  • 最初は内容が頭に入って来なかったけど、読み進めるうちに引き込まれた。

  • ブロントメクという題名だが、ブロントメクはロボットで脇役にすぎない。物語の主役はモンクリーフと表紙の美女のスザンナとイミュノールという麻薬。最後までハラハラドキドキ、この窮地をどのように凌ぐのか?と思ったら、ちょっと拍子抜け。最後にスザンナの正体もばれて一件落着なのか。ハローサマー、グッドバイの方が後味は良かったような。なので星4つだが、1976年の作品とは思えない面白さではあった。

  • またも恋愛SFと思い込んでオチを予想出来なかった

  • 暗黒メガコーポとの綱渡りのような駆け引き、絶体絶命のピンチに闖入して全てを焼き払う暴走ブロントメク…などの大スペクタクルを勝手に想像して読みはじめたので拍子抜けした。
    主人公のヘタレギークはなぜかゲットした絶世の美女と四六時中盛るばかりで(これは最後に種明かしされるが)、危険な単独航海やコロニーの政治問題などの物語の核心については主体性のない態度を貫いており、一度奮起する場面もその動機にそれまでの主人公の描写から自然と納得できるものがない。
    舞台やSF設定には魅力を感じるので、大活劇というよりも雰囲気やシリーズの世界観を楽しむつもりで読むがよいのだと思われる。海系のSF好き。

  • 『ハローサマー~』などがすごくよかっただけに、期待しすぎちゃったかも。ちょっと物足りなさを感じたまま読み終えました。
    とはいえ、後でよくよく考えると、この小説で描かれているSF設定が、実はそんなにSF設定に感じられないからこそ、そこにぐっとこないだけなのかも。たとえば人口減少社会であったり、地域の経済的支配の構図であったり、旅行者のリアルタイム配信など、すでにそこらへんにありそうな事柄。その意味では、先見性がすごく高かったのかも。(2019年11月17日読了)

  • 青春SF恋愛小説という超限定的なジャンルの名著「ハローサマー、グッドバイ」で有名なマイクル・コーニイの作品。ハローサマーにも言えることだけど、この作者は惑星内(国家)の不穏分子の広がりや不満の高まり方を描くのが異常なほど上手い。本気のディストピア小説を書いたらめちゃくちゃ読み応えがある作品ができそう。

    オチが全く予想できなかったハローサマーと違って、本作は途中からオチに薄々気付いてしまった…。気付かずに読み終えたら衝撃がもの凄そうだけど、作者自身も気付いてもらうためにあえて強調した表現を繰り返したんだろうな。

  •  『ハローサマー、グッドバイ』『パラークシの記憶』読んで、コーニイの小説もこれで3冊目。

     宇宙を股に掛ける大企業が行き詰ってる田舎の惑星にやってきて、行政まるごと買い取っちゃう話。現実に照らすなら、〇〇県の議会と行政機構を全部Googleが買っちゃいました、という感じ。
     保守・革新で村は割れてしまる。Googleも住民に甘言を並べるが、だんだんと正体を現して、気付いたときにはもう……と、内容は大体想像が付くだろう。

     恋愛要素は、一見パフェの上に載ってるシロップ漬けさくらんぼのような、取って付けた感じを抱いてしまうのだが、女性に盲目的になる男を傍から見たら、実際そんなもんなのかもしれない。それほどまでに美しいのが、今作のヒロインであり、ある意味で数多の恋愛小説のヒロインをぶっちぎる魅力を備えている。私は好きではないけれど。

  • 2018/11/20購入
    2022/1/30読了

  • ブロントメク! (河出文庫)

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著者プロフィール

1932年、英国バーミンガム生まれ。SF作家。72年にカナダのブリティッシュコロンビア州に移住。『ブロントメク!』で英国SF協会賞受賞。2005年没。著書に『ハローサマー、グッドバイ』『カリスマ』他。

「2016年 『ブロントメク!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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