見知らぬ乗客 (河出文庫)

  • 河出書房新社
3.29
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本棚登録 : 281
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464534

感想・レビュー・書評

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  • (2024/03/27 5h)

  • スーパー面白かった
    人を殺して暗闇の中必死で逃げるシーンの不透明さが読書体験という、情報が文章からしかわからないところ、視覚を使って得る情報なのに頭の中で思い浮かべるしか実体を得る手段がない感じに重なった気がして凄く良かった
    手探りで進むしかない感じが….

  • 読むのに3ヶ月かかった。登場人物の感情の動きが激しくてついていけない。相手を嫌いだと思ったら次には好きになったり…。読んでいて疲れるし感情移入できない。

    本書はブルーノという金持ちのドラ息子・アル中・ホモ・マザコンの悪魔がガイという男を洗脳し狂気に陥らせるサスペンス。ブルーノはサイコパスである。ガイ自身最後の最後でそう表現している。そのためブルーノ自身の心境を語ったページは全く理解できないしそんなブルーノに愛憎入り交じった感情をいだくガイも理解しがたい。

    これでブルーノが女だったら悪女に引き寄せられる男(ガイ)の感情だと理解もできるが、なぜこんなサイコパスの言いなりになって遠ざけられないのか。感情移入が厳しいところだった。読者が女性ならこの辺の同性愛じみた部分を楽しめるのかもしれないが、男の自分にはブルーノとの縁を切れないガイが理解不能だし、ひたすら悩み続け情緒不安定なガイも嫌いだ。

    解説によるとこの本のパターンが作者の基本らしい。もうこの一冊で十分。他を読む気はしないな。

    ガイは「物事はすべて反対の部分を併せ持っている」と語る。これはラストのセリフのところですらそのままである。しかしラストに至ってまで、一本心の通っていないガイ。彼の心がジェットコースターのごとく揺れ動き続けるのを追いそれを理解しようと努めるのは大変疲れる読書体験だった。

  • 列車に偶然乗り合わせた二人の男性。片方が交換殺人の話を持ちかける…前半は面白いのだが、後半の二人の関係がちょっとくどい。

  • 同性愛的な空気、エディプスコンプレックス
    母親を女性の理想・幻想とする雰囲気もあるが、
    独善、偏執、執拗、鬼気、狂気
    勝手に過度な共感愛情愛着、歪み狂った感情を
    スマートに凶暴にあいてに流し込み、ぶつけ
    自身の破滅だけではなく、相手の破滅も
    愛ゆえに呼び込んでしまう、身勝手への不愉快さ。
    巻き込まれ、追い込まれ、抗いながらも
    狂気の世界に踏み込んで、泥沼から抜け出せず
    ズブズブと深みに入り込み、破滅へ向かう苦しさ。
    ラストは本当にこれまでの世界がボロボロと崩れ落ちて
    行くような感覚を覚えるが、
    どこで、どの時点で、どうすればよかったのかではなく、
    出会わなければよかった、出会ってしまった時点で
    全てが決まっていた、終わっていたという
    むなしい絶望感。

  •  なんとなく見覚えのある著者名。読んだことあるようなないような。ブクログにはないのであるとしてもずっと昔で、おぼえていないのだろう。偶然夜行列車に乗り合わせたガイとブルーノ。ひょんなことからお互いに殺したいと思っている相手がいるとわかり、交換殺人の幕が開く。実際はそんなに単純な話ではないが、基本的にはそういうストーリーだ。似たような話は他にもありそうだ。事件そのものはスムーズに行われたものの、いずれ探偵の捜査によってばれてしまうので、倒叙物としてもミステリ的興味は薄いが、2人の揺れる内面描写、特にブルーノに引きずられて深みに墜ちてゆくガイの心理的葛藤が読みどころだろう。しかしいくら大きな借りができたとはいえ、ブルーノにいいように操られるガイがちょっと不自然では。知らぬ存ぜぬで突っぱねるかそれこそ訴え出ればいいのに。まあそれでは小説にならないか。

  • 『8つの完璧な殺人』を読むために読んだ。
    ハイスミス自体は、映画の「リプリー」「太陽がいっぱい」「アメリカの友人」「妻を殺したかった男」「底知れぬ愛の闇」「キャロル」は見てきたが、小説はこれが初めて。

    交換殺人というシチュエーションは面白かったが、ブルーノのほうに全然完全犯罪をする気がなく、隠す気はあるが、情緒不安定でとにかくイライラした。ガイのほうも、殺人について悩んで苦しんでいることにイライラした。心情表現にイライラさせられた。展開は進むけれど、ワクワクするような面白さは無かった。頑張って読んだ。
    しかし、読み終わってみると、まあ面白かったかなっていう印象。喉元過ぎればなんとやら。

    425Pのここが好き。
    「しかしあの連中がこの身を破滅させたところで、おれがつくった建築が壊されることはない。そう思うと、いままた自分の魂が肉体のみならず精神からも分離したかのような、奇妙でうら寂しい気持ちがこみあげた。」
    ガイの独白。自分が破滅しても、自分が作った建築物は壊れないことに寂しさを感じるのが面白い。一緒に壊れて欲しかったんだろうな。
    他の考え方をすると、建築に魂を捧げてるなら、その魂も壊れないことに寂しさを感じている?傷つかない自分が寂しいものだと感じている?

    ブルーノが海に落ちたシーンも好き。音が聞こえるや否や駆け出して、静止してくる相手もぶん殴って海に飛び込むガイ。
    464P~466P

    「「好きに行かせろ」ガイは低い声でいい、タバコに火をつけようとした。
    ついで、水音がきこえてきて、そのとたんガイはブルーノが船外に落ちたことを察しとった。ガイはだれも言葉を発しないうちから、操舵席をあとにしていた。」

    「おれの友人はどこに、おれの弟はどこにいる?」

    特にこの弟というのが良い。
    ブルーノは何度もガイに対して、あなたのことが好きなんだというが、ガイは答えなかった。けれども、ここでは友人で弟だと思っていることがわかる。
    めちゃくちゃ良かったな。

    オチに対しては、どうせたいしたことないだろうと思ったら、電話による盗聴でバレたのが面白かった。

    ガイが殺人に対して罪悪感に苦しむのがわからない。良心がありすぎる。
    罪と罰の主人公みたいだなと感じてたら、ドストエフスキーみたいだと評論家にも言われてたらしくて、なるほどな。



  • たまたま買った本ですが、めちゃくちゃおもしろかったです!
    ガイとブルーノの罪がいつジェラードにバレてしまうのかというハラハラ感と、
    ブルーノのストーカー気質に恐怖を感じるし、
    鈍いアンにもイライラしました。
    最後はある意味ハッピーエンドで良かった。
    人は誰でも人殺しになることができてしまうのか。
    彼女の他の作品も読んでみます!

  • 犯人捜しをする推理モノではなく、犯人のわかっている状態でこの先の展開が読めずに、息を詰めてページを繰るミステリー。心理状態や当時当地のようすが丁寧に描かれていく筆致で、ミステリ好きでなくとも楽しめる。

    時代がかった原作の文章や、舞台となっている時代の雰囲気をしっかり持ちながらも、古くさくない今風の翻訳でとても読みやすかった。

  • 感想はこちらに書きました。
    https://www.yoiyoru.org/entry/2020/04/14/000000

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著者プロフィール

1921-1995年。テキサス州生まれ。『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』が映画化され、人気作家に。『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞、『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞。

「2022年 『水の墓碑銘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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